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消毒液のような匂いで目が覚めました。
白い天井が目につき体を起こすと、頭がずきんと痛みました。
頭に手をやりますと、包帯が巻いてあるようでした。
サイドテーブルに目をやりますと、意識が戻ったらナースコールを押すようにと書き置きがありました。
さっきまで居た汽車は何処へ消えたのかと動かない頭で考えてみますが、分かる気がしません。
どうにも探しに行きたくなり、ベッドをおりて個室の扉を明けてみました。
「綺羅。」
「優希。」
僕は優希を部屋に招き入れました。
「もう動いて良いのか。」
「分からない。まだ目が覚めてから少ししか経ってないし、ナースコールも押してないから。」
優希は心底申し訳なさそうに言葉を紡ぎました。
「ごめん。俺、ついかっとなっちゃって、押し倒した衝撃で、頭が割れちゃったみたいで……。」
「良いんだよ。だから彼らに会うことも出来たしね。」
「何の話だよ。」
こっちの話、と言いながら、今回の旅で出会った彼らについて思いを巡らせました。
(もし僕のしていた旅が全て幻だったとしてもいい。僕は、優希と向き合う。今度は逃げない。)
優希は伏せていた目を此方に向けると、まっすぐ年相応な言葉遣いで語りだします。
「俺、まじで彼奴に死んでほしくなかったんだよ。良いやつだったしさ。だから、悪口いわれてるの、すげえ悔しくて。」
その言葉を聞いた彼は、果たしてどんな顔をするのでしょうか。
そんなことを考えながら、僕は先生からもらったものではない、自分の言葉をゆっくりと選びました。
「僕も、隠してただけで本当に悲しいんだ。でも、どうしてもそれを表に出すことが怖かった。彼への悪口も、自分が傷つきたくなくて受け流してた。」
あの頃の僕に抱えさせていた重圧は、僕一人で負う必要なんてない。
だって僕には、親友がいるから。
「でも、僕だって親友を馬鹿にされて悔しかった。これからは、自分の気持ちに蓋をしないようにする。大事な人は自分で守ってみせる。」
「……ふっ、何泣いてんだよ。」
気がつくと僕は泣いていました。
優希も、笑いながら泣いていました。
僕らは抱き合って泣きました。
そこには確かに、僕らの親友の影がありました。
僕らにようやく、朝がやって来ました。