テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
40
えみ
101
50
えみ
40
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「今日はもう帰ろう。ちゃんと休んで」
「うん……」
メンバーたちはスタッフと相談し、ふみのりが無理をせず休めるようにした。
帰りの移動中。
ふみのりは座席にもたれかかっていた。
「ふみ、寒くない?」
「ちょっと……」
「上着貸すよ」
「ありがと」
別のメンバーが飲み物を用意してくれる。
「水飲めそう?」
「うん」
「ゆっくりでいいからね」
普段なら冗談を言い合っているメンバーたちが、今日はみんな優しかった。
ふみのりは少し戸惑っていた。
「……みんな、どうしたの?」
「どうしたって?」
「なんか、めっちゃ優しい」
「いつも優しいでしょ(笑)」
「うそつけ(笑)」
久しぶりに小さな笑い声が出た。
すると、隣のメンバーがふみのりの頭を軽くなでた。
「これからはちゃんと頼ってね」
「……うん」
ふみのりは目を閉じた。
そのまま、静かに眠ってしまった。
翌日。
ふみのりはまだ体調が万全ではなく、仕事を休んでいた。
メンバーたちは心配して、連絡を送っていた。
そして夕方。
「ふみ、電話してもいい?」
メッセージを送ったのは、メンバーの一人だった。
しばらくして返信が来る。
『いいよー』
電話をかける。
「もしもし?」
「ふみ、大丈夫?」
「うん。昨日よりはいいよ」
「よかった」
少し沈黙が流れる。
「ふみ、聞いてもいい?」
「なに?」
「俺たちのこと、まだ怖い?」
ふみのりはすぐには答えなかった。
そして、ゆっくり口を開いた。
「……ちょっとだけ」
「そっか」
「みんなと仲良くしたいのは本当だよ。でも、またあんなふうになったらって思うと怖い」
「うん」
「俺、みんなに嫌われたって思ったとき、どうしたらいいか分かんなかった」
声が少し震える。
「嫌われたくなくて、ずっと笑ってた。でも、笑ってるのも嫌って言われて……」
電話の向こうが静かになる。
「俺、みんなのこと大好きだったから、結構つらかった」
その言葉を聞いて、相手はしばらく何も言えなかった。
「……ごめんね、ふみ」
「ううん」
「もう、ふみが一人で抱え込まなくていいようにする」
「……ありがとう」
「元気になったら、またみんなでご飯行こう」
「うん。行きたい」
その返事は、久しぶりに素直なものだった。
数日後。
体調が回復したふみのりは、久しぶりに楽屋へやってきた。
ドアを開けると、メンバー全員が揃っていた。
「あ、ふみ!」
「おはよー!」
「体調どう?」
次々に声をかけられる。
「もう大丈夫!心配かけてごめんね」
「よかったー!」
そのあと、メンバーたちがふみのりを囲んだ。
「ふみ、ちょっといい?」
「ん?」
「みんなでちゃんと謝りたい」
一人ずつ、ふみのりに言葉を伝えていく。
「無視してごめん」
「嫌な態度取ってごめん」
「ふみが何度も話しかけてくれてたのに、ちゃんと向き合わなくてごめん」
「もっと早く気づけばよかった」
ふみのりは一人ひとりの言葉を聞いていた。
そして最後に、
「俺も、みんなとまた仲良くしたい」
と答えた。
「本当に?」
「うん。でも、ちょっとずつでいい?」
「もちろん!」
すると、メンバーの一人が両手を広げた。
「じゃあ、仲直りのハグ!」
「えー(笑)」
そう言いながらも、ふみのりはその腕の中に入った。
一人、また一人と加わって、いつの間にか全員でのハグになっていた。
「ちょっと!暑いって!(笑)」
「ふみが帰ってきた記念!」
「大げさだよ(笑)」
楽屋に、久しぶりの大きな笑い声が響いた。
それからしばらく経ったある日。
仕事終わりの楽屋。
ふみのりはソファに座り、スマホを見ていた。
「ふみー」
「んー?」
「隣いい?」
「いいよ」
メンバーが隣に座る。
すると、ふみのりは少し迷ったあと、その肩に頭を預けた。
「……眠い」
「寝ていいよ(笑)」
「んー……」
その様子を見ていた別のメンバーが近づいてくる。
「え、ふみ甘えてるじゃん!」
「甘えてない!」
「いや、めっちゃ甘えてる(笑)」
「うるさいなぁ(笑)」
そう言いながらも、ふみのりは肩から離れなかった。
「ふみ、こっちも空いてるよ」
「なにそれ(笑)」
「ほら、おいで」
ふみのりは少し笑って、今度はそちらに寄りかかった。
「今日どうしたの?」
「なんか……みんなといると安心する」
その言葉に、メンバーたちは優しく笑った。
「いつでも甘えていいよ」
「ほんと?」
「ほんと」
「じゃあ、もうちょっとここにいる」
「どうぞ(笑)」
ふみのりは目を閉じた。
以前は、甘えることさえ怖かった。
でも今は、少しずつ安心して自分を出せるようになっていた。
久しぶりに全員で集まった仕事の日。
撮影が終わり、メンバーたちは楽屋で写真を撮っていた。
「みんな寄ってー!」
「ふみ、こっち!」
「待って、俺まだ準備できてない!」
「早くー!」
わいわい騒ぎながら、全員が集まる。
カメラのタイマーが動き始めた。
「3、2、1!」
シャッター音。
撮れた写真には、全員の笑顔が映っていた。
「見せて見せて!」
ふみのりもスマホを覗き込む。
「うわ、いい写真!」
「これ送っとくね!」
「ありがと!」
写真を見ながら、ふみのりはふと思った。
(また、みんなと笑えるようになったんだ)
すると、隣のメンバーが声をかける。
「ふみ?」
「ん?」
「これからもよろしくね」
ふみのりは少し驚いて、それから笑った。
「こちらこそ!」
「もう一人で抱え込まないでよ?」
「分かってるって(笑)」
「本当に?」
「本当!」
メンバーたちが笑う。
ふみのりはみんなの顔を見渡した。
一度は、自分の居場所がなくなったと思った。
もう隣にいることはできないと思った。
でも、今は違う。
まだ完全に消えたわけではない不安もある。
それでも、これからは少しずつ話していける。
頼っていける。
そして、また一緒に笑っていける。
「ねえ、みんな!」
「なにー?」
「今日、みんなでご飯行かない?」
その言葉に、全員が笑った。
「行く行く!」
「もちろん!」
「ふみも絶対来てね!」
「俺が誘ったんだけど!(笑)」
楽屋いっぱいに笑い声が響く。
ふみのりは、その真ん中で笑っていた。
もう、隣にはいられない。
そう思っていた場所に、今はちゃんと戻ってこられた。
もう一度、9人で。
それが、ふみのりの願いだった。
おしまい!!
最後まで読んでくれてありがとうございました!