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「信夫は物販サイト制作の会社に勤めていたんだけど、極度のインターネット中毒でね」
ジンはお福さんに貰った三ツ矢サイダーの缶を二つ持ってアリスに説明した
貞子が続きを引き継ぐ
「ここまで回復するのにすごく時間がかかったわ、放っておいたら3日も4日も寝ないし、食事もしないでPCの画面にずっと張り付いているの、それで健康に支障をきたしてサイト会社を辞めて、半年間インターネット依存者更生施設で療養してたの」
信夫はまだぼんやりした目をしている
「ほら、飲めよ!ちょっと目を離しても、インターネットは何も変わらないよ」
ジンがぽちゃぽちゃしている信夫に優しく声をかける、グイッとサイダーを飲み干してもまた、憑りつかれたようにスマホを見て手をもじもじしている
いじいじ・・・・
「でも・・・僕の書き込みに、コメントがきてるかもしれないし・・・生き残るには即レスが大事なんだ・・・ 」
貞子が肩をすくめて言う
「完全な(インターネット中毒インターネットーホリック)なの、PCやスマホの画面を見ていないと落ち着かないのよ!睡眠時間も極端に少ないし、心療内科の先生いわく、インターネットの画面に夢中になって、いつも脳内にアドレナリンが出ているせいで、寝ていても脳は休んでいないんだって!」
貞子が説明している横でも、信夫はずっと俯いてモジモジしている、確かに何かの病み上がりのように見える
「だから睡眠をとっていても極度の緊張状態から抜けられないらしいの、今はずいぶんリハビリも進んで、まったくインターネットを見ない日から、少しずつ時間を増やしてきて今は7時間程度よ、どうせならリハビリがてらに、周防町の役に立ってもらおうと思って、弟に北斗のSNSの投稿をやらせたらどうかしら」
「重度のインターネット中毒のせいで、一日中スマホやPCをずっと見ていないと、生きていけないんだ、だからこそSNSにはめっぽう強い、信夫は今仕事をしていないし、SNSは時間があるヤツでないと出来ないからな 」
「それで北斗さんの選挙のお手伝いをどうやってしてくれるの?」
アリスがワクワクして聞いた
「信夫!教えてやって」
信夫はうっとサイダーを呑み込んで、一瞬ためらってから話し出した
ペラペラペラ・・・
「今はSNSを制覇する者が選挙も制覇できる時代さ、毎日北斗の選挙運動を呟きサイト、、動画サイト、画像サイトに投稿するんだ。同じ投稿ではなく少しづつ変えて、呟きサイトを朝見たら夜には動画サイトに、来てもらえるようにユーザーの動線を作るんだ、んで最終的に公式HPに集めてくるんだ。そこでまた色んな所に飛ばすリンクを貼って、乾燥機のようにユーザーをグルグル回していくうちに、Googleのアルゴリズムが働いて「おすすめ」の、タイムラインに乗っていく、大事なのはタイムリーであること、選挙テレビ局や報道陣も北斗の選挙関連SNSを、フォローさせてDMから取材スケジュールを取らせるまずは格SNS1万フォロワーを目指すよ、そのフォロワーさんがそのまま有権者さんになってもらえるように、今は地上波なんかより独自の配信媒体を持った方が影響力がある政策発表も全部ネット配信ですること討論会も地上波ともう一つこちらサイドから撮った映像をドキュメンタリー方式にして配信するんだライブ配信もいい!有権者のコメントを直接北斗が答えるんだ、それを切り取りってまた動画サイトに流すんだ、時間は長くて3分今は10分でもユーザーは長いと感じる時代だうっ・・・ごほっごほっ・・・」
「もうっ信夫!息継ぎして!インターネットのことになると、しゃべり続けるんだからっ」
貞子が信夫の背中をバンバン叩く
「こんな感じでASD(高機能自閉症スペクトラム)でもあるんだ、性格はすごくいいヤツけど・・、なんていうか普通の社会だと生きにくくてね、要するにインターネット戦略では北斗の役に立つこと、間違いないってこと 」
ハハハとジンが笑った
「心強いよ!信夫!ありがとう」
「北斗さん!」
「おかえり北斗~~ 」
北斗が紺のスーツ姿でジャケットを腕に引っ掛け、リビングに入って来た
「久しぶりだな、手伝ってくれるかい?信夫、療養施設から出れてよかったな」
北斗が小さなころから知っている、信夫の頭を撫でて微笑んだ
「う・・うん・・・北斗・・・もう戻らないように努力するよ・・・」
信夫も嬉しそうに北斗を見つめた
「事務所の建設具合どう?」
「ああ!プレハブだから4ブロック地区の、真ん中に今日中には出来上がるよ、明日には机や事務用品が運び込まれる、しかし今日は熱いな! 」
北斗がいかにも窮屈そうに、ワイシャツのボタンを外し袖をまくる
アリスがお疲れ様と麦茶を北斗に渡すと、一気にそれを飲み干す
いつもはTシャツにジーンズの牧場主の北斗が、こんな平日の昼間からスーツ姿なんて、アリスは思わずうっとり見とれる
ジンも信夫の背中をバンバン叩いて、ワハハと笑いながら言う
「こいつはインターネットの世界に生息している、コイツの分身のアカウントは何万といるぜ」
「なんだか恐ろしい事をサラリと言わないで」
アリスも笑った、信夫は恥ずかしそうにまだもじもじしている
「なかなかドラマティックじゃない?あなたを取り合った二人が、今度は選挙戦で戦うって!」
横で貞子がいやらしい笑いを浮かべて、アリスを肘で小突く
「まぁ!そんなんじゃないわ!私達は本気で周防町の未来を心配して・・・」
「ハイハイ」
アリスが憤慨して訂正しようとしても、貞子は全然本気にしない
「鬼龍院は佐原議長を部屋に閉じ込めて、引退すると言うまで議長のモノをペンチで、締めあげたんだぜ、きっと 」
気が付くと直哉がみんなの後ろにいて、自分だけがウケている冗談に笑っている
彼もいつもはボクサーショーツのゴムが見える、ぐらいずり降ろした腰で履いているジーンズに、Tシャツ姿なのに
選挙事務所委員長になってからずっと、公式の場ではスーツでいつもは、スラックスに作業着ジャケットだ、そして伸びすぎた前髪をハーフアップに、くくっている
こうするとハンサムな顔が際立つ
最近では禁酒も成功し、お福さんの食事療法のおかげでとても健康的に、若々しくなってきていたし、禁酒のせいでずいぶんな甘党にもなってしまっている
「ナオ君!北斗さん!貞子さんが、正式に成宮北斗陣営の、選挙対策本部長になってくれるって!」
アリスが言う
「貞子・・・ 」
北斗が感慨深い顔でジンと貞子を見る、貞子が少し照れて言う
「ああ!給料なんていいのよ!そのかわり一つだけお願いがあるの!」
「な・・・なんでもいってくれ!」
北斗が両手を広げて言った
「選挙事務所に授乳室を作ってちょうだい!それが何より大事よ! 」
「もちろんだ!」
北斗が輝く笑顔で答えたのに応じるのも、時間が惜しいとまでに、貞子が早くもマーカペンのキャップを歯で挟み、ホワイトボードにどんどんスケジュールを書き込んでいく
「しばらくは佐原議長の大物有権者めぐりを、するわよ!こっちになびかせるの、声がガラガラになるから覚悟して!」
アリスと北斗が笑う