テスト期間が終わり、騒がしくなる。
テストの出来は、良い方だろう。
周りの人は皆、赤点だの、補習、追試なんて騒いでいる。こんな箱を抜けて、早くギターを弾きに屋上へ行きたかった。
帰りのホームルームが終わり、人に変に思われないくらいの速さで、屋上へ向かった。
ギターは、いつも音楽室に置かせてもらっている。持ち歩いていたら、どんな目で見られるか。
ギターを手に取り、いつものように屋上で座る。
空気がとても澄んでいるように感じた。
久しく来たのもあるだろう。
田舎にあるから緑ばかりなのも、ある。
サァという風に揺れる木々の音もとても気持ちよく感じた。
ギターを自然を思い浮かべて鳴らした。
派手じゃなく、静かに、のんびりと。
自分に溜まったものが浄化されるように。
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どのくらい、経っただろうか。
少し休もうと、手を止める。
なんとなく屋上の扉の方を見ると、
彼女がいた。今日も何処かを見つめている。
私がじっと見ていたせいか、彼女がこちらに振り向いた。振り向く姿は、箱のときとは違う、とても静かだった。
「もう終わり?」
彼女が問う。
「いえ、少し休もうと思ったので」
少し距離を縮めたらと思ったが、元々関わりを持つことのない私は、他人行儀になってしまう。ましてや、人に囲まれる彼女とは、縮められない。
「良かった。もう終わるのかと思ったよ」
彼女は少し微笑んだ。
「まだ、そこまで経っていないので」
「あまり、長く弾いても、疲れますが」
上手く話せない。
「そうだよね」
「柳さんてさ、教室では、【無】て感じだけど、屋上でギター弾いてるときは活き活きしてるよね」
活き活きしてる。とは。あの箱では、存在をなるべく出さないようにしている。【無】と言われても仕方がない。
「そうでしょうか。特に考えて無いので」
「活き活きしてるよ?何か楽しそう」
「楽しそう…ですか」
そう見えていたのか。少し恥ずかしくなった。
それを隠すようにまた、ギターを弾いた。
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