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ゴー太集

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ゴー太集

3 - 離さないし離れない。

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2024年11月07日

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怖い夢を見た太宰ちゃんがニコライちゃんに寝かしつけられる話











眠りの深淵にて、冷たく苦い夢を見た、青年___太宰はガバリと飛び起きた。

呼吸は何処か浅く、ひゅう、ひゅうと、か細い息を喉に押し込んでは、はぁ、はぁと、えずく様に吐き出した。

茶色の琥珀の様な瞳には、真珠の様な涙が浮かび、虚げに不安げに揺れていた。

冷や汗が湧き出て、太宰の身体を震わせる。

「、、、おださく」

いつかの友人の名を呼ぶ、母を探す迷子の様に、淋しげに。

「おださく」

亡き友人を呼ぶ、その声には微かに嗚咽が滲んでいた。

寂しい、ただ寂しい

はたと瞬きをした、琥珀から真珠が溢れ、真白のシーツに滲みていった。

川の中から見る泡の様だった。

僕を包み込む白は、彼を連想させた、彼もいつかはいってしまうのだろうか。

ふと、隣に眠る愛しきを見遣った。

普段とは似ても似つかない、静かな寝息を立てていた。

声が聴きたい、優しく語りかけてくれる其の声から、唯一言だけ、「ずっと一緒だ」と。

見つめ合いたい、慈愛が優しく滲む銀と青翠の視線を、独り占めしたい。


抱き締められたい、逞しい腕の中閉じ込められてしまいたい。


「ニコライ、、、」

白の毛布に包まれた体を、ゆさゆさ、ゆさゆさと揺らし乍ら、親を呼ぶ子供の様に、不安げに彼の名を呼ぶ。

「ねぇってば」

ゆさゆさ、ゆさゆさ

「んん、、、」

呻くような声が聞こえる、視線を上げ、端正な其の顔を見遣ると眉を顰め、優しい銀と青翠の眼が薄く開かれていた。

「ん、、、どうしたんだい?」

体を上げ、何時もの優しい瞳が太宰を見遣る、暖かな声は寝起きだからか更に熱っぽくなっていた。

「はぐ、して」

何時もと違い、素直に甘える太宰に、白の彼___ニコライはくすりと微笑んだ。

「どうしたんだい太宰君、随分と甘えん坊な様だけど」

ふと太宰の顔を見遣る、茶色の琥珀を埋め込んだ様な瞳の奥は不安げに揺らぎ、目元には泣き腫らした様な跡が伺えた。

「恐い夢でも見たかい?」

察した様に優しく問う、泣く子を見る様に眉を下げ、銀と青翠の眼を細める。

「、、、うん」

肯定の意が返ってくる、あどけなさが残る其の声のなんと愛らしい事か。

「そうかい、どんな夢だったんだい?」

余り深掘りするのは良く無いとゆう事は分かっていたが、何でそうなったかを打ち明けて呉れなければ、僕には如何にも出来ない。

「えっと、あのね___」

ポートマフィアだった頃、亡くなっちゃった友人が居たんだ『織田作』って呼んでたんだ、夢の中で織田作に会ってね、昔みたいに織田作って話し掛けようとしたんだよ。

そしたら、目の前で、血を流して倒れちゃって。

駆け寄ろうとしても、足が動かなくて。




「それ、、、で、、、っ」



「君もいっちゃうのかなって、、、っ」

呆れられたかとそっと目を逸らした。その刹那___





「っふは、あははっ!」

何時もの愉快な笑い声が聴こえた

「ぇ?ちょっと、何笑って、、、!」

此方は真剣に話したのに!、そう咎めても、彼から溢れる笑みは止まない。

こんなんじゃあ真剣に話した僕が莫迦みたいじゃ無いか。

「っふ、、、ごめん、ちょっと待って、くふっ、、、」








「はぁ、、、あーお腹痛い」

人が真剣に話したのに腹を痛める程まで笑うとは、此奴はそんなに社会不適合だったかとでも言いたげに太宰は訝しげにニコライを見遣る。

「本当なんなのさ、さっきから莫迦笑いして」

「否、、、太宰君、頭は良いけど、偶にお莫迦さんになるなぁって」

天才は何処かズレているとはこの事か、とニコライは思い耽る。

その隣の太宰はジトリとした視線で、猫の様にニコライを睨む。

「ああ、違うんだ、怒らないでおくれよ」

「綺麗な顔が台無しだよ?」

割れ物を触るように、優しく愛しげに猫の頬を撫でる、満更でも無さそうに愛猫は目を細めた。

「ん、、、」

優しそうにうとりと解けた綺麗な茶色の琥珀は暖かそうで、泣きそうだった。その瞳が如何にも愛しくて、いじらしい。

大丈夫だと、何処にもいかないからと安心させる様に、空いた片手でサラリとした栗色の髪を撫でる。

其の手付きがなんとも優しくて、暖かかった。

「ね、ニコライ」

君は側に居てくれるかい、そう問おうとした声を、呑み込んだ。

「如何したの」

「、、、ううん、やっぱ良いや」

「そうかい?」

嗚呼、うん、もう大丈夫さ。だって聞かずとも教えてくれるんだから、君の体温が、瞳が、僕を独りにはしないと、教えてくれるから。

嗚呼、でも、ひとつだけ。

「ねえ、僕を独りにしないでね」

君の言葉が欲しい

「勿論さ」

慈愛の滲んだ銀と青翠に見つめられる。

逞しい腕は僕を包み込む。

そうして君の声が

「ずっと一緒だ」

僕が一番欲しかった言葉をくれる。

嗚呼、愛しい人、そのまま僕を見ていておくれ、僕が君の腕の中に居なくとも、僕を逃さないでね。






離さない、離れないと互いを閉じ込め合う。二人は夜の深さに飲み込まれるように、微睡み、眠りについた。


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