テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#さのじん
さき
135
747
「」…勇斗
『』…仁人
カチャリと静かな部屋に、
ドアの開く音が響いた。
時刻はとうに午前0時を回っている。
『……ただいま。』
玄関に立ちつくした仁人の顔を見て、
部屋で待っていた勇斗は思わず
小さく息をのんだ。
普段ならグループのリーダーとして
毅然としている仁人だが、
今夜は誰が見ても限界だとわかるほど
疲れ切った表情をしている。
「おかえり…..すごい顔してるよ?」
『言わないで……。マジで今日、頭使いすぎてパンクしそう。……明日も5時起きだし、もう寝るっ……。』
カバンを床に下ろし、
そのままベッドへ向かおうとする仁人の
腕を、勇斗がすっと掴んで引き戻す。
「待って」
そう言って、
勇斗は仁人の前に立ちふさがった。
大きな体格差と身長差のせいで、
見上げることになった仁人の瞳は、
自然と無防備な上目遣いになる。
すると、勇斗はすっと指先を伸ばし、
仁人の柔らかい下唇を愛おしそうに、
けれど少し力強く撫でた。
そして、吸い込まれるように仁人の唇だけ
をじっと見つめ始める。
……あ、この顔。
その視線の熱さと表情で、
仁人はすぐに悟った。
10年一緒にいて、付き合って……3年。
これまでに何度も見せられてきた顔だ。
言葉には出さなくても、これは勇斗なりの
「キスしたい」という絶対的な
サインだった。
「……ちょっと、待っ――」
察した仁人が言いかけるよりも早く、
顎をすっと持ち上げられた。
唇が重なった。
『んっ……?!』
不意を突かれた濃厚なキスに、
仁人の瞳が大きく揺れる。
勇斗の体温と、強引な熱いキスに
膝から力が抜けそうになる。
抵抗ができない。
『んっ……はぁっ…///』
相変わらず、下手な息継ぎ。
しばらくしてゆっくりと唇が離れると、
仁人は息を荒くしながら
勇斗を睨みつけた。
『な、何すんだよ…!明日早いって言ってんじゃん!』
勇斗は少し膝を曲げて、
仁人と視線を揃える。
そして、仁人の頭に ぽん と手を置いた。
「うん…。分かってる。でも、仕事がどうとかじゃなくて、今は仁人が心配。」
『……っ、心配とか……ズルい言い方すんなよ……』
頭の上に置かれた勇斗の手の温もりと、
優しく視線を合わせてくる温かい瞳。
先ほどまでの強引なキスとのギャップに、
仁人の胸がキュッと締め付けられる。
『……分かってるよ。お前が俺のこと考えてくれてるの……』
強がっていた声が、
急に小さく震え始めた。
自分の強がりも限界も、
すべてお見通しな勇斗の前に立つと、
張っていた気が一気に
解けていってしまう。
仁人は恥ずかしそうに視線を泳がせると、
ぽんと置かれていた勇斗の手を、
自分の小さな手でそっと握りしめた。
『……でも、ホントに今日疲れてて……頭回んなくてさ……』
「うん。がんばったね」
『……だから……優しく抱きしめてくれないと……無理……』
消え入りそうな声で漏らされた、
素直すぎるおねだり。
普段の「毅然としたリーダー」の面影は
どこにもなく、
上目遣いですがるように見つめてくる仁人
の可愛さに、勇斗は思わず息をのんだ。
「……っ、そんな顔で言われたら、離せなくなるよ?」
『……離れてなんて言わないから……早く……』
仁人が自ら勇斗のシャツの裾をギュッと
掴むと、勇斗は愛おしさを抑えきれずに、
力強く、けれど壊れ物を扱うように優しく
仁人の身体を抱きすくめた。
『……ん、あたたかい……』
「仁人、お疲れ様。今夜はもう何も考えなくていいからね」
『……うん……。勇斗、好き……』
仁人は甘く、でも少し照れながら囁いた。
勇斗は仁人の体をそっと横抱きに
持ち上げると、吸い寄せられるように
ベットへ向かった。
そのまま2人でマットレスへ倒れ込む。
勇斗が手早く掛け布団を引き寄せ、
仁人ごと包み込むように
しっかり抱きしめた。
「よし、捕まえた」
『……ん、どこも行かないで……』
普段のしっかり者な姿からは
想像もつかないほど、
仁人は甘えた声を漏らし、
自分から勇斗の胸元へ
顔をすり寄せてくる。
10年の付き合いと3年の恋人関係が
もたらす絶対的な安心感に、
仁人のガードは完全に崩れ去っていた。
そんな仁人の姿があまりにも愛おしくて、
勇斗は仁人の額、少し熱を持った頬、
そして柔らかい鼻頭へ、
愛を確かめるように何度も甘く、優しく、
熱くキスを落としていく。
「ふふ、可愛い。……仁人、こっち向いて?」
『……んっ……』
耳元で囁かれ、仁人がゆっくりと
顔を上げると、
すかさず重ねられる熱い唇。
舌先がかすめるような甘いキスに、
仁人は相変わらず上手く息ができず、
胸元で勇斗のシャツを
ギュッと掴みしめた。
『はぁっ……ん……っ///』
「苦しい? 離そうか?」
少し唇を離して微笑む勇斗に、
仁人はとろんと潤んだ上目遣いで
じっと見つめ返し、
消えそうな声でおねだりする。
『……やだ……もっと……ちょうだい……』
「……っ、そんなこと言われたら、本当に眠らせてあげられなくなるよ」
呆れつつも歓喜に満ちた勇斗は、
今度は深く、仁人を溶かすような
甘いキスを何度も重ねた。
そのままどれくらいキスを
交わしただろうか。
あまりの気持ちよさと心地よい体温に、
仁人の瞼が重くなり、
頭がさらにぽやぽやとし始めた。
唇が離れるたび、仁人の口から
「はぁ……っ」
と甘い息が漏れ、
熱を帯びた吐息がAの首筋をくすぐる。
勇斗は仁人を抱きしめたまま、
空いた方の手で仁人の背中を、
服越しにゆっくりと撫で上げた。
背骨に沿って大きな手で優しく
擦り降ろす。
仁人が疲れている時にどこを
どう撫でられれば一番力が抜けるのか、
勇斗は誰よりも知っていた。
『んぁ……っ……それ、気持ちいい……』
「ここ、いっつも力入ってるもんね。今日もグループのことずーっと考えて、背中ガチガチだったでしょ」
『……ん。……だって、俺がしっかりしないと、みんな困るし……』
ぽつりと漏れたのは、
普段は絶対に口にしない弱音だった。
周囲の前では頼れるリーダーとして背筋を
伸ばしている仁人が、
今はこの狭い布団の中で、
勇斗の体温にすっかり甘えきっている。
勇斗は愛おしさが胸から溢れ出しそうに
なり、仁人の耳元や首筋に細かくキスを
落としながら、さらに強く抱きしめた。
「仁人は本当によく頑張ってるよ。……でもね、俺の前でくらい、もっと弱けていいんだよ」
『……うん……。勇斗の前だけ……だから……』
勇斗の肩口に顔を埋めたまま、
仁人は小さくコクりと頷いた。
耳まで真っ赤に染めながら、
すがるように勇斗の
背中に腕をまわしてキュッと力を込める。
強がりだった心の壁が
完全に溶けてしまい、
自分でもコントロールできないほど甘々に
なっていく感覚に、
仁人自身も心地よく流されていた。
そのまま背中をトントンと
優しく心地よいリズムで
撫でられているうちに、
仁人の頭はぽやぽやとさらに甘い痺れに
包まれていった。
コメント
1件
うわあああ第1話から既に尊すぎる…!!😭💕 普段はリーダーでしっかり者の仁人が、勇斗の前でだけ見せるあの甘えた姿…「優しく抱きしめてくれないと無理」って上目遣いでおねだりされちゃそりゃ離せなくなるよな!!笑 キスのサインを察知するところとか、お互いのことを10年単位で知り尽くしてるからこその空気感がもうエモすぎる…🫠💖 背中撫でられて力抜ける描写とか、作者さんの観察眼が光ってて、読んでてこっちまでポカポカあったかくなったよ…明日への活力チャージ完了だわ!!続きも楽しみにしてるね⋆⸜(๑˶'ᵕ'๑)⸊♡