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<凌太>


DNAの検査結果などたんなる茶番で、両親の自己満足だろう。しかも、弁護士まで立ち会わせるとか弁護士の無駄遣いだ。


「検査への立会いをいたしまして検査結果を開示いたします」

先日と同じように俺の隣にはおふくろ、向かいに親父と亮二が座っている。

弁護士が上座に座って封筒を開け読み上げた。

「父権肯定確率0%」


「「「は?」」」


亮二以外の3人の声が重なる。


親父が「何かの間違いじゃないのか?」と前のめりになり弁護士に確認すると、弁護士は報告書をテーブルの上に置いたあと「間違いありません」と言った後帰っていった。

その間誰も口をひらかなかった。


何が起こっているのか理解の範疇を遥に超えている。


「あはははは、まさかDNA検査をするとは思わなかった。微かな希望を持ってはいたけど、やっぱりあっちだったか。父さんとも兄さんとも似ていないしね」


「亮二、お前は知っていたのか?」


親父の唇が震えている。

26年間自分の子供だと思っていたのが違っていたとか笑えないギャグだ。


「母さんが亡くなるちょっと前に教えてもらったけど、そもそも実父とぼくはそっくりだから。中学くらいの時にはどっちが本当の父親かなんとなくわかった」


「貴江はどうして・・・」


「母さんは父さんのこと恨んでいたから」


「恨んでいた・・・」

鳩が豆鉄砲くらうとか言う言葉があるがまさにそれが今の親父だろう。


「結婚しようとか言っておいて、どこかのお嬢さんと結婚するために自分を捨てたって。挙句、愛人にさせられたって。ただ、実父は定職にもついてないクズだったから、愛人として金をもらってその金が実父に渡っていたんだよね。母さんは実父を凄く愛してたから。クズの実夫を養うために、嫌いな男に抱かれるとか笑っちゃうけどね。しかも認知されている俺には遺産相続権があるから父さんが死んでも俺は安泰だって言っていた本人が先に逝っちゃうって、悪いことはできないもんだ」


表情が冷えていくおふくろと頭を抱える親父が喜劇的で笑いそうになる。


「わたしは・・・」

親父が何かを喋ろうとしたが俺はその言葉にかぶせる。


「愛人へのお手当は甲斐Egの前身の町田事業所からでてますよね。愛人社員として囁かれてました。名前は三島貴江」


親父は目を見開いて俺を見る。


「もちろん就労実績もどこかに出向している事実もありません。しかも、マンションは社宅扱いで会社から支払われていた。これってもう立派な犯罪ですよ。親父」


ガックリと項垂れる


「俺は赤の他人に負けたんだ。ずっと親父に愛されたかったし、構ってほしかった。運動会に来てほしかった」


「すまない。だが、決して凌太を愛していなかったわけじゃない」


「親父がしていたことは横領だ。潔く社長を降りてください。ちなみに、俺はじいさんと養子縁組をする事になったから」


「何を言ってるの、あなたは私の息子でしょ」


「そんなふうに思っていたなんて驚きです。子供に関心のない母親に、不倫を続ける父親。どちらも要らなかった。俺の家族はじいさんとばあちゃんだけだった。だけど、何処かで親父の愛を諦めきれなかったが、もう必要なくなりました」


「「凌太」」

二人の声が重なる。


「今日はその話をするつもりだったが、まさか親父がずっと三島貴江に騙されていたとは驚きました。俺の用事はすみましたから、これで失礼します」

そう言って俺は家を出た。

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