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りす
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「おっはよぉ〜」
名良(なら)を見つけて、後ろから名良の肩に腕を回す雲善(うんぜん)。
「うおっ。雲善。おはよ。今日はやけに朝からテンション高いな」
「そうか?いつも通りだろ」
「…いや?なんかいつもよりテンション高くてウザい」
「ウザって…お前なぁ〜…」
と名良をくすぐる雲善。
「やめっ…」
笑う名良。
「ウザいっつった罰だ」
「…」
息を整える名良。
「…はあぁ…。やっぱいつもよりウザい」
と言う名良に「言ったな?」顔で近づき、またくすぐる雲善。
「…キツいキツい…。朝からしんどいって」
「名良が悪い」
「ごめんね名良。兄ちゃん変にテンション上がってて」
と風善(ふうぜん)が近づいてきて、兄について謝る。
「…はあぁ…しんどいわ…。おはよう、風善」
「おはよ」
風善の横にいた恋弁(れんか)にも
「今日都(きょうと)さんもおはようございます」
と挨拶をする。
「あ、おはようございます」
とペコッっと頭を下げる恋弁。
「で?」
と名良が雲善に視線を向ける。
「雲善がやけにテンションが高いわけはなんなわけ」
「お。やけ、にテンションが高いわけ、はなんなわけ。ラップ?」
「Yo」みやいなポーズと表情をする雲善をジト目で見る名良。そのジト目を弟の風善に移す。
「…いや、実は昨日ね?」
と話し出そうとする風善に
「おいふー(風善のアダ名)、何言おうとしてんだよ」
と焦る雲善。そんな兄に笑顔を向ける弟。
「ん?いや、昨日ね?」
「バッ」
「バカ」と言おうとしたところで恋弁に腹を殴られる雲善。
「こい…つ…」
馬鹿力め…
と思いながら涼しい顔、いや、どこかニヤついている顔の恋弁を殴られた腹を手で押さえながら見る。
「下の姉が美味しいケーキ買ってきたんだよ」
「ケーキ?」
「そ。Les joues de Chestnut tombent(レ・ジューン・デ・チェストナッツ・タンブ)のケーキ」
「嘘」
と恋弁が驚く。
「ほんと」
と笑顔で言う風善。その、相変わらず爽やかな笑顔にドキッっとする恋弁。
「高いでしょ」
「いや?オレも「高かったでしょ」って聞いたんだけど
なんか…なんだっけ…。なんとか割で案外安かったって言ってた。
ま、高くても買っただろうけどね。チケット手に入れるための賄賂みたいな感じだっただろうし」
「あ、そっか。昨日ふーんとこに糸行ったんだっけ」
「そ。だから多少高くても買ってたはず。ちなみにめっちゃ美味しかった」
とイタズラっぽい言い方で、イタズラっぽく笑う風善。
「ずるー」
なんかイチャついてるみたいで、内心嬉しくて楽しい恋弁。
「え。ケーキでこんなテンション上がってんの?」
と後ろを見ずに、後ろにいる雲善を親指で指指す名良。
「そうかな?」
と言いつつも
ま、兄ちゃん、きっとなんかあったんだろうけどね
と思う風善。
「雲善そんなスイーツ男子だったん」
とお腹を摩りながら、恋弁を睨みながら横に追いついてきた雲善に聞く名良。
「…ま。嫌いじゃない。むしろ好き寄り」
「へえぇ〜。…ん?その言い方的にはテンション上がった原因はケーキじゃないな」
と言う名良に、ギクッっとなる雲善。
「さあぁ〜?なんの話だかぁ〜…」
と惚けながら少し早歩きで先に進む雲善。
「ふー、なにか知らないの?」
「ううぅ〜ん。残念ながら今回ばかりは本当に知らないんだよね」
と言いながらも
ま、粗方の予想はできるけど
と思う風善。
「そうなの?一緒にいたんじゃ」
「ううん。割と遅くまで恋弁といたんだ」
と笑顔で言ってから
「ね」
と恋弁に言う風善。いちいち風善にドキッっとする恋弁。
こいつわざと私をドキッっとさせてないか?
と疑ってしまうほど。
「うん」
「へえぇ〜〜〜〜〜」
と長い納得をしながら
聞いていいやつなのかな
と思う名良。
「へぇ長っ」
と笑う風善。
「聞いてもいいやつなのかな。って思ったでしょ」
「すご」
と思わず本音が漏れて「あっ」っという表情をする名良。
「別になんもないよ。ただテスト勉強してただけ。ね」
「う、うん」
「2人は幼馴染なんだっけ?」
「だよ」
と言う風善とコクンと頷く恋弁。
「ま、オレと恋弁と兄ちゃんの3人だけどね」
「そっか。雲善の存在すっかり忘れてたわ。小学生からの付き合いって言ってたっけ?」
「よく覚えてたね」
「おん」
ま、当てずっぽうだけど
と思う名良。
「そもそも家が近かったんだよね」
と言う風善に
「ま、同じ小学校に通うんだから近くて当然っちゃ当然なんだけどね」
と言う恋弁。
「そっか。学区域が同じなわけか」
「マンションが隣でね」
「へえぇ〜」
「自然と話してたよね」
「うん」
「あぁ。3人で帰るからね?」
「ううぅ〜ん…。ま、3人で帰ることもあったけど、だいたいは2人だったかな」
「あぁ。兄弟でね?」
「ううん。恋弁とオレ」
「え?…ん?…なんで?」
「いや、兄ちゃんは、あれでしょ?」
と前を、音楽を聴いてノリノリで歩く雲善を見る風善。
「放課後校庭で友達とサッカーしたりしてたから、オレは先に帰ってて
で、恋弁と2人になることが多かった」
「あぁ〜…。なるほどね」
「そうそう。で、兄ちゃんも一緒に帰ったときも、大概その後友達と遊ぶ約束してるから
帰って速攻で家出て行ったりとかね」
「よく怒られてたよね。雲善」
「葉道(はど)と水葉(みずは)とかとね」
「そうそう。懐かしい」
「恋弁は大鍵芸常(タケゲツ)さんと仲良かったよね」
「うん。よく覚えてるね」
「よく一緒にいたからね。あと恋弁の話の中でよく出てきてたから」
と言う風善に
私の話覚えててくれてるんだ
と嬉しくなる恋弁。そんな話の中、名良はとあることを思い出していた。
〜
それは名良が小学生の頃。名良には幼馴染がいた。名前は子那恋(しなこ)。
小学1年生の頃からクラスが一緒で、子那恋は元気な女の子で
男子とか女子とか関係なく仲良くするタイプだったので、名良とも自然と仲良くなっていった。
さらに家も近所でたまに帰りが一緒になって
帰り道2人で話して帰ったりしていたので、周りよりも仲良くなるスピードが早かった。
もちろん名良には名良で男子の仲良い友達、子那恋は子那恋で女子の友達がいたので
主にはそれぞれその仲が良い子たちのグループと一緒にいた。それは学年が上がるごとに強くなった。
男子が女子と話すと他の男子に変な噂をされたり冷やかされたりするので
名良も同級生がいる前では子那恋とあまり話さなくなった。とはいっても家が近所。帰りが一緒になれば
「ようっ!」
「おぉ。音多木野(オトキノ)」
と普通に接する。むしろ
「最近しーな(子那恋のアダ名)って呼んでくれないねぇ〜」
普通よりも距離感が近い。
「前は呼んでくれてたのに」
「低学年の頃だろ」
「そおぉ〜。なんで呼んでくれなくなったん」
「そりゃ、みんなにからかわれるからだよ」
「寂しいなぁ〜」
低学年、小学1、2年生の頃は「しーな」と呼んでいた。理由は初めて話したとき
「しなこだよ」
「しな?しーな?」
と名良が変に認識して、それを子那恋が
「それかわいい!」
と気に入ったため、そう呼ぶようになったし
それが広まって女の子たちの間でも「しーな」と呼ぶ子が多くなった。
そんな仲の良い2人は受験せずに、地元の同じ中学へと進学した。
中学に入っても2人の仲の良さは変わらなかった。
むしろ小学校のときのような幼稚な冷やかしが少なくなった分
教室や廊下などでも話すようになって仲はより良くなった。
〜
そんな幼馴染のことを、風善と恋弁のことを聞いて思い出していた名良。
そんなこんなで学校についた4人。教室に入ると、糸、ヨルコ、嶺杏(れあ)が固まって話していた。
そして先生が入ってくると、それぞれ友達のところにいた生徒たちが自分の席に戻り始める。
ヨルコもまた名良の横の席に戻ってくる。
「あ、紺堂くん。おはよう」
とヨルコが挨拶してくる。
「あ、おはよう」
名良も返す。するとヨルコの前の雲善が振り返って
「イサさん!おはようございます!」
とヨルコに朝の挨拶をする。
「おはよう。今日も元気だね」
「元気いっぱいです!」
と言っていると担任の先生に
「木扉島(ことじま)ー。ホームルーム始めるぞー」
と言われる。
「ういぃ〜す」
と朝のホームルームが始まる。そして1時間目の受験が始まる。
すると名良の視界の端に何かがスッっと入ってきた。そちらを見ると可愛い付箋が貼られていた。
ヨルコだとすぐに気づいて付箋を取って書かれていることを読んだ。
雲善くんからなにか聞いてる?←この後の紺堂くんからの返事への返事はLIMEにするからよろしくね!
と書かれていた。
返事はLIME…
と思いながらポケットのスマホを出すが
返事の返事はLIMEってことだから、オレは付箋に書いて返さないとなのか?
と思いながら付箋に返事を書く。先生が黒板を向いている隙にヨルコの机に付箋を貼る名良。
今度はヨルコの視界に付箋が入ってくる。付箋を取って名良からの返事を読む。
なんかケーキ美味しくてテンション上がってるとかなんとか
と書いてあった。
ケー…キ?
と思いながらスマホを取り出す。
机の、教科書などを入れておくスペースに置いていたスマホが光ったのが見えた名良。
スマホを手に取り、先生にバレないようにヨルコからのメッセージを確認する。
ヨルコ「ケーキ?」
天使が「?」と首を傾げているスタンプ
だった。返信する。ヨルコも机の、教科書などを入れておくスペースに置いていた
スマホが光ったのが見えた。メッセージを確認する。
名良「そう。ケーキ」
牛が頭の上にケーキを乗せているスタンプ
だった。
可愛い
と思うヨルコ。そこからお昼ご飯の、4時間目の授業が終わるまでやり取りが続いた。
ヨルコ「ほんとにケーキだって言ってたの?」
名良「言ってたっていうか、雲善の弟のふーがそう言ってた」
ヨルコ「あぁ。風善くんが。紺堂くんはどう思う?」
名良「どう思う?」
ヨルコ「うん。ほんとにケーキだけであんなテンション高いと思う?」
名良「いや。雲善本人も「ケーキは好き寄り」とは言ってたから、ケーキであれだけウザくなるとは思えない」
ヨルコ「ウザくなるw ほんと仲良いよね」
名良「まあ。クラス替えして、出席番号順でも席近くて、席替えした後でも席近くて仲良くなったって感じ?」
ヨルコ「あ。1年生の頃からじゃないんだ?」
名良「うん。2年から」
ヨルコ「へえぇ〜。意外。それなのにあんなに仲良いんだね」
名良「ま、雲善のあのノリのお陰かな」
ヨルコ「そんな仲良い紺堂くんは、雲善くんはなんであんなテンション上がってると思う?」
名良「ううぅ〜ん。なんだろ…。好きなサッカー選手が、好きなチームに移籍したとか?」
ヨルコ「なるほど。それはあり得るかもね」
天使が「うんうん」と頷いている様子のスタンプ
名良「うん。でもなんで?」
と名良が送り、ヨルコが通知を確認したところで4時間目が終わった。
先生が終わりを告げた途端に教室内が騒がしくなり
「ヨールコー!ご飯食べようぞぉ〜!」
と糸がヨルコに大きく手を振っていた。雲善もさっきまでペンを握って
あたかも教科書読んで、なにか考えてノートに書いてます。みたいに寝ていたのに
周りが騒がしくなって起きて
「んんあぁ〜…」
と伸びをして
「お昼だぁ〜…」
と言って教科書類を片付いて始めた。
名良も、いつもなら授業が終わってお昼で嬉しいはずなのに、なぜか今日だけは
あ。もう終わりか
と思ってしまっていた。そしてスマホの画面をタップし
ヨルコからの通知がないことになぜか少しガッカリしていた。そんな自分に気づいて
いやいやいやいや。友達として楽しかっただけ。…あくまで…
子那恋との日々がフラッシュバックする。子那恋の笑顔
あくまで…友達…
子那恋のむっっとした顔。子那恋の驚いた顔
あくまでも…
子那恋の苦笑い…子那恋の作り笑い…
「名良。おい名良!」
雲善の声で我に返る。
「はい。はい。ん?」
「ん?じゃねぇよ。ぼーっとして、どうしたん。調子でも悪いん?」
「大丈夫?」
近くに来ていた琴道も心配していた。
「あ、いやいや大丈夫大丈夫。眠くてさ」
「あぁ〜ね?わかる。ただオレはさっきまで寝てたから元気満タン!厚切り牛タン!」
「そんなことを堂々と言わないでほしいわ。あと死ぬくらい寒い」
と恋弁が言いながら教室に入ってくる。
「はあぁ〜?別のクラスは出ていってくださいぃ〜」
「じゃオレも?」
と風善の声がする。
「ふーはオレだからいいんだよ」
「さすがバカ。理論が意味不明すぎる」
と恋弁が言う。
「うるせぇ。オレは国宝級なんだよ。国指定」
「国指定のバカ。なんと…。教科書にも載って」
「そうそう」
「お母様が可哀想」
「うるせぇ」
恋弁は糸、嶺杏(れあ)、ヨルコの元へ行き
風善は雲善、琴道、名良の元でお昼ご飯を食べた。お昼ご飯のときもたまにスマホを見て
返信…なし
とヨルコからの返信を待っている自分に気づいて
いや。いやいやいや
と言い訳すら見当たらない否定をした。
「さっきからスマホチラッチラ見てるけどどしたん」
と雲善に言われるほど。ギクッっとなる名良。
「お?さては好きな人からのメッセージ(謎に良い発音)を待っている。とか」
と雲善が、人差し指を立てた手のように箸を天井に向ける。
「兄ちゃん。箸箸」
「おっと失礼?でもその反応は図星だなぁ〜?」
と今度は名良に箸を向けてくるくる回す雲善。
「兄ちゃん」
「あぁ〜はいはい。マジでふーがいるとマジで家にいるみたいだわ」
「兄ちゃんが行儀悪いだけだよ。お母さんに兄ちゃんのことお願いされてるし」
「クソッ。スパイがいやがった」
「スパイ…。はあぁ…。一般人があの可愛いとんがりエスパー少女のコスプレするなんて…。
セクシーお母さんのコスプレもあり得ない…。反吐が出るわ…」
なんて琴道が呟く。
「で?誰。もしかして同中(同じ中学)だった子とか?」
本来の的からは外れているが、別の的のど真ん中を射抜いた雲善。
そんな4人で楽しく話しているときも、どこかでヨルコからの返事を待っている自分がいた名良。
5時間目が始まるとヨルコからの返信が来た。それに安心して、どこか嬉しい自分がいた名良。
学校が終わっても家に帰っても、夜ご飯を食べてる間も、お風呂に入ってても
どこかでヨルコからの返信を待っている自分がいた名良。
自分の部屋で動画を見ていても、スマホの上部にヨルコからの通知が来ないかな。と心のどこか思っていた。
通知が来た瞬間、ビクッっと体が動くほど。しかしそれが雲善で
「んだよ」
と呟いてしまうほど。寝る直前も
スマホを充電しているのにスマホを確認して通知が来ていないかを確認していた。
朝には返事が来てるかな
なんて思って。でもそんな自分と重なる自分を思い出した。そして
いや。友達としてだから。そう…友達と…して…
と自分に言い聞かせていたら眠りに落ちた。
コメント
3件
おおっ、第17話読み終えたわ!雲善のテンションの理由が気になるけど、それより名良のヨルコさんへの意識の芽生え方が丁寧でめっちゃ刺さったわ。授業中にLIMEの返信待ちしてる描写とか、「いや友達として」って自分に言い聞かせるところが切なくて推せる〜。小学生の頃の子那恋ちゃんのフラッシュバックも効いてたし、この先どう転ぶか楽しみすぎる🔥