コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
当時のクラスメイトについて色々考えてみる赤羽だったが、どうにも心当たりがない。というか覚えていないのだ。五人から「トランプの時のあの記憶力を呼び覚ませ」「覚醒しろ」とはっぱをかけられても、全く思い出せる気配がない。彼自身小学6年の時に転校してきたのもあってあまりクラス自体に馴染みがない、という弁明も「じゃあなんでタイムカプセル開ける会行ったんだよ」というヘイトにかき消され、記憶力弱者、と五分くらい言われることとなった。
「覚えてないんだったら犯人見つけるのって結構絶望的だぞ」
「そうなんだよ…」
「まあ今病院だっていうし大丈夫じゃね?」
「なんでそんな楽観的でいられるんですか…」
「なんなら今度お見舞いの時に聞いてくればいいじゃん!」
「…なんかころちゃんに言われたの腹立つけど聞いてくる」
「なんでだよ!」
赤羽が見舞いついでにクラスメイトについて聞いてくる、と言って四日が経過した。予定の合間を縫ってなんとか病院に行き、その報告を心待ちにしていた五人。じりじりと待ち続け、やっと戻ってきた赤羽に話を聞こうと殺到する彼等に向かって、赤羽は一言だけ呟き、ソファに体を横たえた。
「健斗が、死んだ」
「……は?」
予想していた最悪の結末にただただ言葉を失うしかない彼等。力尽きた様子の赤羽にこれ以上聞くのは酷だと選択し、机に置いてある彼のスマホから健斗とのLINEを確認する。
『おーい、大丈夫?』
『既読つけろー』
『おーーーーい』
『今から病院行くからなーーー』
「それで病院行ったら、死んでたのか…」
「なんにせよ、これだけじゃ何にも分からんな」
「りーぬ、辛いのはわかるけど、僕たちも力になりたい。何か知ってることがあったら話して?」
そう言われて赤羽は、疲れた様子を見せながらも現場の状況について語り始めた。
「……なるほど、ありがとう莉犬くん。今分かってることは、
・健斗が亡くなったのは二日前で、死因は病院の階段で足を滑らせ、頭を強く打ったこと
・健斗の母は健斗が死んだ日、赤羽と健斗が会っていたと思っている
・赤羽名義で階段まで来いと連絡があり、その後健斗は死んだ
・犯人は小学校の同級生である可能性が高い
こんなもんかな」
「そうだな」
「俺、やってないのにお母さんに恨んでる目みたいので見られて…でも、やっぱり一回会って、ちゃんと話をしとけばよかったんだ、ほんと馬鹿だ…」
「莉犬のせいじゃないよ」
やはり彼は相当憔悴し切っているようで、いくら「莉犬のせいではない」と言ったところで何も聞こえなくなっているようだ。そんな状態で長考していた彼だったが、やがて何かを決心したかのように顔を上げる。
「でも……うん、俺はやっぱり自分のせいな所もあると思うからこのまま調査続けるけど、みんなはもう関わらないでほしい」
「は?」
「俺は今ネックレスを持ってるし、もしかしたら俺にも被害が来るかもしれない。みんな関わってたら、みんなにも被害が来るかもしれない。だから、この件についてはもう関わらないでほしい」
「……分かった」
大人しくうなづくメンバーを安心しながら見つめる赤羽。助っ人がいなくなるのは厳しいが、危険に巻き込まれるよりはずっといい。被害を受けるのは自分一人で十分だ。
「うん」
「絶対ここから手を引かない」
「え?」
予想していた答えと正反対のものが返ってきて耳を疑う赤羽。そんな彼をよそに、五人は次々と彼に明るい言葉をかけていく。
「困ってるメンバーみて放って置けるほど薄情じゃないしな」
「大丈夫とか言っちゃった僕の責任もあるし」
「大人数で調べた方が早いやろ」
「…ね、迷惑をかけるとか心配する前に、俺たちは莉犬くんの力になりたい。もし狙われるとしたら守った方がいいし。だから、一緒にがんばろ?」
「………ありがとう」
想像していた形とは違う答え。しかし、赤羽の表情は自然と明るいものに変わっていた。
「もちろん!」