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『天使』
僕には夢がある。
それは、天使を見ること。
物語では希望を与え、光で照らし、 時に力強く戦う。
それはまぁ、ただの人間の空想に過ぎないが。
ひと目でいいから、僕は天使を見たかった。
でも、「僕は天使に会える?」
そう聞いたって、 誰も真剣に答えてはくれなかった。
学校の先生に聞いた時は、
「いないから。」 と言われた。
友達に聞いた時は、
「しねばいいんじゃない?」と笑われた。
家族に聞いた時は、
「知らない。」と一蹴された。
誰も答えちゃくれないのは、 誰も分からないからなのかもしれない。
もしかしたら、僕が初めてなのかもしれない。
天使に会いたいなんて、 誰も思ったことないのかもしれない。
だから僕はみんなの為に、 確かめようと思った。
天使はきっと空にいると思った。
でもどうやって空まで行くのか 分からなかったから、本屋さんへ行った。
「あのぅ。飛び方が載っている本とかありますか?」
お店の人は困った顔をしたけど、すぐに「そちらにありますよ。」と棚を指さした。
その次に、
「天使の本はありますか?」
と聞いた。
お店の人はまた首を傾げたけど、少しして「奥の方にありますよ。」と教えてくれた。
すぐに側の棚で例の本を取り、並んだ多くの本を横目に奥へ奥へと進んだ。
奥へ行く度、人の数が減っていくような気がした。
やっと見つけたその本。
パラパラと見てみるけど、大したことは書いていない。
『天使には羽が生えていて、飛べる。』
『天使は死者を招く。』
『天使は白い。』
安直だ。
でもこれだって人間が作った空想かもしれない。
だから確かめに行く。
その本を借りて、真っ直ぐ家へと歩いた。
家へ着くと、早速借りた本を開いた。
人間は飛べないと書いてあったが、やってみないと分からない。
だからやってみることにした。
家の窓を開けて空を見上げる。
天使は見えないから、羽ばたく鳥を見た。
僕もあんなふうに飛びたかった。
だから飛んだ。
果たして、天使は僕のことを見てくれるのだろうか。
僕の目の前に現れてくれるのだろうか。
情けはくれるのだろうか。
目を開けることは出来なかったし、視界は真っ暗だったが、僕の顔を風が触った。
同時に暖かい感触を感じた。
天使の羽だ。
そう思った。
僕は本当にいると確信した。
僕の顔をかすめて、離れていった。
まだ暖かかった。
僕の夢は叶った。
天使は人間のように温かかった。