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荼毘とホークスの恋愛です。
付き合いません。
地雷さん、純粋さん回れ右↪︎
雨の匂いがした。
夜の街は濡れていて、ネオンの光が水たまりの中で歪んでいる。
ホークスはビルの屋上に降り立つと、濡れた羽根を軽く払った。
誰もいない。そう思ったのは、一瞬だけだった。
「……遅ぇよ」
フェンスの向こう、暗闇の中に、青白い炎が揺れていた。
荼毘だった。
「いやぁ、急に呼び出されても困るんですよ。俺だって一応、忙しい身なんで」
「嘘つけ」
「バレました?」
いつもの調子だった。ホークスも、いつものように笑った。
けれど、二人とも知っている。
今夜ここにいる理由が、いつものくだらない会話ではないことを。
荼毘は空を見上げた。雨が顔に落ちても、拭おうともしない。
「……なぁ、ホークス」
「はい?」
「お前、俺のこと好きだろ」
あまりにも唐突だった。
ホークスの笑顔が、一瞬だけ止まる。
「……そて、自分から聞きます?」
「答えるよ」
「そういうところ、ほんっと嫌な人ですよねぇ」
「で?」
逃げ道を塞ぐような声だった。
ホークスは小さく息を吐いた。
「……好きですよ」
荼毘の目が細くなる。
「即答かよ」
「ここで誤魔化したらたぶん、一生後悔するんで」
「そうか」
それだけ。荼毘は、それ以上何も言わなかった。ホークスも黙った。
雨の音だけが、二人の間を埋めていく。
こんな時間がずっと続けばいい。ホークスはそんなことを考えてしまった。
けれど、そんな願いが叶わないことも知っていた。
自分はヒーロー。そして、荼毘はヴィランだ。
どれだけ互いを理解しても、同じ場所には立てない。
それでも、ホークスは荼毘のことを嫌いになれなかった。
むしろ知れば知るほど、離れられなくなった。
「……俺さ」
荼毘が呟く。
「昔、ヒーローなんて大嫌いだった」
「今もでしょ?」
「まあな」
少しだけ笑った。
「でも、お前は……ちょっと違った」
ホークスは何も言わなかった。
嬉しい。そう思ってしまった自分が、ひどく嫌だった。
だって、その言葉はきっと……別れの前触れだったから。
「ホークス」
「はい」
「俺を救おうとすんな」
「……無理ですね」
「即答すんなよ」
「だって、好きな人に『救うな』って言われて、分かりましたってできます?」
「できるだろ」
「俺、器用じゃないんですよ」
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「十分器用だろ。ヒーローなんだから」
荼毘は笑った。
その笑顔を見て、ホークスは思った。
もっと早く会いたかった。
何もかもが壊れてしまう前に。
誰かを憎むことしかできなくなる前に。
彼の隣に、自分がいられたらよかったのに。
「……なぁ、ホークス」
「なんです?」
「もし、俺が普通に生きてたらさ」
荼毘が遠くを見る。
「お前と、どっかで会えてたかな」
「……会えてたと思いますよ」
「根拠は?」
「俺がしつこいから」
「はは。確かに」
荼毘は笑った。ホークスも笑った。
それが、とても幸せだった。だからこそ、苦しかった。
「……じゃあな」
荼毘が背を向ける。
「待って」
ホークスが呼び止めた。けれど、荼毘は振り返らない。
「次に会ったら」
ホークスは言葉を選んだ。
「俺、あなたを捕まえます」
「……ああ」
「本気ですよ」
「知ってる」
「だから………」
言葉が詰まる。
行かないで。そう言えばよかった。
好きだと、もう一度言えばよかった。
でも、ホークスはヒーローだった。そして荼毘はヴィランだった。
だから最後に口から出たのは、たった一言だった。
「死なないでくださいね」
荼毘が立ち止まる。しばらくして、振り返った。
「お前もな」
それだけだった。荼毘の姿が闇の向こうへ消えていく。
ホークスは追わなかった。追えなかった。
追ってしまえば、きっと全部壊れてしまう。
だから、ただ見送った。
雨の中で、大切な人を、自分の手で、逃がした。
それから数週間後。
街では、あるヴィランとの戦闘が報道されていた。
ホークスは画面を見なかった。見る必要などなかった。もう知っている。
あの夜、荼毘が最後に残した言葉が、ずっと頭から離れない。
……お前もな。
ホークスは机の上に置かれた一枚の羽根を見つめた。
あの日、荼毘が拾っていたものだった。先端が少し焦げている。
「……ほんと、勝手だなぁ」
誰もいない部屋で呟く。
「また会えるみたいに言って」
返事はない。当然だった。
ホークスは羽根を指先で撫でた。
そして、ようやく気づいた。
自分が欲しかったのは、荼毘を救うことなんかじゃなかった。
ただ……生きて欲しかった。それだけだった。
ヒーローとしてではなく。敵としてでもなく。ただ一人の人間として。
もう一度、くだらない話をしたかった。
もう一度、あの憎たらしい笑い方を見たかった。
もう一度……名前を呼びたかった。
けれど、何度呼んでも、返事はなかった。
窓の外では、雨が降っている。あの夜と同じ雨だった。
ホークスは赤い羽根を一枚、窓の外へ放した。
羽根は風に乗って、夜の街へ消えていく。
「……今度は、ちゃんと間に合いたかったな」
誰にも聞こえなかい声だった。
それでもホークスは、しばらく窓辺から動けなかった。
『君を救うには、遅すぎた』
その言葉だけが、いつまでも胸の奥に残っていた。
コメント
1件
みぅです、読ませてもらいました🥀 「付き合いません」って最初に書いてあるのに、ちゃんと恋愛してるじゃないですか……ズルいです。 雨の夜の別れ、ホークスが「捕まえます」って言うのに追えない切なさ。そして「死なないで」しか言えなかったラスト。 荼毘が「お前もな」って振り返る一瞬、めっちゃ刺さりました。好きな人を自分の手で逃がす選択、重すぎるけど美しかったです。 最後の羽根を放すシーン、涙出そうになりました……🤍