如月倫子の長い黒髪が艶かしい白い背中で波打った。抱え込んだ腰、擦りつける賢治の下腹に喘ぎ声で応えた如月倫子の足の親指が開いては閉じた。
「・・・っ!」
賢治の額から汗が滴り落ち、如月倫子の肩甲骨の窪みを濡らした。クイーンサイズのベッドは激しく軋み始め、後背位から正常位へと向きを変え、掻き抱いた2人は腰を前後に激しく振った。
「んっ・・・!」
如月倫子の足の指が開き切ったと同時に、賢治は奥を突いたまま腰を小刻みに震わせた。暫しの余韻を味わい、それがずるりと引き抜かれた瞬間、如月倫子は「ああ」と切なげな呻き声を漏らした。
「賢治?」
激しい熱情が引き潮のように消え、いつもならば「シャワー浴びる?」と急かし気味の賢治だが、その夜は如月倫子に腕枕をし、長い黒髪を愛おしげに撫で続けた。
「どうしたの?」
程よい肉付きの如月倫子の白い脚、賢治は薄い体毛の脚を絡めると、濡れた淫部を擦り上げた。「あ、やだもう」そう言葉を返しつつ、ふたたびの快感を求める腰は、妖しく上下した。賢治の太腿に如月倫子の体液が絡み付く。
「もう1回、しましょ?」
「時間がないよ」
「泊まれば良いじゃない。菜月さん、いないんでしょ?」
「いないけど」
「ほら、もうこんなに、ここは正直だわ」
如月倫子の手は、すでに形を変えた賢治に手を添え、馬乗りになると騎乗位で身体を上下させた。その動きに合わせて弾む豊満な胸。賢治はそれを握り、つねるような仕草で突起を弄った。
「あぁ」
「倫子、おまえ、虐められるのが好きだよな」
胸を激しく揉みしだく度に、突起は膨らみ始めた。賢治は身体を起こすと、まるで赤子が母乳を飲むようにむしゃぶり付き、突起を舌で転がし軽く噛みついた。
「んん!」
腰の動きが激しくなり、腰を掴んだ賢治は如月倫子の身体を対面座位で突き上げ続けた。唇が重なり、口腔内を互いの舌が所狭しと這い回った。ゆさゆさと揺れ続ける如月倫子は「はぁ!」と声を挙げて絶頂に達し、賢治は力が抜け人形のようになったその肢体を堪能し尽くした。
「け、賢治、もう」
「最高だよ、倫子!最高だ!」
「・・・・・ん」
「りん、倫子!」
賢治は体液を如月倫子の臍下目掛けて解き放った。その様子を見た如月倫子は口元を嫌らしく歪めた。
「うちの人、出来ないのよ」
「なにが」
賢治は処理を済ませ振り返った。そこには体液を指で掬い上げ、滴らせる妖艶な如月倫子がいた。
「子どもが出来にくいのよ」
「そうなのか」
「これで賢治の子どもが出来ていれば良いわ」
賢治は顔色を変えた。
「俺は、おまえと結婚する気はないぞ」
「あら、偶然ね。私もないわ」
如月倫子は、夫の富と名誉、財力を手放す気など更々なかった。また、賢治も、如月倫子とは遊ぶだけ遊んだら別れるつもりでいた。
「赤ん坊が出来ていたら、どうするんだ」
「夫の子どもとして育てるわ」
「そんな事が出来るのか」
「したくもないけど、明日にでも夫とセックスしておくわ」
「そ、そうか」
然し乍ら、如月倫子は安堵の溜め息を吐いた賢治の横顔が許せなかった。夫と離婚する気はない、けれど恋焦がれた昔の恋人である賢治を失う事も許せない。
(菜月さんが居なくなれば良いのに)
菜月が居なくなれば、夫と賢治、そのどちらもが手に入ると如月倫子は考えた。するとそこで、電子タバコを吸い始めた賢治が前髪を掻き上げ、気怠げな面持ちをした。
「どうしたの?そんな顔して」
「あ、ああ?」
「なにか悩み事でもあるの?」
「ああ、最近、俺の周りを嗅ぎ回る奴がいてウゼェんだよ」
「嗅ぎ回る?」
「湊だよ」
「あぁ、血の繋がらないお姉さんと仲良しのアブノーマルな男の子ね」
「くそっ」
如月倫子は賢治にしなだれ掛かると、耳元で囁いた。
「殺しちゃえば良いのよ」
賢治の動きが止まった。
「な、なに馬鹿な事、言ってるんだよ」
「本当に殺したりしないわ、ちょっと脅かすだけよ」
「脅かすだけ?なんだよ、それ」
如月倫子は、湊が運転する車に細工をしてはどうかと提案した。賢治は、そんな事をすれば警察の捜査で、素人の小細工などすぐに明るみに出てしまうと反論した。如月倫子は少しばかり呆れた顔をした。
「馬鹿ね、缶コーヒーを転がすだけで良いのよ」
「缶コーヒー?」
「そうよ、缶コーヒーがコロコロ転がってブレーキの下に挟まってご覧なさい?車は急には停まれませんって言うじゃない」
「ブレーキ」
「そうよ」
「おまえ、本当に怖い女だな」
「うるさい仔犬ちゃんは、Queenでチェックメイトよ」
(この女を裏切ったらどうなるのだろう)如月倫子を抱きしめた賢治の表情は青ざめた。
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