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ゴッ…ゴッ…ゴッ…

薄暗い地下室に響く、何とも表現し難い音。

それはきっと、普通の人は一生聞くことは無いであろう音。

そんな奇妙な部屋に一人、白髪の白髪はくはつ少女が居た。

細い体、しなやかな指、色白の肌、大人びた顔立ち。

誰もが2度見するような美貌を持ったその少女は、哀れにも醜い表情をしていた。

「ふふっ……。これでやっと、作業に入れるね」



喧騒に満たされた廊下。私は五限の理科の授業の為に、理科室へ移動していた。

今日の授業は豚の目の解体だっけ────── そんなことを考えていたら、不意に誰かがぶつかってきた。

ドンッ

「っ……」

落ちそうになった教材を必死に抱え直し、ぶつかってきた人を見上げる。

「あ、すみません!!気付きませんでした!」

どうやらガタイのいい男子生徒がはしってきたようだった。彼は私に向かって「さーせん!」と勢いよく頭を下げ、また走って去ってしまった。

こんなの昔からよくある事だ。自分で言うのもどうかと思うが、白髪なんて珍しい髪色をしているのに、なぜかいつも存在を忘れ去られる。

ほら、今度は……

「あ、ちょっと!そこの白い髪の子!」

今度は後ろから、中年の女の先生に呼び止められる。

「あなた、臼井仁奈さんの姉妹の子よね?ええっと…確か末っ子の……」

「……1年の臼井剥璃剥璃はくりです」

「そうそれ!あなた、今日仁奈さんがなんで欠席したか分かるかしら?欠席連絡も無いし、何度家に電話を掛けても誰も出ないし…」

どうやらこの先生は、私の2番目の姉、仁奈の担任のようだ。

私は事前に用意していた台詞をそのまま紡ぐ。

「…姉なら今日から、水泳クラブの合宿です。両親は朝早くから出ていますので、それで誰も出なかったんだと思います。」

私の言葉を聞くと、先生はほっと胸を撫で下ろし、「ありがとねぇ!」と言ってさっさと行ってしまった。


いつもこうだ。姉さんたちの存在感が強すぎて、いつも私は「四番目の子」とか「姉妹の子」とかでしか呼ばれない。

私には三人の姉がいる。三人ともそれぞれ秀でた部分があって、大会、コンテスト、コンクール…各々が毎回一位や金賞をかっさらってきてお祭り騒ぎになる。

対して私は、勉強は普通。スポーツも普通。特別優等生でもなければ、問題児でもない。

かと言って優しいだとかミステリアスだとか、そういう印象にもならない、なんとも薄ーい性格。

辛うじてこの姉妹お揃いの白髪のおかげで、姉妹の七光りくらいの立場には立てているくらいだ。

まあもっとも、そんなの不名誉でしかないのだけれど。

…でも。

「ふふっ」

そんな劣等感に苛まれるような日々はもうお終い。

無個性でなんの取り柄もない私はもういない。


あと二人。

リスクを踏んでまで練習したんだから。この計画は必ず成功させないと。

このつまらない日常を終わらせる為に。


私の苦しみが、報われる為に。

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