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Dandy達が最終決戦の場へと向かうと、黒い渦がうねりを上げながら広がっていた。
Blackの姿はもはや人の形を保っておらずグロテスクな姿へと変貌している。煙のようでもあり、液体のようでもあり、時折触手のように伸びては壁や天井を叩き割る。その度に建物全体が揺れ、まるで大地が悲鳴をあげているかのようだった。
さらに、渦の中から現れたのは、洗脳された仲間たち。
虚ろな目を光らせ、悲惨な姿になってでもまだまるで操り人形のようにこちらに迫ってくる。
そんな彼らの不気味な足音が床を打ち鳴らした。
Pebbleは低く唸り声をあげ、一歩前へと踏み出す。
「ワンッ!」
その鳴き声は小さな体から放たれたとは思えぬほど鋭く、前線の仲間を守る盾のように響いた。敵の注意を自分に引き寄せ、仲間の隙を作る。
Dandyは銃を握り、額に汗を滲ませながらも目を細めて狙いを定める。
「よし……行くぞ!」
まだ手に馴染んでいない銃。しかし、その初めての武器を構える姿は驚くほど自然だった。
引き金を引く音が重なり、轟音と共に火花が走る。黒い渦の一部が裂け、揺らぐ。
弾丸は光など持たぬただの鉛だ。しかしその一発ごとが、仲間たちの希望を象徴していた。
Sproutは隙を見逃さない。鉄パイプを振りかざし、伸びてきた触手を受け流しながらカウンターの一撃を叩き込む。
「ここで食らえ!」
乾いた金属音が響き、影がはじけ飛んだ。
Jevinはすでに肉薄していた。斧を両手に握り、重たい一撃を繰り返す。
『隙を見せるな! 止めを刺すぞ!』
その斬撃は一撃ごとにBlackの力を削り取り、闇の渦を少しずつ小さくしていく。
後方ではサポート陣が休む間もなく動いていた。
Shellyは素早く散らばった家具や縄を掴み、うねる触手がこちらに向かってくるタイミングを狙って罠を仕掛ける。
「こっち! ここに押さえ込むよ!」
触手が突進してきた瞬間、Shellyは縄を引き、絡め取って床に引き倒した。
Veeは机や棚を次々と引きずり出し、器用に積み上げて触手の動きを鈍らせる。
その手の動きは迅速かつ正確だった。
Astroは冷静に触手の動きを分析し、壁の角や柱を利用して触手を誘い込む。
「右に誘導する……! Gray、今だ!」
Grayは頷き、壊れた家具や重い箱を次々と倒し、捕縛の補助を行う。
木片と鉄片が激しい音を立てて落ち、触手を塞いだ。
怪我を抱えるBrudとDyleも決して後退しなかった。
「ぐっ……足が思うように動きませんが…これくらいなら!」
Dyleは重たい木材を押し支え、Brudは体を張って触手を封じ込める。
だがその時、戦場の一角で新たな動きが起こった。
冷たい瞳を宿したOrenが姿を現す。隣には、涙を浮かべながらも必死に叫ぶPinki。
『やめて、Oren! もうこれ以上仲間を傷付けないで!』
Orenは何も言わず、ただ腕を振り上げ、Pinkiに襲いかかろうとした。
仲間たちが止めようと動いたが、それよりも早く、PinkiがOrenに飛びつき、全身で抱きしめた。
『お願いだから……思い出してよ……あの時のこと……!』
静寂。
Orenの体が震え、動きが止まった。
その瞳から冷たい光が薄れ、代わりに懐かしい温もりが戻っていく。
言葉は出せない。けれど、OrenはPinkiに向かって、ほんのわずかに、柔らかく微笑んだ。
そしてOrenはPinkiをそっと押しのけ、Blackの渦へと歩き出す。
『Oren!? どこに行くの……!?』
その背中は静かに決意を宿していた。
一方その頃、Fun Botの目の前にはClukrとGarnoldが立っていた。
彼らの表情は苦しげで、それでも目にはかつて自分が作り出した愛おしくてとても大切なFun Botがいた。
2人はFun Botに優しく微笑むとblackの方へ向かおうとする。
Fun Botは必死に首を振り、両手を広げて立ちはだかった。
『もう、行かないでください…!あなた達まで居なくなったら!…どうかお願いします…!!』
しかしClukrとGarnoldは、決意をにじませながら背を向ける。
『…嫌だ、待って、お願いします、置いてかないで!!』
Fun Botの叫びは震えていた。
必死に両手を伸ばす。しかし2人はその手をとることはなかった。
やがて、Oren、Clukr、Garnoldは黒い渦の目前に辿り着く。
その瞬間、Blackの触手が凄まじい勢いで伸び、Dandyに迫った。
避けられない。致命的な一撃。
「危ないっ!!」
誰かの叫びが響くよりも早く、Orenたち三人が飛び出した。
触手が彼らの体を貫き、黒い血飛沫が飛び散る。
Pinkiが悲鳴を上げた。
『いやぁぁぁっ!!』
Orenは声を出せないまま、それでもPinkiの方を見て、再び、あの微笑みを浮かべた。
ClukrとGarnoldも必死に触手を押さえつけ、Blackの力を削ぐ。
血を吐きながらもGarnoldは最後まで抵抗し、影に呑まれていった。
その光景に、仲間たちの心は打ち砕かれかけた。
Shellyは縄を握る手を震わせながら、涙を零しつつ叫ぶ。
『うぅ……でも……やらなきゃ……!』
涙を拭う暇もなく、罠を次々と張り巡らせる。
Fun Botはその光景に今にでも立ち崩れそうになるも、堪えて扉に体をぶつけて防御を続けた。
だが戦況はさらに悪化する。
Blackの影が暴走し、sproutが触手をまともに食らった。
「ぐっ……ぁぁぁっ!!」
血が噴き、重傷。
それでも、sproutは武器を離さなかった。
「まだ……やれる……絶対に止めなきゃ。」
苦痛に顔を歪めながらも、攻撃を続けるその姿に全員の心が奮い立つ。
世界の中心に渦巻く黒。
Blackはもはや影というより巨大な怪物のように蠢き、壁や床から幾重にも触手を伸ばしていた。
誰もが限界だった。肩で息をし、傷だらけで、汗と血が入り混じっている。
その中で、Jevinが静かに立ち上がった。
『……私が行く。』
斧を握る両手は震えていたが、その眼差しには決意が宿っていた。
「Jevin……!」
Dandyが銃を構えたまま振り向く。
Jevinは短く頷くと、仲間に背を預けるように前へ一歩踏み出した。
『どうか…お願いします。』
一瞬の沈黙のあと、仲間たちは同時に叫んだ。
「「「守れえええっっっ!!!」」」
先陣を切ったのはSproutだった。
鉄パイプを振り上げ、迫り来る触手に真っ向からぶつける。
「お願いJevin!どうか、!」
金属がひしゃげる嫌な音と共に、触手の一部が叩き落とされる。だがその衝撃でSproutの腕は痺れ、口から血が滲んだ。
その隙を逃さず、Dandyが横に回り込み銃を連射する。
「Jevinの邪魔は禁物だよっ!」
弾丸が黒い触手を裂き、Jevinの前に細い通路が開く。
すかさずPebbleが前へ飛び出した。
「ワンッ! ワンッ!」
影の群れを引きつけるように駆け回り、仲間から注意を逸らす。Pebbleの小さな体は無数の影に翻弄されながらも、決して止まらなかった。
後方ではShellyが縄と壊れた家具を組み合わせ、即席の罠を作る。
「ここで押さえ込むよ!」
罠が作動し、触手の一部を抑え込む
そこにVeeが机や棚を押し倒して触手の動きを鈍らせる。AstroもGrayと共に触手を必死に押さえ付ける。
怪我を負っているBrudとDyleも、体を引きずりながらも皆のサポートに徹する。
「痛みなど構っていられません……Jevinさんを……行かせろ!」
Dyleの静かな叫びが響いた。
Fun BotはJevinに襲いかかってくる触手から守る盾となる
『行ってください!!』
その声は金属の軋みを伴い、必死さが滲み出ていた。
Blackは怒り狂ったように、ありとあらゆる方向から触手を繰り出す。
仲間たちは次々と傷を負い、地に叩きつけられる。それでも立ち上がった。
「まだ動ける…!」
「Jevinを……行かせるんだああ!!」
呻き声と絶叫が交じり合い、戦場は混沌と化す。
Jevinの足は止まらなかった。
仲間たちが血で、汗で、肉体で切り拓いた一本道を、彼はまっすぐ進み続けた。
手に握られた斧は、もはや重さを超え、魂そのものとなっていた。
すると、影が巨大な腕となり、Jevinめがけて振り下ろされた。
『……っぐ!』
Jevinの脇腹を抉り、Jevinは失速しその場に膝をついた。
皆それを見て絶望に陥る。
blackは更に触手を強く唸らせ、仲間に襲いかかる。
veeの画面はボロボロにひび割れ、
sproutやAstroの体からは大量の血が滴り、
Dandyは気を失ったようにその場に倒れ込んでいる。
shellyは頭を強く打ち、
Pebbleは壁に叩きつけられ、
Dyleは瓦礫に押し潰され身動きが取れない。
Fun Botはザザッ…と小さなノイズ音を出しながら壁にもたれかかっている。
brudとPinkiは大量の出血で動けそうにもない。
残るはGrayだけだった。
しかしこんな状況の中、一人でblackを倒す事なんて出来ない。
Grayは荒く呼吸を繰り返す。
段々とGrayに迫る触手。その時、大きな銃声と共に触手が目の前で弾けた。
その銃を打った手はDandyとは違った。
頭から血を滴らせ、それでも心強い笑みを浮かべる彼は…Tunnerだ。
彼だけではない。
VineriaやSky、OWAKCX。異形化したSIMON達まで動きを止めて、blackの方を向いていた。
かつての仲間達がDandy達の必死の戦いに段々と自分の記憶が鮮明になり、今完全に取り戻したようだ。
「…ね……がい………いって……」
sproutが声を振り絞り、両手をJevinに伸ばす。そして自分の体を駆使し、両手に力を込めてJevinへと作り出したカップケーキを投げた。
『…んぐ、?!』
そのカップケーキはJevinの口に入る。Jevinは驚きつつも、通常より小さいサイズなのですぐに飲み込んだ。
すると、体の傷や脇腹の傷が完全では無いが癒えた。
「チーム…ワークで夢は……叶うんだから…!」
shellyは片手を上にあげてJevinを応援する。
それは暖かく、勇気が出るような応援だった。
「…ここで、ワタシ達が負ける?残念、不正解です。」
veeは自身のマイクを握り、マイクチェックで微かにだがblackの触手を避ける事が少しだがしやすくする。
「…きっと……Jevinなら、出来る……」
Astroが上手く動かない体を動かし、ゆっくりとJevinに近付き、少しだがスタミナを回復させた。
Dandy達がこの世界に来てから使うことの出来なかった能力が今、使う事ができるようになったのだ。
Jevinは何も言わず、再び立ち上がり、斧を片手に仲間達に優しくも心強い笑みを浮かべ、blackに向き直す。
そして、地面を蹴り、blackの元へと走り出した。
一斉に襲いかかるblackの触手。Vineriaの蔓が触手を抑え、Tunnerは素早く銃をリロードし、触手を慣れた手つきで撃ち抜く。
SKYは瓦礫を退かし、なれない手つきで、それでも一生懸命皆の傷を止血し包帯を巻く。
その他の仲間もどれだけ体が欠損しようがJevinを守るという気持ちでその体を最後まで動かし続けた。
Jevinに触手が襲いかかろうとすればPebbleが強く吠えて注意をそらす。
Grayは松明に火をつけ、その松明を大きく振り回して触手をJevinから遠ざける。
PinkiやFun Botも飛び出し、そこにある瓦礫を投げて、少しでも動きを鈍らせる。
Jevinはとにかく走り続けた。
触手を潜り抜け、飛び越え、何があろうとも足を止めることはなかった。
ついにJevinが本体を目で捉えた時、
Jevinは思いっきり飛び、blackの中心に斧が叩き込む。
その瞬間、轟音も衝撃もなかった。
ただ、眩い光が世界全体に満ちた。
影は霧散し、黒い渦はほどけるように消えていく。
重圧が消え、空気は静まり返った。
Jevinは膝をつき、斧を握ったまま肩で荒い息をした。
仲間たちは瓦礫の中に倒れ込み、全員が力尽きたように沈黙した。
そこには、もう黒い影は残っていなかった。