この世界の片隅に
スタッフ「では最後に放射線技術士として
活躍されていますが何故今までここまで頑張って来れたのですか?」
スタッフ「できれば体験談などを元にコメントをいただけるとありがたいですね」
d「……う〜ん、そうですね〜」
d「今僕がここにいて、放射線技術士として活躍出来ているのは友達が手を差し出して、勇気を与えてくれたおかげですね」
d(ありがとう……mfくん…)
数年前
d「いってきまーす! 」
d姉「はーい、行ってらっしゃい」
d「はぁ……学校…か……」
d「やだな…」
バシャン
d「っ……… 」
d(また…か……)
クラスメイト「やっばw」
クラスメイト「あほ狐が濡れ狐になってるじゃんw」
d(……また…狐狐って)
d(俺は好きで狐の姿に生まれたんじゃないのに)
d(なんで俺だけこんな目に合わなくちゃ行けないんだよ……)
d(………着替えてくるか)
ドンッ
???「わっ!……」
d「ててて……」
???「ご、ごめん!大丈夫?」
d「あ……うん、大丈夫 」
???「ほんとごめんね!あ、時間やば…行かないと……ごめんね!じゃあまた!」
d「あ、うん」
タッタッタッ
d「………久しぶりに…俺のこと心配してくれる人と家族以外に会ったな……」
d「でも…あの人も俺のことよく見てなくて…きっと気づいたらまた同じようになるんだろうな……」
d「着替えよ」
d(あ〜…やっと着替え終わった…)
d「あ、時間やば…」
d(早く教室もどらないと)
d(ギリセーフ…)
クラスメイト「あいつまた戻ってきたの?w一生戻ってこなくてよかったのにw」
d(………)
先生「おーい、お前ら席に着けよ〜」
クラスメイト「へーい」
先生「それじゃホームルームを始める」
先生「今日は実は転校生が来ているんだ」
先生「はい、じゃあ入って来て自己紹介をたのむ」
m「こんにちは、頭良高校から転校してきたmfです。好きなことは勉強や頭を使うこと、嫌いなことはホラゲーとかです。よろしくお願いします」
クラスメイト「まって!めっちゃイケメンじゃない?」
クラスメイト「しかも頭良高校ってめっちゃ頭良い人たちの中でも一握りが通う高校じゃね?」
クラスメイト「そういや頭良高校の人たちはハーバード大学か東大あたりに行く人が9割以上って聞いたことあるぞ…」
クラスメイト「やっば!」
クラスメイト「偏差値なんぼなんだ…」
クラスメイト「きゃー!mfくんに勉強教えてもらいたーい!」
d(mf…か…なんか聞いたことある名前だけど…)
d(まぁ頭良高校に通う人なんだからテレビに出たりしてる人もいるだろうな…)
d(そもそも…俺には近づきようのない相手だし…)
d(にしても…何で頭良高校からこんな平凡な学校に来たんだ?)
d(家庭の事情にしても頭良高校は寮もあるし奨学金のサービス手当も充実してるらしいけど… )
d(ま…いっか…)
先生「おーい、お前ら落ち着けー」
先生「とりあえずmfは〜…dnの隣に座ってもらおうか」
mf「分かりました」
クラスメイト「ちっ…なんであいつの隣に…」
クラスメイト「………そうだ…mfくん!dnくんの席わかんないだろうから案内してあげ…」
m「いや、わかるから大丈夫」
d(なんで…)
m「よろしくねdnちゃん」
d「d…dnちゃん?…」
m「あ…ごめん…嫌だった?…」
d「いや…別にそんな事ないけど」
m「ほんと?じゃあこれからdnちゃん呼びしていい?」
d「う…うん」
m「あ!そうだ…これ落としてたよ」
d「あ!学生証……ってことは…」
d「mfさん…朝ぶつかった人?」
m「そうだよ、やっと思い出してくれた?ぶつかった時に落として、戻ってきたらそれが落ちてたんだよね」
m「てか!mfくん呼びにしてよ!」
m「俺もdnちゃん呼びしてるし!」
d「わ、わかった…mf…くん」
m「ありがと!」
先生「じゃあ授業始めるぞ〜」
先生「よし、これで終わる」
先生「気を付けて帰るようにな」
クラスメイト「mfくん!今日一緒に帰らない?」
m「あぁ、ごめん」
m「おれdnちゃんと帰りたいから」
クラスメイト「は?……なんでそいつなんかと…」
m「俺が誰と帰ったって勝手でしょ」
m「さ!行こdnちゃん!」
クラスメイト(ギロッ)
d「っ………」
d(ここで従わなきゃ…また……)
d(mfくんには悪いけど…)
d「ごめんmfくん!今日委員会あったんだった」
d「先帰ってて!」
クラスメイト「ってことだから行こう」
m「………わかった」
d(これでよかったんだ…)
d(そもそも…俺とは釣り合わない相手だし…)
d「ただいま~…」
d姉「おかえり〜!」
d姉「聞いたよ!dnのクラスに頭良高校の子が入ってきたんでしょ?」
d「あぁ…だね…」
d姉「どうしたの?元気ないけど…」
d「な、なんでもない!」
d姉「そう?…ならいいけど…辛かったらいつでも相談してね?」
d「うん…姉ちゃんありがと…」
俺は姉ちゃんと二人で暮らしてる
もともと、俺は裕福な家庭で育った
でも俺が小学校4年生のとき父さんの会社が倒産した
母さんは父さんの会社が倒産したと同時に家を出た
母さんはきっと社長だから父さんと結婚したんだろう
父さんはそんな母さんの穴埋めをするように俺たちに優しく接してくれた
そんな中父さんは他界した
過労が原因だった
残った身内は姉ちゃんだけ
そこからは俺と姉ちゃんで生きてきた
信頼できる人なんてもう姉ちゃんしかいない
友達なんていない、祖母や祖父もいない
俺の居場所は家しかない
d姉「dn〜!お姉ちゃんバイト行ってくるね〜!」
d「あ、うん!わかった〜!いってらっしゃ〜い」
d姉「行ってきまーす」
d「やっぱ俺も…バ先探したほうがいいのかな?…」
今姉ちゃんは事務職の正社員と居酒屋で働いている
事務職の方はまぁまぁ給料いいらしいけど二人分を養うためにはもっと必要
だから空いたときには居酒屋でバイトしている
それでも金銭的な余裕はない
俺は塾に行ってないし放課後暇だからバイトしたいって姉ちゃんにせがんだことがある
でも姉ちゃんは
d姉「だーめ!まだ高校生なんだから!今が青春時代よ?姉ちゃんはdnにお金のことを気にしてほしくないの」
d姉「家計のことは心配しないで!青春して!それが姉ちゃんのお願い」
とのことだった
そもそも…青春なんてできないんだけど…
いじめられてるやつがどうやって青春するんだって話
姉ちゃんには心配かけたくない…だからいじめられてる事は言ってない…けど…
最近…どうも自分が怖くなってきた…
高いところにいたらここから飛び降りたらどうなるんだろうな…とか
道路の近くにいたら車にひかれたらどうなるんだろうなとか…
そういうことを考えてしまう事がある
そろそろ心身的な限界が来ているのだろうか…
それでも姉ちゃんには言わない…
他に信頼できる人もいないし…
d「はぁ〜ぁ…」
d「そういえば…頭良高校mfくん…なんでうちなんかの底辺学校に…」
d「まっ…考えてもしゃーないか」
d「………暇だなぁ」
d「その辺ブラブラするか」
d「懐かしいな…ここの公園」
よく家族みんなで遊びに来てた公園
姉ちゃんとそこの砂場で泥遊びして
母さんに服汚さないでって怒られて
父さんは元気でいいじゃないかって笑ってて…
あの時は幸せだった…
………そういえば
数ヶ月だけ…友達と一緒に遊んだことがあったっけ…
名前も顔も忘れたけど
優しくて…心配性で…かっこよかった…
見た目なんて気にせず遊んでくれた…
………今の俺にも…あんな友達できるかな…
……そういえば…mfくんも見た目関係なしで話しかけてくれたなぁ…
……でも…俺らがこれから仲良くするなんて無理な話だよね…
???「d〜nちゃん!」
d「おわっ!」
d「って…びっくりした…mfくんかぁ〜…」
m「やほ!」
d「どうし…」
……だめだ…ここで話したら…また…
d「……ごめん…俺帰る」
m「え、ちょ!」
タッタッタ
m「dnちゃん…」
ごめんmfくん…ほんとにごめん…
d「ただいま…」
d「さすがに姉ちゃんは帰ってきてないよな…」
d「もう…寝よ…」
d「おはよ…」
d姉「dn!おはよ!」
d「今日は朝ごはん大丈夫」
d姉「ど、どうしたの?!」
d「ちょっと気分じゃないだけ」
d「学校行ってくる」
d「ちょ!」
でてきてしまった…
………腹は減った…だけど…
………なんだか…食欲でないんだよな…
あ〜あ…今日は何されるんだろ…
教室からクスクスと笑い声が聞こえる
もうなんでもいいや
早く教室入ろ
m「ごめん」
d「え?…mfくん?…」
ガラガラガラ
バシャン
クラスメイト「………え?」
そこにはびしょ濡れになったmfくんが立っていた
俺より先に教室に入って身代わりになったんだ…
m「…………」
クラスメイト「mfくんごめん!こんなつもりじゃ!…」
m「じゃあなんのつもりだったの?」
m「まさか…この水をdnちゃんに浴びせようっていうダサい事をしようとしてた訳じゃないよね?」
クラスメイト「そ、それは…」
d「mfくん!大丈夫?…」
m「うん!大丈夫だよ!dnちゃんはケガない?」
俺に向けられた笑顔はさっきまでの冷徹な笑顔ではなく…温かみがあって…懐かしい笑顔だった…
d「俺は平気だけど…」
m「よかったぁ!」
クラスメイト「なんで…なんで…」
クラスメイト「dn…ちょっと来なさい」
d「……は…はい…」
m「だったらそのdnちゃんにするっていう話、俺にも聞かせてくれない?」
クラスメイト「っ……そ、それは…」
m「何?俺には言えないようなことなの?」
クラスメイト「なんで…」
クラスメイト「なんでそいつなんかかばうのよ!」
クラスメイト「私のほうがよっぽど貴方と釣り合ってる!そんなクソ狐より私のほうが!」
m「そのうっせぇ口今すぐ閉じろ」
クラスメイト「っ……」
m「dnちゃんよりお前のほうが俺と釣り合ってる?笑わせんな」
m「お前なんかと比較されるdnちゃんが可哀想だ」
先生「おい!お前ら何の騒ぎ…」
先生「って!どうしたmf!そんなびしょ濡れになって!」
m「こいつらにやられました、ほんとはdnちゃんに当てるつもりが僕に当たったそうです」
m「あぁ、あとそれ以外にも前科があるみたいですよ」
先生「お前ら!生徒指導室に来い!」
クラスメイト「チッ……」
先生「mfは着替えてこい!」
m「先生、今クラスメイトと関わるのは辞めておいたほうがいいと思うので俺とdnちゃんは帰っていいですか?」
先生「わかった、特別に許可しよう」
m「んじゃ!dnちゃん行こ!」
d「お、俺?!」
来て…しまった…
m「見てみて!ここ俺の思い出の公園なんだぁ!」
d「ここって…」
俺がよく遊んでた公園…
mfくんもここで遊んでたんだ…
m「………ねぇ…dnちゃん…」
d「ん?何?」
m「……ちょっとだけ…昔話してもいいかな?…」
d「う、うん…いいけど…」
なんで…今のタイミングに?…
mf過去視点
俺の家系は代々医者になってた
ここでは成績優秀なのが「当たり前」
小さい頃から勉強勉強勉強勉強
勉強に囚われてた
今思い返したらそんなことしててつまんなかっただろうけど
当時と俺にとってそれは当たり前のことだと思ってた
どの家も小さい頃から勉強
けど幼稚園に通い始めて気づいた
俺の家は異常なんだと
そう思ったのはあの言葉だった
「え〜?お前勉強してんの?」
「人生つまんなそ〜w」
「楽しくないだろ、勉強なんてw」
俺が「当たり前」と思ってたのは世間では「異常」だったんだ
その日から俺は反抗するようになった
けど両親はそんな反抗を抑えるように勉強を押し付けるようになった
m父「お前は出来損無いなんだ!だから人より努力しろ!俺の子供としての自覚を持て!俺に恥を欠かせるな!」
m母「なんでこんなのもわかんないの?努力が足りてないんじゃない?全く…産み方が悪かったのかしら…」
次第に反抗することを諦め
「自分」を出すことも諦め
出されたものを素直に受け入れるようになっていった
だがそんな俺に一筋の光となる子が現れた
それは小学校2年生の時の夏休み
両親が海外出張で祖母の家に預けられた
祖母と祖父は医者だった
だけど両親とは違い俺に向き合って勉強を教えてくれる
無理強いせずゆっくり寄り添ってくれる
俺はそんな祖父母が好きだった
とある時祖父が遊びに行こうと言ってくれた
m祖父「お父さんとお母さんには内緒だぞ?じいちゃんとばあちゃんとmfだけの秘密だ!」
m祖母「といっても、私たちも歳だから近所の公園くらいしか連れていけないけどねぇ…」
近所の公園
それだけでも俺は遊園地のように思えた
いつも窓から見る公園
皆が楽しそうに遊んでる公園
俺には関係ない場所だと思ってたけど
俺もそこに紛れるんだとドキドキしたのを覚えてる
m「じ…じいちゃん…ほんとにあそんでいいの?!…」
m祖父「あぁ!いいぞぉ!目一杯遊べ!」
???「ねね!君も遊ぶの?」
m「だ…誰?…」
d「俺dnっていうんだ!よろしく!」
d「君…名前は?」
m「お…俺はmf……よ…よろしく…」
d「mfくんかぁ!よろしく!」
d「ねね!一緒に遊ぼ!」
m「い…いいの!」
d「うん!もっちろんだよ!」
勉強しかしない俺にできた
始めての友達
m「じいちゃん!俺遊んでくる!」
m祖父「おぉ!いってらっしゃい!」
m祖母「ふふっ…良かったわねぇ…」
m祖父「ほんとに連れてきてよかったよ」
m祖父「世の中勉強だけじゃないってmfにも親としての責任を持つ二人にも知ってもらえるといいんだけどなぁ…」
d「mfくんは何して遊びたい?」
m「お…俺?!…俺は…」
m「………俺…今まで勉強しかしたことないから……遊び…知らないんだ…」
こんな事言ったら絶対嫌われるに決まってる………そう…心では思ってたはずなのに…
気づけば口に出していた
きっとこの子ならそんな事は気にしないだろうという安心感が何故かあった
その期待に応えるようにdnちゃんは言ってくれた
d「じゃあ俺がmfくんに色んな遊び教えてあげる!」
m「あ…ありがとう!」
そこから俺は祖父母の家に預けられてる最中、毎日その公園に行き、毎日dnちゃんと遊んだ
祖父母は俺が友達と遊びたいと自分を出したことがうれしかったのか文句1つ言わずに毎日連れて行ってくれた
その時は毎日が楽しかった
優しい祖父に起こされ
祖母が作ってくれた美味しいご飯を食べて
優しい祖父母が勉強を教えてくれ
dnちゃんと遊んだ
だが幸せな日々は長くは続かなかった
dnちゃんと遊び始めて2週間が経ったころ両親が出張から帰ってきて家に戻された
厳しい両親
会話のない食卓
強制される勉強
そんな中でも俺は祖父母以外に始めて俺を俺として見てくれたdnちゃんの事を忘れることができなかった
d「dnちゃん……って……」
m「………久しぶり…覚えてる?…」
d「………覚えてるよ……もちろん…」
d「mfくんにも…mfくんのおじいちゃんとおばあちゃんにもお世話になったもん…」
d「でも……なんで…」
m「…………dnちゃん……俺と……もう一度あの頃みたいに……遊んでくれませんか?…」
d「いい…けど…」
d「なんで今…」
m「………俺の恩人だから」
d「…………え?…」
m「………ゴメンね?…早く…言えばよかったかもしれない…」
m「俺さ…余命宣告されてるんだよね…」
m「持って後2週間ぐらいかなぁ?…」
m「悲しいよね〜…まだ高校生なのに」
気づけばdnちゃんが泣きながら俺のことを抱きしめてくれてた
d「mfくん……笑わなくて…いいんだよ?…」
d「生きたいって…泣いて…いいんだよ?…」
m「っ!………」
2週間前
m「勉強…しなきゃ…」
その時俺は勉強三昧だった
睡眠時間を削って勉強
食事を取る時間すらも惜しかった
そんな生活をしていてとうとう俺の体に限界が来た
m「っ!………」
ひどい頭痛、吐き気
気づけば病室のベットにいた
目を開けて飛び込んできたのは2つの光景だった
泣いてる祖父母
心配なんて微塵もないような目でこっちを見ている両親
m「なん……で…」
言葉を発したのが間違いだった
m父「お前なんでこんなことで倒れるんだ!」
m父「忍耐力がなってない!」
m母「なっさけないわぁ…ほんとにうちのコかしら…」
聞こえてきたのは両親からの罵倒の声
m祖父「いいかげんにしろ!」
普段温厚で優しい祖父が怒りをあらわにしたのは初めて見た
m祖父「mfはこんなに頑張ってんだ!」
m祖父「それなのに親が子の努力を認めてやらんでどうする!」
m祖父「mfはお前の道具なのか!違うだろ!」
m祖母「これ以上黙って見てられません、mfは私たちで保護します」
m母「っ!………」
m祖母「貴方達に拒否権はありません」
医者「あぁ!お目覚めになられましたか!」
m父「気分が悪い!帰らせてもらう!」
m祖母「勝手にしなさい」
ガラガラガラ
医者「それでmfさんの体調なのですが…」
医者「……突然で困惑するかもしれませんがmfさんの余命は持って一ヶ月かと…」
m祖父「………え?…」
急に渡された余命宣告
m祖父「ど、どういうことなんですか!」
医者「恐らく…勉強やストレスで生活習慣や脳にダメージを与えてしまったことで残りの脳や血管が活動できる時間が減ってしまったものだと…」
m祖父「そ……そんな……」
m祖母「ゴメンね……気づいてあげられなくて…」
祖父母は泣いていた
でも俺の心の中は泣いていなかった
あぁ…やっと解放される…
なんの価値もない人生から
けど、そう思った瞬間ある人の顔が思い浮かんできた
一時も忘れなかった、dnちゃんの顔が
浮かんだ瞬間から俺の覚悟は決まっていた
m「………じいちゃん…ばあちゃん…お願いがある」
m「ワガママだってのはわかってる……でも…俺はもう一度俺を救ってくれたdnちゃんに会いたい」
m祖母「mf………」
m祖父「当たり前だ!残りの時間いっくらでもワガママ言え!今まで言えなかった分、じいちゃんとばあちゃんが受け止めてやる!」
m「…………ありがとう!」
あれが俺が生まれて初めて…
最初で最後のじいちゃんとばあちゃんに言った人生初のワガママだった…
そこからじいちゃんとばあちゃんは2週間足らずでdnちゃんの通ってる高校を見つけてくれだ
m「だから俺はここにいる」
d「そう…だったんだ…」
m「偏差値とか関係なくdnちゃんのいる高校に…dnちゃんに会いたかったんだ」
d「っ…………」
d「…………mfくんは…後2週間で…」
m「dnちゃん………俺のワガママ…聞いてくれない?…」
d「………もちろん!」
m「後2週間で居なくなるとか考えずにさ……普通の友達として…俺と…関わってくれませんか?…」
d「………いいよ!そのワガママ、聞いてあげる!」
mfくんがどんなに辛い思いをしているのかなんて分からない
勉強に縛られて
ろくに人生楽しめなくて
縛られたものによってすぐにこの世を去らなきゃいけなくなって
まだやりたいこともあっただろうに
でもmfくんは俺のことを探してくれた
俺のために残りの寿命を使って
わざわざ来てくれた
俺にできることはただ1つ
mfくんと一緒に過ごす
俺といてよかったって…残りの2週間の寿命を使ってよかったって思わせられるようにするだけ
d「………mfくん!」
m「何?」
さいっこうの思い出を作って
悔いのない2週間を過ごさせてあげるから
d「………遊園地行こ!」
m「ふはっ!いきなりだなぁ」
d「いいじゃんいいじゃん!」
………dnちゃんはきっと…涙を隠してるはず
優しいから…人のために泣いてしまう
だけどそれは今俺のためにならないってわかってるから
今は笑って過ごしてほしいって思ってるはずだから
俺はdnちゃんと思い出を作って
さいっこうの2週間にするだけ
m「…………いいよ!いこっか!」
d「うん!」
d「俺のヒーローは一生懸命で…努力家で…」
d「それでいてとても優しくて…」
d「俺はその人から生きる上での大切なことを教えてもらったんです」
d「だから俺はその期待に応えたい」
d「いなくなった今でも……俺は君のおかげで頑張れてるって感じさせたいんです」
スタッフ「ありがとうございました」
………mfくん…俺は…
君のおかげでこの舞台に立ててる
あの後のいじめも君のおかげでなくなった
mfくんがいなかったら俺の人生は狂ってたのかもしれない
………もしかしたら生きてなかったのかもね
本当にありがとう…mfくん
俺に……色んな事を教えてくれて…
スタッフ「ではインタビュー終了となります」
スタッフ「ありがとうございました」
d「こちらこそありがとうございました」
d「………あな…たは……」
m祖父「dnくん…で間違いないよね」
d「は、はい!dnです!」
m祖父「いやはや…何年ぶりかな…」
mfくんのおじいちゃんとおばあちゃんには一度会ったことがある
mfくんの葬儀の時以来だけど…
m祖父「………いつもmfの命日にお花を添えてくれてるの…dnくん…だよね…」
d「あ、は、はい!添えさせてもらってます…」
m祖父「………もしdnくんさえよければ…」
m祖父「仏壇に線香をあげに来てくれないかな?…」
m祖父「ちょうど今日はmfの命日から5年が経ってるからね…」
m祖父「今更だが…どうしてもmfのことでお礼が言いたかったんだ…」
m祖父「ありがとう!mfを助けてくれて…支えになってくれてありがとう…」
d「いえいえ!とんでもないです!」
d「俺もmfくんがいなかったら今どうなってたことか…」
d「mfくんがいたおかげで今の俺があるんです」
d「こちらがお礼を言わせてください」
m祖父「dnくん…」
m祖父「…………きっとmfも天国で喜んでるよ」
m祖父「俺は…mfがあんなことになるまできづいてあげられなかった…」
m祖父「俺は…mfの支えになってやれなかった……だから」
d「そんなことありません、mfくん…いなくなる前に言ってたんです」
m「おれのじいちゃんとばあちゃんに会ったことあったっけ」
d「あるよ!あの時のプリン美味しかったなぁ〜」
m「でしょでしょ!俺の自慢のじいちゃんとばあちゃんが作ってくれたプリンは世界一だからさ!」
m「……じいちゃんとばあちゃんがいなかったら…俺はきっと…dnちゃんにも…今この場にもいなかったから」
m「じいちゃんとばあちゃんにはめっちゃ感謝してる!」
d「mfくんがじいちゃんとばあちゃんには感謝してるって…」
d「だから…胸を張って生きてください」
m祖父「………ありがとう」
m祖父「俺には自慢の孫と妻と…孫の友達がいたってあの世まで持ってくよ!」
d「…………はい!」
m祖父「ここが仏壇だ」
m祖母「mfくん…dnさんが来てくれたよ」
d「………mfくん…お久しぶり…」
チーン
d「ありがとうございました」
m祖母「いえいえ、コチラこそ」
d「………あの…もしよろしければこれを…」
m祖母「手紙?…」
m祖父「でも…もう……」
d「………わかってます…届かないって…」
d「でも…この気持ちを書きたかった…出したかった…」
m祖父「………よぅし!わかった!」
m祖母「あ、あなた?!…」
m祖父「これを本の隙間にでも挟んどいたらきっとmfが読みに来るさ!」
d「…………はい!」
mfくんへ
天国では元気にしてますか?
って言っても、きっとこの手紙はmfくんには届かないよね
でも無性に描きたくなった、mfくんとの思い出をもう一度一から遡りたくなったんです。
不思議だよね
実は俺達出会って遊んだり話したりしたのたったの約一ヶ月なんだよ
子供の頃の2週間と高校の時の2週間
年単位での付き合いがありそうなのにね
たったの約一ヶ月でも思い出はたくさんあって、悲しいこともうれしかったこともたくさんある
その思い出を語る中でmfくんは俺に言ってくれたよね
『dnちゃんがいなかったら今の俺はない』
あの時は言えなかったけど俺も同じだった
mfくんがいなかったらあの時のイジメはなくならなくて
今の俺は居なくて
mfくんが言うことじゃない、俺の方こそ言いたい
なんて言ったら怒られるかな
俺の方が言いたいって
mfくんなんだかんだでそういうとこは頑固だよね
何回かそういうことで言い合ったこともあった
だけどそれはケンカじゃなかった
俺の方が、いやいや俺の方がって言って片方が笑いだしたらもう片方も笑い出して
結局二人とも笑って終わってたよね
楽しかったなぁ
もうmfくんとの思い出を作ることはできない
でもmfくんとの思い出を風化させずに心の中でとどめておくことはできる
mfくん、ありがとう
何回も何回も言うけど
mfくんのお陰でおれは今こうして放射線技師として活躍できて
こうしてテレビにも出れるようになった
今だから言える話だけどさ
ぶっちゃけ俺あの時自殺しようかなって思ってたんだよね
その方が苦しまずに済むし
姉ちゃんがお金のことで頭を悩ませずに済むかも知れないし
でもなかなか勇気が出なくてさ
そうこうしてるうちにmfくんが転校してきて
mfくんがあの時転校してこなかったら俺はもうとっくの昔にこの世から去ってたかもしれない
俺のことをあんなに思ってくれる人がいるとも知らずに
ほんとにほんとにありがとう
言葉じゃ表せないくらいの感情だけど
それでも少しだけでも伝えたい
本当にありがとう!
俺はこれからも胸を張って生きていきます!
だから安心して空から見ててね!
dnより
d「……………」
“dnちゃん…ありがとう”
d「え?……」
d「mf…くん…?」
d「そっか…mfくん…」
d「…………うん!こちらこそ!」
コメント
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うわああああああ(´;ω;`)泣けるぅぅぅぅぅぅぅぅ😭