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ウマウマ!! ゴフッ
美味し〜,:('ω' ))ムシャムシャバリバリ
「べるさん」
頭に響くその声はやたら落ち着く声で、心地がとても良かった。
「べるさん」というのは誰のことか分からなかったが、そろそろ起きないと行けない気がして、視界が真っ白に光った。
私は何とかその光に目を慣らそうとして、瞬きを何度もした。だんだん慣れてきて、白…白と言っても灰色だったり、とにかく真っ白で清潔感のある場所にいることがわかった。
「…ここは」
私は自分の左手を確認する。真っ白で、ほんのり赤みがかっている。健康な手だ。
右手も確認しようとしたとき、その手が握られていることに気がついた。
「べるさん…!! 」
私の手を握っているのは、オレンジ色がかった茶髪の男の子だった。髪には変な鮭の切り身のようなヘアピンをつけていて顔を見ると中々な美少年なことが分かる…けど、その顔には涙が流れていて、小声で良かったとずっと呟いている。私の手をギュッと離さないままずっと…。
「あの。」
「あっ、大丈夫!?心配したんだよ…!ずっと起きなくて…」
「誰ですか?」
べるさんが交通事故に遭ってから一ヶ月、未だに目を覚まさずにベットに眠っている。俺はずっと彼女が起きるように願っていた。
そして今日、目が覚めたのだが…第一声が
「あの……。誰ですか?」
彼女はキョトンとしてこちらを伺っていた。まるで俺を知らない人かのように、真っ直ぐ見つめていた。
「えぇぇぇ!?べるしゃんが記憶喪失!?」
おどみんのリーダーであるおどろくさんに電話で伝えると分かりやすく慌てた。数分間だいぶ混乱していたが…いや、それが当たり前なのだろうが、俺…僕はひどく落ち着いていた。
「本当に覚えてないの…?」
「はい…」
彼女の聞き慣れない敬語口調、こちらの顔色を伺うような不安な視線。話心地が悪いがきっとべるさんの方が怖いし、知らない人に話しかけられて不安だろう。
お医者さんの話によると、学習能力や今までの記憶は何となく覚えており、1部の家族や友人の記憶が完全に飛んでいるようだ。
今ここには僕とべるさんしか居ない。あとからおどろくさん達がやってくるそうだけど、今のうちに聞いておきたい。
「…べるさん。」
「なんですか?」
彼女の琥珀色に輝く目を見て、その言葉を発そうとした。でも、今の混乱してる彼女のことを思えば僕たちの関係…恋人だってことを伝えるのは、悪手かもしれない。
「おどみん…は、覚えてる?」
「おど……みん。」
「そう、べるさんや僕、色んな人達が集まってゲームする集団なんだけど…。その人たちが今から来るんだけど大丈夫? 」
「おどみん…おどみ…ん。」
何か思い出しそうなのかずっとそう呟く。
先程まで弱い光が指していた空は、いつの間にか曇っていた。
静かな病院内にドタドタと廊下から足音が聞こえてくる。看護婦さんにお静かにと咎められてる声も聞こえてきたから恐らく…
「べるしゃーーん!!」
「ちょっとおどろくちゃん静かに!べるさん大丈夫!?」
「そういう凸さんもうるさいから…!」
焦るおどろくさんに矛盾する凸さん…それにしぇいどさんの3人が入ってくる。遅れてうたいさん、ななっし〜、あふぇさん、ニグさんがひょっこっとやってきた。これでおどみん全員集合だ。
「良かったほんとに目覚めたんだ。」
「大丈夫じゃなさそうだね…。」
「私はななっし〜、覚えてる? 」
「いきなり問い詰めたらダメでしょ…。」
さっきまで静かだった部屋が、一気に華やかになった気がする。これがいつもの、おどみんなのだが…やっぱり、僕からしたら少し寂しい。べるさんの声が、たったひとつの声が無くなっただけでこんなにも寂しいものなのか、それとも
僕にとってそれほどべるさんが大事なのか。
「…おどろくさん、に凸さん…しぇいどさん?で、合ってる?」
べるさんが唐突に指をさしながら名前を当てていく。続いて
「えーっと、うたえもん…と、ななさん。あふぇぐま、あとニグさん…?」
「あれ!?忘れてるんじゃなかったんですか?」
「一部の人だけ忘れてるってさもさんが言ってたのだ!」
「あれ、さもさんは?」
「…分からない。」
間を開けた回答は悲しいものだった。
気まづい雰囲気が流れるものの、おどろくさんがこんなことを言う。
「みんなでUFJ行こう!!」
「「え?」」
「いやそれ言うならUSJね?」
おどろくさんの天然ボケにうたいさんの適切なツッコミで場が少し和やかになる。どうやら、うだうだしてても仕方がないからみんなで遊んで少しでも思い出してもらおう!ということだった。
「と、いうことで〜!!」
「やってきたぞUFJ〜!!」
「ちょっと凸先輩もういじらないで!ひどぉい!!」
たくさんの笑い声があちらこちら、近くからも聞こえてくるそのテーマパークはいつ見ても心が弾む。ふとべるさんを方を見ると彼女も目を輝かせ、楽しみ!早く行きたい!と言いたいことが一目瞭然だ。
「べるさん行こっか」
「あっ、は、はい!」
僕が声をかけるとあたふたとして返事を返してくれた、可愛いと思った。
休日ということもあって人が多く混み合っていた、このまんまでははぐれてしまいそう…
「べるさん」
いつもの癖で僕は手の伸ばす
彼女は無言でその手を取ってくれた、不安交じりの嬉しそうな顔。
「ふふ、なんか…さぁーもんさんにこうされるの、悪くないですね」
ふわっと笑ってそう言った、その声だけがしっかりと僕に一直線に伝わった。
「いや悪くないってなに〜?」
僕も不安だった。
ずっと不安で仕方がなかった。
でもその顔を見せられたら、また好きにさせるしかないって思ったんだ。
「絶対思い出させるから。」
ぼそりと言ったその声は人混みの中にかき消され、彼女の耳には届かなかっただろう。
次回予告
「うたいさんと凸さんどこに行きました!?まさかはぐれました!?」
「あ!!あれ面白そう!2人ともこっちこっち!!」
「ちょっ、引っ張らないでおどろくさん!」
「もうみんな自由行動でいいでしょ…。てことで私あっちの売店行ってこよ〜」
「あ僕も僕も〜」
「…みんなバラバラになっちゃったね。」
別行動となったおどみん一同、さぁーもんとべるは2人で回ることに。
「こんなこと、前にも無かったですか?」
次回(一応)最終回
もう一度恋は実るのか…!?