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10 - サウダージ 🐉×🔝

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2026年03月19日

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!アテンション!


攻🐉×受🔝の捏造まみれのジヨタプ小説。

ご本人様たちとは全くの無関係。

ご都合主義の矛盾まみれ解釈違いもろもろですがたくさんの愛はある。

下記注意事項必読。

覚悟の上読んでくださる方はそのままお進みください…!



⚠️作者語りという名の注意事項⚠️

今回「記憶喪失」をテーマに書きたくて書き始めたのですが、全くうまく書けず自分でも笑っちゃうほど見事に駄作が出来上がりました。本当はボツにしようと思ってたのですがもったいない精神で投稿しますので、ほんとーーーーに時間があるときに暇つぶつし感覚でサラーーーーッと読んでいただきたいと思ってます。















side.ジヨン




それは久しぶりの休日だった。

次のツアーが決まり準備期間に入れば毎日忙しくなる。だから、1日丸々オフというのはまたしばらくない。そんな休みに、俺はトップと過ごしていた。同じメンバーで仕事仲間。これから忙しくなれば毎日顔を合わせるというのに。


『明日空いてるか?』


メッセージを受け取った時は思わず笑ってしまった。だって俺たち仲良すぎない?って。久しぶりの休みなのに、その日まで一緒にいようとしてるなんて。普通違う相手と過ごすよ、ヨンベたちだって多分そうだと思う。でも、


『空いてるよ。どこ行く?』


二つ返事でOKしてしまう俺も大概。だってなんとなくさ、俺も君に連絡しようと思ってた。明日の予定聞こうとしてた。不思議だよね。





特に予定は決めておらず、少し離れた街に出かけた。帽子とマスク、メガネまでして完全にオフのスタイル。それでも彼のスタイルの良さと顔の良さが分かっちゃうからほんと君って罪な男。


「……くくっ、はは」

「え、何笑ってるの?」


今日の俺、そんな変な格好してたかなとちょっと不安になった。いつもシックな格好を好む彼に合わせて、俺なりに落ち着いた色がベースの服にしてきたつもりなんだけど。


「なんか変?」

「いや、ちがう。変とかじゃなくて」


黒縁メガネのレンズの奥、長いまつ毛が生える瞳が細くなった。


「いくら変装してても、ジヨンってすぐバレちまいそうだなって」

「え?」

「んー、なんだろ…オーラ?っていうか…ジヨンってやっぱ、ジヨンなんだなって」

「…………ぷっ、なにそれ」


思わず俺も笑ってしまった。その発言こそ君らしいよ。トップってやっぱ、トップなんだなって思う。というか、そういう君こそ隠せてないから。変装しててもイケメンオーラ出ちゃってる。あれ?ということは俺たち今同じようなこと考えてた?ほんと、俺たちってなんなんだろうね。



アクセサリーが好きな彼とショッピング。この指輪がかっこいいだとかこのピアスがいいだとか。このネックレスのデザインもオシャレで素敵。なんて散々見て回ったのに結局買わず。君って即断即決そうに見えて実は意外と優柔不断だったりする。そこも彼の魅力、なんてね。


「うー…さむ」


気付けばあたりは暗くなり始めていて、身体にあたる夜風も冷たくなってきた。分厚いダウンジャケットを着てても晒された耳が寒い。


「やっぱり夜は冷えるな」


そう言いつつ彼の声はわずかに弾んでいる。寒がりだから冬が苦手な俺とは対照的に、トップは冬が好きだって言ってた。冬の夜は月が綺麗に見えるからだって。今だって嬉しそうに、時折星が見える夜空を見ながら歩いてる。今日は風が強かったから雲がなくて、遠くに月も見えた。満月ではないけど、それでも君は嬉しそうに見てた。そんな上ばっか気にしてたら転んじゃうよ。代わりに俺が彼の足元を注意しながら歩くってなんか面白いね。




大通りから1本外れた静かな通りにぽつんとある小さなバーに入った。カウンターと、ボックス席が2つ。カウンターは半分ほど埋まってたからテーブルを選んだ。

重そうなガラス製の灰皿を指でなぞりながらメニューを開く。彼は迷わずワインのページ、俺はウィスキーのページを。お互いお酒が好きなのに、好みの種類は全然違う。ツマミは決まってナッツとチーズ。チョコレートがあってもいいかななんて注文した。2人とも口数が多い方でもないけど話は尽きない。灰皿に溜まっていく吸殻。喫煙者同士、でも銘柄は違う。


「…ははっ」

「ん?なんだよ急に」


肩を揺らして笑う俺に、彼は不思議そうに言った。酔いのせいでいつもキリッとしてるその大きな瞳か溶けてるみたいにだらんとしてて可愛い。


「いや?俺たちってさ、似てるのに似てないなって。でも似てないのに、似てる」

「……ぷ、なんだそれ」


だってそうじゃない?共通点が多いのに、まるで正反対なことも多くて、それでいて一見全然合わなそうに見えてぴったりと合わさっちゃう感じ。心地よくて、気付けばつい隣にいてしまう。


「………ねぇ、」

「ん?」

「俺たちって、なんなんだろうね」


友達?メンバー?仕事仲間?ライバル?

全部そうだけど、全部ちがう気がする。のは、俺だけ?


「…………………飲みすぎたな、水もらおう」


そう言ってウェイターに声をかける彼を見つめた。ずるいね、こんな程度で酔うわけないのに。君も、俺も。


「ほら、ジヨンも、」


そういって運ばれてきた水の入ったグラスを、差し出す手ごと握る。トップは驚いたような顔をして固まった。


「………俺たちの関係って、なんだと思う?」

「…なんだよ、しつこいな。酔いすぎだ」

「まさか。こんな量で酔うと思う?」

「………」


するり、と指先でその甲を撫でれば彼の身体が大きく跳ねる。触れてる手も、顔も、なにもかも熱い。やっぱり酔ってるのかな、なんて。


「…俺はただ……この名前のない気持ちに、関係に、名前をつけたいだけだよ、タプヒョン」


ああなんて遠回りな言い方。本当は分かってる。俺も、君も、互いが互いをどう思ってるかなんてことくらい。それでも一歩踏み出せないのは、俺が臆病者だからだ。


「………いい、のかよ」

「……」

「………言っちまったら…名前をつけたら、それで決まっちまうんだぞ」


彼の声が震える。なんだ、君も臆病者だったんだね。こんなところは似なくていいのに。そんな期待に濡れた瞳で、そんなこと言うなんてさ。目は口ほどに物を言うって、本当よく言ったもんだ。


「………………うん」


パッと手を離す。そしてそのままグラスを掴むと一気に水を煽った。やけに乾いた喉、冷たい水が流れて気持ちいい。


「………次のツアーが、」

「……」

「…………終わったら、またしばらく落ち着くだろ」

「……うん」

「……そしたら、決めよう…俺も、お前も。それでいいか?」


君って即断即決に見えて意外と優柔不断。それって案外俺もだったのかな。


「……うん、そうしようか」


カラン、とグラスの中の氷が音を立てる。俺が頷けば、トップも嬉しそうに微笑んだ。





それが、3ヶ月の話。











あ、と思ったときには遅かった。まるでスローモーションのように見えていたのに、手を伸ばすことすらできなくて。


「っ、タプヒョン…っ!」


ツアーの準備が着々と進む中、リハーサルのステージから足を滑らせ落下したトップは、そのまま病院に運ばれた。幸い大きな怪我もなさそうだったが少し頭を打ったようで、脳震盪でそのまま気を失っていた。みんなの顔が青ざめる。かくいう俺もその1人。想像以上に動揺して、付き添いで病院まで来たがここまでの記憶がほとんどない。


「もう少し詳しい検査はまた明日行いますが、今見たところ脳内の出血も見られません。骨折もないようで…」


マネージャーとともに医師の説明を受けながら心の底から安堵の息を吐き出した。足の力が全て抜けてしまったかのように椅子から立ち上がることができない。大事をとって3日間ほど検査入院ということになったが、医師の言葉を信じるならばツアーは問題なく行うことができそうだ。


(……よかった、)


なんの問題もないと思っていた、このときまでは。







「……だれ、」


数時間後、ようやく目を覚ました彼の口からこぼれ落ちた言葉に、最初はわけがわからなかった。悪戯好きの彼が、俺たちを安心しさせようとついている冗談なのかと思った。いや、冗談だったらどれほどよかったか。


頭を打った影響なのか、トップの記憶は少し曖昧で、記憶喪失とまではいかないものの脳内の回線に不具合が起きているようだった。それでもある程度のことは覚えていて、自分のことや今現状なにをしているか、メンバーの名前や仕事内容、歌詞などはわかっていた。


なのに、


「……ジヨンのことだけ、わからなくなってるってこと、?」


恐る恐る、といった風に再確認するヨンベの声が遠くに感じた。そう、ほとんどのことは覚えてるのに、俺のことだけすっぽりと頭から抜け落ちているらしい。


「…………悪い」


申し訳なさそうに眉を下げながら、彼がゆっくりと頷く。


目の前が真っ暗になった。









それでも全く忘れたわけではない、らしい。徐々に話していくうちに記憶の蓋があいていくように見えた。例えば学生時代一緒に遊んだときの話や、2人で作った曲だとか。ふとした瞬間にずれていた回線が正常に戻るように、ぽろっと思い出していく。


「ジヨン、」


すっかりその口から発せられる俺の名前も馴染んで、ダンスの振り付けも身体を動かすうちにほとんど思い出していた。テソンやスンリと笑い合う姿も前までと全く変わらない。今までの君と。

なのに。


「ねぇ、タプヒョン」

「なんだ?」

「4ヶ月前、行ったバーのことさ、覚えてる?」


途端にトップの顔が曇る。それが答え。


「……悪い、まだ思い出せない、」


ここ数年の、俺との記憶が曖昧らしい。回線がショートしてしまったみたいに覚えてないんだって。ピンポイントで、俺との思い出だけ。全く笑っちゃうよね。


「………そう」


じゃあさ、全部忘れちゃってるってことでしょ?あの日、ツアーが終わってひと段落したらさ、決めようって言ったこと。本音を隠して、でも隠しきれない瞳でお互いを見ながらした約束。

全部、俺だけの思い出に、なってるのかな。









ツアーが無事終了し久しぶりの休日、俺は1人で街を歩いていた。今日空いてるかってメッセージ、こないかなって、朝から何度も携帯見て。きてないことに落ち込んで。だからって自分から誘う勇気もない。

帽子とメガネ、マスク。あまり目立たない地味な服装。


『いくら変装してても、ジヨンってすぐバレちまいそうだなって』


君はそんなこと言ってたっけ。でもどうやらその予想は外れてるみたい。今のところ誰からも声かけられてないもん。案外俺って影が薄かったりして。


そういえばこの指輪のデザイン、気に入ってたね。たくさん並んだアクセサリーを片っ端から手に取って、ああだこうだ言いながら棚に戻していく。最後の最後ギリギリまで悩んでいたピアスも、結局買わないって言ったときは笑ったな。君って変なところで優柔不断なんだもん。


『やっぱり夜は冷えるな』


なんて言いながら嬉しそうにしちゃってさ。たしかに月が綺麗に見えてたもんね。今日は曇ってあまり見えないけど。君だって俺と同じくらい寒がりのくせに冬が好きだったね。月が綺麗に見えるからって、ほんと君らしい理由だと思う。そういえばあのとき俺、さり気なく君の腕を引いて誘導してたの気付いてた?じゃないと、上ばかり気を取られて歩いてる君の足、水溜まりに突っ込んでたからね?全く感謝して欲しいよ、なんてね。


『………いい、のかよ』


あのバーで君の飲んでたワイン、一口もらったけど美味しかったな。なんていう名前の品種か覚えてないけど、すごい飲みやすくて俺好みだった。いつも2人違う種類のお酒を飲んでたけど、案外味覚も合ってたのかな。


『………言っちまったら…名前をつけたら、それで決まっちまうんだぞ』


流れてた曲もいいって話したよね。聴きなれないジャズナンバーだったけど、心地よくて覚えてる。でも君は、俺がいいって言った曲の1個前に流れてた方が好きって言ってたね。そこは少し合わなかったな。


『……そしたら、決めよう…俺も、お前も。それでいいか?』


って、言ってたのに。




「……タプヒョン、」


落ち着いたら決めようって。それって俺たちの関係を進めたいってことだったんじゃないの?心地いいけど歯がゆくて、はっきりしてそうで曖昧だった関係を。少なくとも俺はそのつもりだったよ。


君に好きだって、伝えるつもりだった。


「……っ、ぅ」


じわり、と歪んだ視界。そのあと目の奥が熱くなって、とめどなく涙が溢れた。懸命に耐えようと思ったけど抑えられなかったから、やがて我慢を止めて思いきり泣いた。


「ぐ、ぅ…ふっ」


ねぇあの日怖がらずに、勿体ぶらずに、君に好きだって言ってたらなにか変わってた?今こんな思いをせずに済んだ?ステージから落ちたことは防げなくとも、俺のことを忘れるなんてことなかった?なんて、全部想像の話だけど。


「ぅ……たぷ、ひょん…っ」


わかってる。今も君は君だけど、今までの君とはちがう。ほんの少し忘れてるだけ、でも俺にとってはかけがえのないものだった。

俺は未だに一歩も前に進めず止まったまま、君との思い出を何度も何度も繰り返しなぞる日々。あんなこと話したなとか、あそこに行ったなとか。女々しくて笑っちゃうけど、過去から抜け出せないでいる。


「……すき、」


結局俺たちってなんだったんだろうね?

それは名前をつけることもできぬまま、ひそかに終わりを告げたのだった。












side.トップ




目が覚めた時は病院だった。直前の記憶なんで全くない。白い天井を見上げながら、なんで今ここにいるんだろうと考えていた。


真っ白な白衣を着た医者の男性が入ってきて、様々な質問にぽつりぽつりと答えていく。目を覗かれたり頭を数回触られたりしたあと、病室に人が入ってきた。彼らの顔を見た瞬間に徐々に記憶の回線が正しくなっていくような、そんな感覚がした。俺が何者で、何をして、普段どんな仕事をして、彼らとどういう関係なのか。閉じていく蓋がゆっくりとあいていくようなその現象は我ながら不思議だった。

ふと、ある人物の顔で視線が止まる。彼の顔を見た時だけ酷く頭が痛んで、誰なのか瞬時に思い出せない。


「……だれ、」


気づいたらそんなことを言っていた。みんなの目が見開かれる。息を飲む音が聞こえてきそうだった。


「……ジヨンのことだけ、わからなくなってるってこと、?」


(………ジヨン、?)


恐る恐る、といった風に再確認するヨンベの声が震えている。そうだ、彼はヨンベで、その隣にいるのはテソンとスンリ。全部分かる。彼以外は全部分かる、のに。


「…………悪い」


頭が痛い。彼の顔がゆっくりと歪んでいく。今にも泣き出しそうな、苦しい表情だった。









それでも全く忘れたわけではないらしい。徐々に話していくうちに記憶の蓋がどんどんあいていった。例えば学生時代一緒に遊んだときの話や、2人で作った曲だとか。ふとした瞬間にずれていた回線が正常に戻るように、ぽろっと思い出していく。


「ジヨン、」


口から発せられる彼の名前もすっかり馴染んで、ダンスの振り付けも身体を動かすうちにほとんど思い出していた。テソンやスンリとくだらない話で笑い合うことも増えた。

なのに。


「ねぇ、タプヒョン」

「なんだ?」

「4ヶ月前、行ったバーのことさ、覚えてる?」


彼が酷く怯えたように聞いてくる。そう、徐々に記憶は蘇ってきているが、なぜかジヨンとのここ数年の記憶が曖昧だった。モヤがかかったように、思い出そうとすると頭が痛くなる。


「……悪い、まだ思い出せない、」


そう答えるのは心苦しかった。だって、


「………そう」


ジヨンが、とても悲しい顔をするからだ。眉を下げ、笑っているのに泣いてるみたいな、全てを諦めてしまったような表情をする。彼は時々、こうやってふとしたことを聞いてくる。2人で行った街のこと、飲んだ酒のこと、話したこと。どうしたって思い出せなくて、その都度ジヨンはこの顔をした。


(……なあ、)


俺たちってどんな関係だったの?


友達?メンバー?仕事仲間?ライバル?どれもそうなのだろうが、どれも違う気がした。そんな感覚に囚われる。


(俺たちは、)


聞きたい。のに、結局聞けないまま。









『…俺 ただ……この………ない気持…に、関…に、名前……たい …だよ、』


ノイズが走ったように上手く聞き取れない。言葉だけじゃない、視界も酷く荒れてよくわからない。ここはどこで、俺は誰といて、なにを聞いてるのか、よくわからない。


『………いい、のかよ』


口が勝手に動く。まるで自分の身体じゃないみたいに、幽体離脱した状態で俯瞰的に見ている感覚だった。


『………言っちまったら…名前をつけたら、それで…………、』












ハッとして目が覚めた。

ツアーが無事終了し、久しぶりの休日。目覚ましもかけずに寝たから、起きたときにはもう昼を過ぎていた。見慣れた天井、ゆっくりと身体を起こせば、いつの間にか上がっていた息。そして嫌な汗をかいていた。


「……………夢、?」


なんの夢だったかは思い出せない。俺はため息をつくとリビングに向かった。冷たいミネラルウォーターを一気に飲みながら、換気扇のスイッチを入れる。タバコを咥えて火をつけた。思いきり息を吸いその味を肺に入れながら、気づけば俺は携帯を取り出していた。画面をタップしながら、メッセージを送るところでふと指を止める。


「…あ?」


俺は今、誰になにを送ろうとしてた?久しぶりの休みだから、どこかに出かけようって、空いてるかって、一体誰に。


「……チッ」


大きく舌打ちをして携帯を仕舞う。なんだか心がもやもやした。





気分を変えるように少し離れた街に出かける。そういえばアクセサリーを見たいと思い店に入った。ひとつひとつ吟味していく。特になにか欲しかったものはなかったが、あるピアスが目に飛び込んできた。小さなエメラルドグリーンの宝石が埋め込まれているリング型のもの。なんだか前にも見たことがあるような…。


『なに、それ気になってるの?』

『んー……迷ってる』

『意外と優柔不断だよね、君』

『…うるさいな』

『………え、結局買わないんだ』


「お客様?」


ハッとした。いつの間にか隣に立っていた店員に話しかけられる。俺、今なにを思い出していたんだっけ。


「それ、気に入っていただけました?」

「ぇ、あ…はい。じゃあ、これを」


ありがとうございます、と言う声を聞きながら、気づけば購入していた。




そのあとは前から気になっていた美術館に入り、そこを出たときにはすっかり日も沈んでいた。そろそろストックのワインが少なくなってきたな、と思いショップに入る。ずらりと並んだワインを見ながら、ふとある1本で目が止まった。アメリカ産のメルロー。黒がベースのデザインを見ながら、ふとこれをどこかで飲んだような気がした。たしか家ではない、自分で買ったものをあけたんじゃなくて、どこかのバーで飲んで、気に入って、


『…ん、美味い』

『ほんと?ちょっと一口ちょうだい』


そうだ、そう言って飲んだ彼も気に入って、それで……、


「痛、」


ズキン、と頭が痛くなって思わずこめかみ付近を手で押さえる。彼って誰だ?うまく思い出せない。

俺は結局、そのワイン片手にレジに向かった。









「……なあ、ジヨン」

「ん?」


仕事終わり、楽屋で着替える彼にそっと声をかけた。テソンはトイレ、スンリとヨンベは2人込み入った話をしている。別に他の人に聞かれて問題はない、が、なぜか無意識のうちに小声になっていた。


「その…今夜、時間あるか?」

「今夜?」

「ああ、買ったワインがあって…一緒にどうかなって………前に…」


ジヨンが美味しいって言った、あの。

そう言おうと思って止まる。自分が1番驚いていた。彼が美味しいなんて、いつ言ってた?俺はなんで今そう思った?そもそもなんで、今ジヨンを誘って…、


「……ん?前に、なに?」

「い、いや……なんでも………」


口ごもってしまった俺に、彼はふっと笑った。


「……いいよ」

「ぇ」

「今夜、空いてる。せっかくだから、いただこうかな」


そう言いながら荷物をまとめる彼に、俺も慌てて着替え始めた。









「さっむ…」


玄関の前で、ジヨンが寒そうに首を縮こませる。たしかに夜は風が冷たい。昔からジヨンは寒いのが苦手で、冬が嫌いだと言っていた。


「…そうだな」


正直、俺は冬が嫌いではない。寒さに強いわけではないが、冬は空気が澄んでるせいか夜に月がよく見えるからだ。今日は満月だから空に浮かぶそれがハッキリと見えて嬉しい。


「……ははっ」

「ん?なんだ?」


鍵をあけたところで、隣で彼が面白そうに笑った。


「ううん…ただ、ヒョンすごい嬉しそうだなって」

「え?」

「……冬は、綺麗に見えるもんね」


思わず固まる。まさに今考えていたことを言われて驚いた。そんなに顔に出てたか?それとも…。


(……それとも、?)


前にも、あったっけ?たしか夜の道を、歩いてて、夜空を見ながら、歩いてて、そしたらさりげなく腕を引かれて、ふと下を見たら水溜まりがあって、そのまま進んでたらそこに足を突っ込んでしまってたなって、思って、それで……、


「……タプヒョン?」


ハッとした。不思議そうにこちらを見るジヨンの鼻が微かに赤い。慌ててドアを開けた。


「悪い、ボーッとしてた。すぐ暖房つけるから、上がって…」

「ん、ありがとう。お邪魔します」


そう言って中に入っていく。靴を脱ぐ様を、ぼんやりと見つめてしまった。









「あれ、これ……」


2つのワイングラスとボトルワインをローテーブルに出したところで、ジヨンがぽつりと呟いた。動きを止める彼の視線の先、この前買ったピアスが2つ。そういえば買って出したまままだつけてなかった。


「ん?ああ、それ買ったんだ、この間」

「……へぇ、結局買ったの」


そう言って嬉しそうに手に取る。あまりにも愛おしそうに、それでいて眉を下げ悲しそうに、手の中にある小さなピアスを見つめる彼になんだか心臓のあたりがぎゅっと痛くなる。理由はわからなかった。


「つけないの?」

「あ、ああ…つけようと思いつつそのままにしてて…」

「………じゃあつけてあげるよ」


ジヨンがゆっくりと近づいてくる。長くて細い骨ばった指が伸びてきて、俺の耳たぶに優しく触れた。反射的にビクッと肩が跳ねる。その手つきに顔が熱くなる。なんだか前にも、こんなような触れ方をされた気がした。あのときはたしか、手だったような。グラスを持つ俺の手をそっと包むように握って、手の甲をなぞるように指先が動いて、なんだったっけ。


「はい、つけれたよ」


ジヨンがパッと手を離した。近くにあった鏡を見ると、左の耳についたそのリング型のピアス、エメラルドグリーンが綺麗だ。


「やっぱり似合ってる。買って正解だったね」


いつの間にか速まっていた鼓動がうるさい。ソファに腰掛ける彼に、俺は急いでボトルワインをあけた。


「あ、このワイン……」


グラスに注いだ後、ジヨンがボトルを手に取った。まじまじとラベルを見つめる。


「それもこの前買ったんだ」

「そうなんだ」

「たしかこれだったよな?あのときジヨンも美味しいって言ってた……」

「え?」


彼が驚いたように目を見開く。かくいう俺も自分の発言にびっくりしていた。あのときって、今言ったよな俺。今日ジヨンを誘うときも同じようなことを…あのときっていつの話?なんでそんなこと思ったんだっけ。


「ぇ…いや、その……」


なんだかおかしい。記憶がぐちゃぐちゃだ。なのに、口が勝手に答えてる。これはきっと、未だに思い出せない彼とのことなのだろう。


「……さ、乾杯しよ?」


ジヨンが微笑みながらグラスを軽く持ち上げる。またあの顔だ。悲しそうに、全てを諦めたような。見てて苦しい。


「………ああ」


なあ、俺はなにを忘れちゃってるの?お前とどんな話をして、どんな関係だったの?


「…ん、やっぱり美味しいね」


ジヨンは無理に思い出させようとしてこない。わからないと答えると、いつも「そっか」とだけ返してそれ以上なにも言わない。すぐに話題を変えてなかったことにする。

でもいつもその瞳は憂いを帯びてた。俺と話してるのに、まるで今の俺を見ていない。俺を見ながら、いつも前までの俺をなぞっている。そんな感覚がする。










side.ジヨン




他愛もない話をしながら酒が進む。 時々ナッツやチーズをつまんで、気付けばボトルも空になるころ。アルコールのせいで脳がふわふわした。やっぱりこのワインは美味しい。

ふと見上げた窓から覗く月。今日は天気が良かったせいか綺麗に見えた。


「……ジヨン、」


ぼんやりと窓の外を眺めていたら、随分と固い声で名前を呼ばれて思わず彼の顔を見た。酒の影響か目元が少し赤い。


「………なに?」


先程から気付いていた。話しながらも、トップがなにか言いたげに口を開けては、何も言わず誤魔化すようにワインを飲んでいたことに。それが何度もあって、それでも気付かないフリをしていた。


「俺が……俺が、リハーサルで、頭打って…記憶が、曖昧に、なる前の…」

「……」

「…………俺たちって、どんな関係…だったんだ?」


なんだか既視感。でもあのときは逆だったね。その問いかけしたのは俺の方だった。


「…………どうしたの、酔っちゃった?水飲んだ方がいいよ」


今度は俺が誤魔化す番。なんだか胸が苦しい。でもきっと、苦しいのは俺だけじゃないよね。

今のトップはなにも悪くない。忘れたくて忘れたわけでもないし、彼だってもやもやする記憶にもどかしい思いをしているはずだ。情けないのは、わかっていながらもいつまでも過去に囚われている俺の方。


「…持ってくるよ。冷蔵庫の中?」


そう言って立ち上がろうとした手をパシッと掴まれた。握られた手首が熱い。


「……タプヒョン、?」

「なあ、教えてくれ。俺たちはなんだったんだ?」


本当に笑っちゃうね。あのときと、なにもかも逆。なんて、またこうやってあの夜と比べてる。


「………なんだったって、そんなの…」

「……」

「……同じメンバーで、友達で、仕事仲間で、良きライバル。それ以上でも、それ以下でもないよ」

「……うそ、だ」

「嘘?なんでそう思うの」

「そうだけど……そうじゃなかったんだろ、」


トップの声が震えた。なんで君がそんな泣きそうな顔するの?なんだか俺も鼻の奥が痛くて目の奥が熱い。


「……とにかく、嘘じゃないよ」

「………ほんと、に?」

「うん、本当」

「……じゃあなんで、そんな苦しそうな顔してるんだよ」

「っ、」


何言ってんの、それは君もじゃん。ほんと、こんなところばっかり似ちゃって困るね。


「なあ、本当のこと教えてくれ」

「……だからさっき言ったでしょ」

「………でも……」

「……」

「…ジヨン、」

「っしつこいな、本当だってば…!だって、俺たちはあのとき……、」


『……そしたら、決めよう…俺も、お前も。それでいいか?』


そうだ、俺たちは結局なにも決められなかった。君のせい、だなんて思わないし思いたくもない。でも確実に、俺たちはあのとき終わってしまった。名前もつけることもできずに、曖昧なまま。


「………ごめん、急に大声出して。びっくりしたよね」


彼は頭を横に振ったあと、しばらく黙った。痛いくらいの沈黙が部屋に落ちる。それでも、手は離されなかった。


「………悪い、俺が忘れてるせいで…ジヨンに、苦しい思い、させてるよな…ごめん」

「…タプヒョンが謝ることじゃないよ」

「…苦しいんだ、ずっと……」


トップの眉間にきゅっとシワが寄る。細くなった瞳が潤んでいた。


「ジヨンが……ジヨンが、俺と、話してるとき……まるで、今の俺を見てないみたいで…」

「…っ、」

「俺を見ながら、前までの俺を、見てる気がして……」

「……タプヒョン、」

「俺は、今も、前も、変わらず…俺のままなのに……なあ、ジヨンは、だめなのか…っ?今の、俺ごと、」


好きになってくれないの?


語尾が大きく震えたと同時に、その瞳から涙がこぼれ落ちた。その言葉が俺の身体にゆっくりと浸透していくような感覚がして、気付けば腕を伸ばして彼を力一杯抱きしめていた。


「……ごめん、タプヒョン…そんなつもりはなかったのに、」

「ぅ…ぐっ、」

「君はいつだって、今も変わらず、タプヒョンなのに……」


無意識のうちに、ずっと過去をなぞってた。2人で行った街、行った店、見たもの、話したこと、交わした約束。そればかりを気にして、前に進むことを諦めて、目の前の彼をちゃんと見てなかった。


「……ごめん。今も前も関係ない。タプヒョンが……」


ああ、やっと、


「……タプヒョンが……好き」


やっと言えたな。君に先に言わせちゃった。


「…………俺、も」

「…うん」

「忘れたことがあっても、何回でもお前を好きになるよ」

「……うん」

「次忘れても、絶対好きになる」

「…ふは、もう忘れないでよ」


そう言って笑えば、彼も嬉しそうに笑った。細めた瞳から零れる涙が綺麗だった。

同じメンバーで、友達で、仕事仲間で、良きライバル。そこに恋人が加わった。


「……好きだよ、タプヒョン」


あの日言えなかったこと。言えてよかったな。
















皆様お付き合いいただきありがとうございました!書いててわけわからなくなりました笑 今までも全然だめだなと思うことはあっても、ここまで収拾つかなくなったこと初めてです笑

こんなものでしたが、読んでくださりありがとうございました♡


この作品はいかがでしたか?

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