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授業中、背中がむず痒い。
正確に言うと、見られている感覚が、 ずっと続いている。
チョークが黒板を引っかく音。
ノートをめくる音。窓の外で鳴く蝉。
その全部の隙間に、じっと貼りつくみたいな視線。
(……またかよ)
朝霧透は、ゆっくりとシャーペンを置いた。
振り返らなくても分かる。
この視線の主は、決まっている。
そう、三雲悠真だ。
クラスの後ろ、少し窓側の席。
目が合えば、毎回気まずそうに逸らされるくせに、 逸らした数秒後には、また見てくる。
あー、今日で、何回目だっけ。
告白“みたいなもの”をされた回数は、
もう十回を超えている。
「好きです」
「やっぱ、透くん好きです」
「いや、前のはノーカンで。改めて好きです 」
そのたびに透は、同じ返事をした。
「ごめん。恋愛的には見れないんだよ」
嫌いじゃない。むしろ、人としては好印象だ。
でも、それ以上じゃない。
……はず、だった。
「なー、透」
昼休み、俺の大親友の瀬名がパンをくわえながら声をかけてくる。
「今日も見られてたな」
「……見てたのかよ」
「はは、あれはもうレーザーだろ。」
瀬名の視線の先で、悠真はジュースを持ったまま固まっていた。
「嫌なら、ちゃんと言えって」
「えー、言ってるよ。何回も」
透は机に頬杖をつく。
「でもさ……」
一瞬、言葉に詰まる。
嫌、とは違う。
困っている。でも、突き放したいわけじゃない。
「……あいつ、悪い奴じゃないんだよ」
その日の放課後。
透は、ついに悠真を呼び止めた。
「なぁ、三雲」
名前を呼ばれた瞬間、悠真の目が一気に輝く。
「な、なに!?」 「……落ち着け」
廊下の端、人の少ない場所。
「正直さ」
透は一度、深く息を吸った。
「お前の気持ち、…ちょっと重い」
「……うん」
「でも、完全に拒否するのも、なんか違う気がして」
悠真は黙って聞いている。
「だから、」
透は、少しだけ目を逸らして言った。
「まずは友達からにしろよ」
一瞬の沈黙。
次の瞬間。
「え……!?」
悠真の顔が、信じられないものを見るように歪んだ。
「と、友達!?」 「嫌ならいい」 「嫌じゃない!!」
即答だった。
「友達でいい!全然いい!むしろ進歩!」 「進歩とか言うな」
透はため息をついた。
「だから距離感、守れよ…」 「守る!!」
その声が、少し震えていたことに、
透はまだ気づいていなかった。
(……めんどくさい奴)
なのに。
なぜか、胸の奥が
ほんの少しだけざわついたのは
気のせいだろうか。