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「ゲホッ、ゲホッ………」
今日も毒を飲む
自分なりに調合して作った、強い毒を
「…はぁっ、はッ…ゔっ、ゲホッ!!」
〖グル……〗
地面を強くつかみ苦しそうに悶えるシオンの傍により心配そうにリザードン達が見つめる
「(早く、早く…できるだけ毒への耐性をつけないと。時間が無い、時間が)」
───数時間後
「はァ……落ち着いた……」
地面には少しシオンの血が滲んでいる
「早く耐性付けないとね…時間がないもの」
そう言って、リザードン達を抱きしめた時だったリザードンが〖グルル……〗と威嚇するように喉を鳴らす
「!!って……アザミ…?」
慌てて後ろを振り向き洞窟の入口の方を見るとそこにらシオンの妹───アザミが立っていた
「どうしたの…?こんな所まで…」
そう言った瞬間だった、アザミが消えたかと思えば次の瞬間シオンの首目掛け短刀を向ける
「ッ!?アザミ…!?」
「姉さん……なにやってんの」
アザミに押し倒される形でシオンは地面へ身体を強く打つ
そして、慌ててアザミの刃を避けた後にアザミの方を振り返るとアザミは心底怒ったような顔でシオンを睨んでいた
「ターゲットは?殺したの?」
「………まだ」
「まだ……?冬まであと少ししかないんだよ!?何考えてんの!?」
「何も考えてない訳じゃないよ、ちゃんと考えがあるから」
「考え…?嘘つき、姉さんターゲットとそれなりに上手くいってるんでしょ。」
涙を少し浮かべ辛そうな顔をしてシオンの胸へ縋るように顔を落とす
「アザミ…?ごめんね、心配させて…でも冬までには絶対終わらせるから」
「そんなの信用ならないって…言ってるでしょ…ッ!!もう時間が無いの…ポケモンごっこしてる場合じゃないの!!」
酷く取り乱しており、シオンの顔の近くの地面を強く叩く
この様子だと、きっとアザミは目的を達成したのだろう
「…ごめんね、でも来年には、自由になれるから」
「その言葉信じろって…?」
「うん、大丈夫。来年の春には私達自由だから」
そう言って笑うシオンに「根拠になんないよ」と唇を強く噛んだ後、シオンの胸へ抱きつき糸が切れたように涙を流した
「(あと少し、来年にはきっと自由になれる)」
この計画は急遽建てたものだけど、カラスバさんとの関係が上手く行けば行くほど計画は必ず順調に進むはず。
その為には私もこの装置への耐性をつけないといけない。
装置への耐性をつけるにはまだ時間がいる。
「(できるだけ長く話せるように───)」
そう思いながら、涙を流すアザミの頭を優しく撫で続けた
しばらくすると泣き疲れたのか眠ってしまったアザミを草の上に毛布を敷いた簡易ベットに載せる
ふとスマホロトムを見るとショウヨウシティで有名な資産家が何者かに殺されたというニュース記事が目に入る
───きっとアザミだろう
辛かっただろうに。苦しかっただろうに。
殺したくなかっただろうに。
アザミのあの涙を見ると、アザミの相手も悪い人間ではなかったのだろう
「(そういう点では、私達も感情がなければ良かったのかな)」
一瞬そう思うが、慌ててその考えを消す
「感情があるからこそ、出来るんだから
────私にしか、できない。」
この計画は感情がある私にしかできない
だからこそ意味がある。感情があるからこそ
──???
『この世界には春夏秋冬っていって、色々な季節があるの。』
『でもここは毎日春だよ?』
『ふふ、そうね。いつかわかるわ。
けどもし、2人が外に出れたらお母さんの代わりに桜以外にも夏の夜空に秋の紅葉に──そして冬の雪原を見てくれる?』
『せ、せつげん…?』
『お母さん雪だけは見たことないの、白いふわふわしたものが空から沢山降ってくるのよ』
膝の上で寝ているアザミの頭を撫でながら話す母とそれを横に座り母の話を聞くシオン
『そうなんだ!じゃあ、お母さんも一緒に見に行こう!!』
『!…ふふ、そうねっ!お母さんも一緒にみたいな!』
『ほんと!?じゃあ見に行こ!!』
『ええ、いつか3人で雪を見ようね』
そういって笑う母の瞳は悲しげで切なそうに揺れていた事を当時は知る由もなかった
あれから母は来なくなってしまった
当時はアザミと共に泣きじゃくって母を探していたがしばらく経つと自分の生まれ育った施設の歪さに気づいたと同時に母はそんな施設の実験に耐えれなくなり亡くなったのだと理解した
イッシュ地方の森の奥にある小屋の地下に作られた研究施設
そこで人を殺すために、作られ、実験させられ続けた『モルモット』それが私達だった
母は施設出身ではなくどうやら、外の世界からきた人だったらしく他の姉弟の造られた母親とは違い、感情と母性があった為か私達にも頻繁に会いに来て外の世界の事を教えてくれた
外の世界の街のこと、季節のこと、そして外には『ポケモン』という未知の動物が居ることも
だから私達双子は他の兄弟達よりも外へ興味を持ったし、それもあってか幾度となる実験にも耐えて感情を失わずに施設で生きていくことができた
ただ、自由になって外の世界を見たい一心で。