何日か経ったある夜。のあは机に向かいながら、ため息をひとつ。
スマホの画面には「未読」の文字が並んでいる。
ゆうくんから届いていた短いメッセージ。
『今日、元気だった?』
『ちゃんと食べた?』
返すのが怖くて放っておいたけど、優しい言葉が胸の奥をチクリと刺す。
「ゆうくん…まだ、待っててくれてるんだ」
小さく呟いて、のあはそっと返信を打ち込む。
『うん、元気。ありがと』
ほんの一言だけ。
でも送信ボタンを押した瞬間、胸の奥に温かさが広がった。
***
ゆうくんのスマホが震える。
見た瞬間、息を呑んだ。
のあから…返事がきた。
たった一行なのに、涙が滲む。
『のあ…ありがとう』
そう返信してから、スマホをぎゅっと握りしめる。
***
それから少しずつ、二人の間に言葉が戻り始めた。
毎日何十通もやり取りしていた頃にはまだ届かない。
でも、数日に一度「元気?」って尋ねる言葉と、「うん、大丈夫」って返す言葉が、少しずつ二人の距離を縮めていった。
のあはまだ不安を抱えている。
ゆうくんもまだ苦しい想いを抱えている。
だけど、それでも。
少しずつでも歩み寄ろうとする二人の姿は、まるで壊れそうな糸を、何度も結び直しているみたいだった。
夜、のあはスマホを抱きしめて、小さく笑った。
「ゆうくん…もうちょっとだけ、待っててね」
画面の向こうでは、ゆうくんも同じように微笑んでいた。
「のあ…大丈夫。俺、ちゃんと待ってるから」
じわじわと近づく心。
切なさの奥に、小さな光が確かに灯っていた──。
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