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※ご本人様とは一切関係ありません
※百鬼夜行qn×百鬼夜行mnです
※要素少なめ、qnmnとして書いてますが逆でも読めるかも。
※結構不穏(二人はらぶらぶ)です。
えーん
うぇーん!
遠くで子供が泣いている。
おんりーside
『あ〜〜、暇だ』
ここは俺の神域のような場所。
空気も水も澄んでいて、ここにいる動物たちはみんな活き活きと過ごしている。
……虫は苦手だから最低限しか生息させないようにしてるんだけど。
心地の良い場所ではあるものの、なにぶん娯楽がない。
天狐になる前は人間を揶揄って遊んだりもしたが、今の神通力で誰彼構わず遊べば死人が出る。それはまずい。
『この前ちょっとやりすぎてドズさんにこっぴどく叱られたからなぁ……』
ドズさんは閻魔として死者を管理しているため、俺たちのような存在が現世の人間を幽世へ落としてしまうと対応が大変なのだという。
二度も説教を受けることはごめんだと諦めて空を見上げていると、突然遠くから聞こえるはずもない声が聞こえてきた。
『……人間?』
明らかにそれは人間の、しかも子供の泣き声だった。
この神域は少し前から自分が許した者以外の出入りをできないようにしている。所謂視認阻害の類の呪いをかけたのだ。
稀に波長があって迷い込む動物がいる。恐らく今回も例に違わずだろう。
『……ちょっとだけ遊んじゃおうかな』
波長が合うということは少なくとも脆弱な魂ではない。重い腰を上げ声のする方へ足を進める。
『いた』
えーんえーんと泣き続ける人間の子供。
その手には黄色の彼岸花。
恐らくこの神域に咲いている珍しい花を見つけてここまで来てしまったのだろう。
『おい、おまえ』
声をかけると、ビクリと肩を震わせこちらを振り返る。
目が合った瞬間、ピタリと涙を止め真っ青な表情で震えだす。
「ぁ、」
震える手からとさりと花が落ちる。
『その花は俺のものだから、返してくれる?』
こくこくと頷く子供に悪戯心が顔を出す。
きっと今、俺は悪い顔をしている。
「おんりーちゃぁん、なぁにしてんすかぁ。ま〜た怒られんぞ〜」
けらけらと笑いながら背後から現れたのは、俺がこの神域に入ることを許した数少ない存在のめんだった。
『めん。きてたの』
「ついさっきな。……おい坊主」
呼ばれた子供は今にも泣き出しそうだ。
自分の倍以上の体躯をした存在が目の前にいるのである、そりゃそうなるわな。
「この花はやれねぇが代わりにこの石をやろう。あっちの道を辿ればいい、 さっさと帰んな、気が変わらねぇうちになァ」
がはは、とわざとらしく脅すように声をあげれば、子供は脇目も振らずに走り出していった。
『あの石、河原の?』
「ん?その辺で拾った適当な石よ」
だから何の力もねぇよと、落とされた黄色の彼岸花を拾う。
「代わりに俺がこれ、貰ってもいいか?」
植物を飾るのが好きな彼は、よく自分の住処用にここの花をつんでいく。
今日もおそらくそのために来たのだろう、愛おしそうに花を見つめる彼は酷く愛らしい。
『別にいいよ』
許可なんて取らなくても、とも思うがそういう所はキッチリしためんのことだ、そうはいかないと押し問答になるだけだと口を噤む。
『まぁでも、黄色でよかったよ』
いそいそと上機嫌に持ち帰る準備をしているめんを横目に呟く。
『桃色の彼岸花だったら、俺は今頃ドズさんにまた叱られてただろうからね』
運が良かったね?
めんside
思わぬ収穫に頬が緩む。
黄色の彼岸花、おんりーの色。
そういえば、桃色がどうとか言ってたな。
今度この彼岸花の隣に飾ってもいいか聞いてみよう。
それにしても、これをあの坊主が持ち帰らなくてよかった。
たかが花と言えばそれまでだが、この花にはおんりーの妖力が込められている。
どこのどいつかも分からないようなやつに持ってかれるのは癪だ。
勢い余って地獄に落としてドズさんに叱られるのは勘弁。
ご機嫌なおんりーちゃんに別れを告げ住処へ帰る。
良かったな坊主。運が良くて。
狐花