テラーノベル
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※執事達の女体化
不思議な指輪を嵌めたら異世界に飛ばされた。
19人の個性的な執事達が天使狩りをして人々を守っていて、天使狩りには主様による力の解放が必要であるらしい。
そう説明してくれた少なくともEカップくらいありそうなたわわな胸を揺らしながらお茶を用意してくれているベリアンと名乗る執事の胸と、自分のぺったんこな胸を見比べてケイティは溜息を吐いた。
ケイティは不老不死だからこれ以上成長することはない。魔法で背を伸ばして胸や尻に肉をつけることも出来なくはないのだが、その魔法を使うには非常に大きく緻密で大量の魔力を必要とする魔法陣が必要であり、その身体を維持するのにも魔力を消費する。それならば別に子供の姿のままでいいや、と思っていたケイティの心が揺らぐ。それと、柔らかくて温かそうな胸に顔を埋めて優しく抱きしめてもらいたいという欲望が湧いてくる。
🫖「どうぞ、主様。街で評判のマドレーヌとダージリンをご用意いたしました」
K「ありがとう。ねぇ、ハグしてもいい?」
いきなりのセクハラにベリアンはお茶が溢れているのにも気づかずに固まってしまった。
🫖「は、ハグ…ですか…?えぇと……それは、なんと言いますか…あまりよろしくないかと……
ですが、私達は執事ですから主様にご奉仕するのがお仕事ですし……少しだけなら……」
紅茶が溢れて染まったテーブルクロスの上にティーポットを置いて、ベリアンは恥ずかしそうに両手を広げた。
🫖「ど、どうぞ………」
見た目からしてまだまだ子供な主様を抱きしめるくらいなら失礼には当たらないだろう。それに、もしかしたらこの子は愛情や母性に飢えているのかも知れない。そう思っての行動だった。
K「いいの!?ありがとう」
ケイティが立ち上がってベリアンに飛びつくと、ちょうど胸に顔が埋まる。
K「んーーーー!最高!!」
ケイティはベリアンの胸に顔を埋め、服の背中を強く掴んで離れようとしなかった。
どうやらただ胸の感触を楽しみたかっただけのようだ。さっきまでの主様が恵まれていない環境で生きてきたのかも…という考えは完全に否定され、ベリアンは溜息を吐きそうになるのを耐えた。
完全にセクハラなので、今後はこういった行動をしないよう注意しなくては。しかし、ケイティは胸の感触を楽しんで、ぐへへ、と笑っている。
🫖「……左様ですか」
ベリアンは半分諦めて無になり、胸に顔を埋めるケイティの頭を撫でてやった。
ケイティは主様としての仕事をするかどうか、保護者の意見を聞きたいからと部屋の鏡から2人の男性を連れてきた。2人は色が真逆で、白髮に青目の賢く冷静そうな男性と、黒髪に赤目の筋肉質な体つきをした男性だった。
🫖「えぇと、お二人が主様の保護者様……でよろしいのですか?」
B「はい、その通りです。ちゃんと挨拶しましたか?この子」
🫖「……いえ、お名前も聞いておりません」
N「どうせ顔が良くて胸もデカい女が居たからセクハラしてたんだろ?ごめんな、お姉さん。ほら、挨拶くらいしろよ」
ノワールに促されてケイティはベリアンにペコリと頭を下げた。
K「ケイといいます。お兄ちゃんたちにはケイトとかキティって呼ばれるから好きな呼び方で呼んでね」
#オリキャラ
824
🫖「はい、ケイ様ですね。改めまして、私はベリアン・クライアンと申します」
B「ベリアンさん、妹が大変失礼なことをして申し訳ございません。僕はブランと申します。こっちが弟のノワールです」
N「ノワールです。それで、被害はどの程度でした?」
🫖「えっ、被害…?ハグを強要されたのも、ご挨拶をしたのも今のところ私だけです」
N「なら良かった…いや、あんまり良くないけど…今後はこのようなことがないように言い聞かせておくので安心してください」
B「本当に申し訳ございません…こんなのが主様だなんて嫌じゃないですか?」
🫖「頭を上げてください、お兄様。私の方からも執事達との距離感をしっかり保つようにとマナー指導を致しますので、ご安心を…」
B「本当に…本当にすみません…」
N「お前、悪いと思ってるか?ちゃんと謝れ」
K「ごめんなさーい」
N「絶対分かってねぇぞ、コイツ。どうする?」
B「ちょっとずつ性癖を修整していくしかないね…」
🫖「……性癖…?」
そんなこんながあって、他の執事達に顔合わせを行う前に、しっかりとベリアンから19人の執事達の紹介と、絶対にセクハラになることをしないよう距離感を意識することを叩き込まれた。
はず、だった。
🌟「主様!?可愛い〜!!」
ぎゅっ
🫖「ラムリちゃん、いけませんよ」
🦋「ちっちゃいなぁ…可愛い…」
なでなで
🫖「フェネスちゃん、主様は危険なんですよ?」
🕯️「ベリアンから聞いているよ。ハグが好きなんだろう?私でよければいつでもしていいからね」
ぎゅっ
🫖「ミヤジさん…貴女まで…」
💮「おー、こんくらいの歳が1番生意気で可愛いんだよなぁ」
なでなで
🫖「ハナマルさん、絆されないでください」
🐦⬛「このオレを「可愛い」なんて言うのは君くらいだね。ご主人サマ?」
ぽんぽん
🫖「クロウザーさん、近すぎます」
結局、ケイティが求めなくても執事達はケイティを見てハグしたり頭を撫でたりする者がほとんどだった。全員にケイティが柔らかい胸が大好きで、女性の体を堪能したくてハグを求めている、と説明したのにも関わらず、顔を合わせた途端に幼い見た目に絆されてボディタッチをする執事達をどうしたら良いのやら…。ベリアンが最後の砦だったマナー指導のミヤジまでもがハグを受け入れる姿勢を見せたことに深々とため息を吐いた。そんなベリアンを慰めるように兄弟が小さな宝石が輝くペンダントを差し出してきた。
🫖「……これは…?」
B「僕が1から作った魔法をノワールに転写してもらったペンダントなんだ」
N「俺達はそこまで魔力がないから1つ作るのに1日かかっちまうけど、これがあればちょっとは安心できると思ってな」
🫖「は、はぁ…安心できる…というと?」
B「キティが半径10センチ以内に入ってきたら弾く魔法が入ってるんだ。だからハグを防げるかなって」
N「まぁ、ケイトがそれを無効化する魔法を編み出したら終わりだが、それまでの時間稼ぎだな。お守りだと思ってつけてくれないか?」
🫖「いいのですか?ありがとうございます」
ベリアンは早速ペンダントを首から下げて服の中にしまった。
そこに、ちょうどよくケイティが現れたのでハグできるか試してみてほしいと言うと、ケイティは露骨に嫌な顔をした。
K「なんで弾かれるって分かってるのにハグしなきゃいけないの…」
N「動作チェックだ。お前、いつも俺達に試作の魔法かけて酷い目に遭わせてるんだから、このくらいやってもらわないとフェアじゃねぇだろ」
B「そうそう。それに明日からは2つずつ作れるはずだからキティが突破するまでの時間稼ぎには良いかと思って」
K「なんでそこまで執事達に肩入れするの…。皆ハグもなでなでも自発的にしてくれたよ!?」
🫖「今後はマナー指導を徹底して、主様とのスキンシップは極力しない方向で皆さんに通達しますからね?セクハラはやめてください」
K「そんなことで私がたわわなお胸を諦められるわけ…っきゃああああ!?」
ケイティがベリアンのたわわな胸に触ろうとした瞬間、ばん!という音とともにケイティが後ろに吹っ飛んだ。ケイティは数メートル先の窓に激突してガラスを割ってしまった。
B「あー…力加減って難しいね」
N「まぁお灸を据えるって意味なら成功じゃねぇか?」
いたた、と言いながらケイティが起き上がると腕や背中にガラス片が刺さっているのが見えた。
🫖「あ、主様!ガラスが刺さっています!あぁどうしましょう…ルカスさんを呼びに行かなくては…!」
慌てるベリアンをブランが落ち着かせ、ノワールはルカスを呼びに3階まで急いだ。
B「ベリアンさん、大丈夫だから落ち着いて。キティは不老不死だからこんなことくらいじゃ反省する気も起きない程度だよ。勿論ここまでするつもりじゃなかったけど、キティのケガについては何も気にしなくていいからね?」
🫖「ですが…!主様はあんなに痛そうなお怪我を…」
ベリアンがケイティの方を見ると、ケイティは冷静な顔で自分の怪我の程度を確認していたので言葉に詰まった。
K「凄まじい威力だね…。はぁ、気を抜いてたから怪我しちゃった。まぁこのくらいならすぐ治るよね」
ケイティが魔法でガラス片を抜いて立ち上がると、もう血が止まっている。ベリアンはそれを見て、「主様は普通の人間ではないのでは…?」と薄々勘づいてきた。ケイティが本格的に回復魔法を使おうとしていると、救急箱を抱えてルカスが全速力で走ってきていた。ケイティは「痛かったからハグして慰めて(きゅるん)」とするという手段が使えるではないか、とほくそ笑み、あえて傷を治さずにルカスの手当てを受けることにした。
🍷「ガラス片は…この血がついているものが全てですか?体内に残っているものはありませんか?」
K「うん、ガラス片は全部抜いたよ。でも傷が痛いの。手当てしたらぎゅってしてくれる?」
ケイティが服を脱がせてから消毒をして傷薬を塗ってくれているルカスに媚びるようにそう言った。
🍷「えぇ、勿論です。ですがその前に服を着ましょうね。幸い血は止まっていたので重症ではなくて安心しました」
K「わーい!」
その様子を見て、ベリアンはこんな威力のあるペンダントではケイティがわざと怪我をしやすいところでベリアンに近づいて吹っ飛ばされ、手当てをしてくれる執事に慰めてほしいと訴える未来が、それはもう鮮明に頭に浮かんでしまった。
🫖「お兄様方…申し訳ありませんが、このペンダントはお返しします。主様が怪我をして慰めてもらう未来しか見えません」
N「まぁ…そうなるよな…」
B「ごめんなさい、今度は適度な威力のアクセサリーを作りますから…」
ルカスに抱きしめてもらって、よしよしされているケイティを見ながら、兄弟とベリアンは一筋縄では行かなそうだと溜息を吐いた。
それから兄弟とベリアン対ケイティの戦いが始まった。絶対に執事と主という壁を越えさせたくない3人と、綺麗なお姉さん達に甘えたいケイティとの熱い戦いだ。さらに、ケイティ側につく執事達も一定数居て、「ケイティを弾くアクセサリーなんてつけたら可哀想だ!」とちゃっかりケイティを抱き締めながら反発してくる執事まで居た。
🫖「どうして…皆さんはセクハラが嫌じゃないのでしょうか?私の感覚がおかしいのでしょうか?」
N「流されるな、ベリアン。アンタの感覚は正しい」
B「でもキティが甘えていることでメンタルが安定している…ラトさんとかラムリさんとかが居るから、全員にキティを弾くアクセサリーをつけさせるのは難しいかもしれないね」
🫖「ミヤジさんも子供が好きですし、悪いところは時間をかけてゆっくり確実に直していく方です。ですが、主様が自分にだけは甘えてもいいと思っている…!それが1番の問題なのです。同じマナー指導係として、ちゃんとしてもらわなくては!」
N「うーん…ミヤジは…厳しいんじゃねぇかな…」
B「自分のスタンスを崩さない人な気がするしね…」
🫖「そうなのですよね…はぁ…頭が痛くなってきました…」
兄弟は異世界でよく効くと評判の頭痛薬と胃薬をベリアンに差し入れし、どうすれば距離感を覚えてくれるだろうかと今夜も作戦会議をするのだった。
🍷「主様、フィンレイ様からの呼び出しが来てしまいました。新しい主様をお迎えしたことが噂で広まってフィンレイ様のお耳にも入ってしまったようです。ご挨拶だけで良いので一緒にグロバナー家に行かなくてはいけません。来てくださいますか?」
K「グロバナー家って皆を便利屋みたいに扱ってる…4大貴族の1つだっけ?そんな奴らに会うのは嫌だけど、行かないとルカス達が危ないんだよね…?馬車の中で膝枕してくれるなら行ってもいいよ」
🍷「おやおや、可愛らしいおねだりですね♪勿論いいですよ。では、準備をしましょう。専用のローブを着用しないといけませんのでお手伝いします」
ケイティにローブを着せているルカスを覗き見しながら、兄弟とベリアンは溜息を吐いた。
N「あの野郎邪魔できない時に甘えようとしてやがる…」
B「キティも成長してるんだね…。僕達ももっと対策を練らなくちゃ、本当にセクハラが罷り通ってしまうよ」
🫖「ですが、交渉係を長年やってきたルカスさんには勝てる気がしません…。あの手この手で隙を突いてきますから…」
どうしようかなぁと3人が頭を悩ませていると、ルカスに手を繋いでもらってご機嫌なケイティが馬車へと向かっていった。
N「手を繋ぐのは…セーフ?アウト?」
B「んー…ベリアンさん、どう思う?」
🫖「エスコートという意味でしたらセーフですね…アウトにするにはもう少し面積の広いボディタッチでないといけないと思います」
N「マジか…執事と主の関係って面倒なんだな」
B「だからこそ適切な距離感を覚えさせないとってことなんだよ。キティがちゃんとしなかったら全員なし崩しでセクハラされるよ?」
N「そうなんだよな…はぁ…とりあえず、こっそりついて行って本気で膝枕するか確認してくるか…」
🫖「もし膝枕をしていたらアウトなので、ルカスさんに見せられる証拠を取らなくてはいけませんね」
B「それなら、確か記録宝珠っていうのがあって…」
ブランが収納空間から取り出したのは四角い小さなアクセサリーについているような宝石だった。
B「これなら映像と音声を記録できるから、これで証拠になるでしょ?」
🫖「魔法とは素晴らしいですね!それならこちらが勝てるかもしれません!ですが、気付かれずに記録するとなると…難しいのでは?」
N「俺達が馬車を追いかけて飛んで、窓から魔力を込めた宝珠を放り込めば勝手に記録したい人間を追って記録してくれるから大丈夫だ」
B「それも、キティに気づかれなければ、だけどね…」
兄弟は馬車が出発するのを窓から確認して、馬車を追って浮遊魔法で飛んでいく。追いついたら記録宝珠を窓から放り込んで離脱する。これなら魔力反応で気付かれるリスクが1番少ないのだ。
無事に窓から宝珠を入れられると、ちょうどケイティがルカスの膝に頭を乗せるところだった。
K「ルカスはちゃんと約束守ってくれるんだね!はわー、ふわふわのもちもちで最高…!気持ちいい〜!」
🍷「ふふっ、主様は甘えん坊さんですね」
K「ルカスが優しいんだよ?ベリアンは絶対こんな風に甘やかしてくれないもん」
🍷「そうですね…。でも、味方が少ないので主様を甘やかすのを黙認することになると思いますよ。もしそうならなくても、私が丸め込みます」
K「ルカス…!ありがとう!」
グロバナー家に到着するまでルカスの太腿を堪能したケイティは上機嫌で会議室に入った。会議室には古今東西の貴族達が集められており、ケイティに冷たい視線が突き刺さる。
🎩「では、誓いの言葉を」
🍷「グロバナー家の憲章に従い、何事も隠さず、真実を述べることを誓います」
K「誓います!」
🎩「よろしい。では、新しい悪魔執事の主のことについて聞かせてもらおうか…」
ルカスからケイティについての説明をして、「無邪気で可愛らしい子供」というイメージを伝えられた貴族達は「役に立ちそうにない」だの「殺して次の主に期待するべきだ」だの「まだ功績も何もないから無能だ」だの、好き放題言いやがった。
K「あ゛あ゛ん?テメェら、黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって、品性ってもんがないのか!?この田舎貴族ども!帰って農作業でもしてろ!」
🍷「あ、主様!?何を仰るのですか!?いけません!!」
K「え?だって何も隠さずに言わないといけないんでしょ?」
🍷「意味が違います!事実のみをお伝えするという意味です!」
K「あ、そうなの?私てっきり本心も隠しちゃダメだと思っちゃった」
🎩「コホン、今の発言は間違いだったということで撤回して謝罪を。それでなかったことにしてやる。今後は気をつけるように」
K「はーい、ごめんなさーい」
ケイティは全く心のこもっていない謝り方をして、ルカスは冷や汗が流れた。ここで貴族達の怒りを買ったら何を命令されるか分からないのだ。最悪、悪魔執事の命が危なくなる。それは避けたい。ルカスは自分が何とかしなくては、と拳を握り込んだ。
N「さてと、宝珠回収…」
兄弟が馬車に投げ込んだ記録宝珠を会議の間に回収しに行くと、グロバナー家の屋敷からものすごい音のサイレンが鳴り出した。
B「な、なにこれ!?」
すると、空が光って真っ白な少年型で羽根が生えていて光っている、恐らく天使だと思われるモノが雲の切れ間から次々と湧いてくる。
B「これって、天使の警報!?早く倒さないと死人が出るよ!」
N「くそっ、武器なんて普通の剣くらいしかないぞ!?それで倒せるのか!?」
B「魔法も通用するか分からないし、無闇に戦うよりは魅了の魔法で僕達に意識を集中させて、時間を稼いだほうが…」
その時、ガチャン!とガラスが割れる音が聞こえて、屋敷の窓から出てきたケイティがものすごい威力の直線攻撃魔法を放った。地面に降り立ちそうだった天使達を狙っていたため、馬車の近くに居た兄弟に当たりそうになり、兄弟は慌てて建物内に侵入して息を吐いた。あんなのに当たったら骨も残らず消し飛ばされてしまう。その証拠に魔法の直線上にあった家々に風穴が開いている。
しかし、そんなことはお構いなしにケイティは天使を消していく。もう天使よりも人を殺しているんじゃないかと思うほど街を破壊して倒している。
K「死ね死ね死ね死ね!!お前達が居るせいで!皆は!あの優しい執事達は!あんな扱いを受けているんだ!!許せない!!許さない!!」
ケイティはバンバン直線攻撃魔法を放ってまるで弾幕のように天使達を襲う。その姿は正に破壊神。街がボロボロになって火の手が上がっても、全く気にする様子はなかった。
最後の一匹まで狩り尽くすと、ケイティは空中で止まり魔力探知を始める。ケイティの魔力探知は広範囲だが拾える魔力に制限があるものと、局所的だが全ての魔力を拾えるものの2種類ある。今回は広範囲の魔法を使ったらしく、親の敵でも見るような目で魔力反応があった方角を見つめ、高速で飛んでいってしまった。
N「アイツ何する気だ…?」
B「さぁ…?天使の拠点を潰すとか?」
急に天使の警報が鳴り出し、ケイティが窓をぶち破って飛びながら天使を殲滅していく様子を見た貴族達は口々に「あれは化け物だ」と言っていた。
ルカスも魔法使いとは聞いていたがここまで凄まじい威力の魔法を使うとは思っておらず、ただ呆然と天使を狩るケイティの様子を見ていた。
ケイティは魔力反応があった北の方角へ高速で飛んで移動していた。雪がちらつき始め、雪が地面を覆うようになって、やっと魔力反応の中心にたどり着いた。「古の塔」と言われる塔から大量の天使と、天使だけれども魔力の波動が違う何かが居る。そして、この塔を粉々に粉砕してしまえば天使は滅びるはずだ。ケイティは自分の直感を信じて、爆破魔法の陣を下から上までびっしりと並べて離れた。すると、一番下の魔法陣から爆発が起こり、上の魔法陣に引火して連続した爆発が続く。
爆発が収まる頃には古の塔は粉々になっており、跡形もなく消え去ってしまった。
K「はぁ、はぁ、っ、はぁ…これで…天使はもう…来ないんだよね…?」
念のためもう一度魔力探知をしてみても、天使の反応はない。恐らくもう天使が人々を襲うことはないだろう。ケイティはなんて簡単な解決方法だったのだろう!と高笑いして、そういえばルカスを置き去りにしてきてしまったことを思い出した。ルカスでしか味わえない少し低めの体温と柔らかい胸の感触、そして落ち着いたルカスのイメージよりも速めな脈拍。それらが急に恋しくなる。早くグロバナー家に戻ってルカスに抱きしめてもらって、優しく撫でてほしい。ケイティはまた全速力で空を飛んでグロバナー家に戻った。
ぶち破った窓からグロバナー家の会議室に戻ると、貴族達は化け物を見るような目でケイティを見た。ルカスでさえも、前のように優しく甘やかしてくれる様子を見せず、おかえりも言ってくれなかった。
K「天使達は全部消した。拠点になっていた北の塔も破壊してきたから、多分もう天使は来ない…はず。私よくやったでしょ?褒めてよルカス」
🍷「え…えっと……」
ざわつく会議室の中で、ルカスは前のようにハグしていいものかという疑問が浮かんでいた。このケイティは天使を滅ぼせるほどの力を持った魔法使い。それを子供扱いして甘やかすのは…気が乗らない。ルカスはどうしたら良いものかと悩んで、とりあえずドヤ顔のケイティの頭を撫でてやった。
「悪魔執事の主は化け物だ!天使がいなくなったのなら即刻処刑を!」
K「処刑しても何日かで復活できますよ?」
「ならば執事達を処刑するんだ!」
K「私がそれを許すとでも?」
「いや、悪魔執事はまだ使える…貴族に「奉仕」させるのはどうだ?」
「それはいい!悪魔執事は顔だけはいいからな!」
K「……奉仕?」
ケイティが冷静にあちこちから飛んでくる貴族達の声に答えていると、「奉仕」というワードが飛び交い執事達の未来が決まりかけていた。
K「ねぇルカス、「奉仕」ってどんなこと?嫌なこと?」
🍷「それは……主様には言えません。ですが、貴族達は下衆の極みだということだけお伝えしておきます。我々を玩具のように考えているのですから」
🎩「とにかく、天使という脅威は去った。これからのことはゆっくり話し合いをしよう。悪魔執事とその主よ、また貴族を集める会議をするのでまた通達を出す。その時にどうするか決める」
🍷「かしこまりました。では、帰りましょうか、主様」
ルカスはケイティの手を取って足早に会議室を去って馬車に乗り込んだ。その間ケイティが歩くのが早いとかどうしたの?と声を掛けてもルカスは答えてくれなかった。ふてくされたケイティは馬車に乗るとルカスの向かいの座面に座って足を組んだ。
K「……ん?これって記録宝珠?なんでこんなところに…お兄ちゃん達の仕業かな…壊しとこ」
ケイティが馬車の揺れで足元に転がってきた記録宝珠を指先で潰して割った。それだけでもルカスはビクッと飛び上がり、ケイティを恐れていることは嫌というほど分かった。ケイティはもうルカスは甘やかしてくれなさそうだから、ミヤジのところに行ってルカスの愚痴を言いながら慰めてもらおうと考えていた。
K「ただいま〜!ミヤジ聞いてよ、ルカスが冷たくなっちゃったの。だからハグして慰めて〜」
🕯️「おやおや…ルカスが冷たくなっただなんて珍しいこともあるものだね。いいよ。おいで」
ミヤジは胸に飛び込んでくるケイティを受け止めて優しく撫でてやる。それだけでケイティは嬉しそうにまた、ぐへへ、と笑っていた。
🕯️「それで、ルカスが冷たくなった原因に心当たりはあるのかな?街から逃げ出して化け物が居ると訴えていた人達が居たから、それに関係しているのかな?」
K「そうなの。急に降ってきた天使を全部消して、拠点になってる北の塔を破壊してきたんだけど、それが怖かったみたい…。私間違ったことしちゃったかな?それに貴族達が…なんだっけ…「奉仕」?させるって言ってて、ルカスがそれから口を利いてくれなっちゃったの…。ミヤジ、「奉仕」って何するの?ルカスは私には言えないって…」
🕯️「……天使を消すために街1つを破壊した化け物というのは主様のことだったんだね?」
K「天使に気を取られて…。街を壊すつもりはなかったの!本当だよ!」
🕯️「うん、主様はわざと街を壊すような子じゃないことは分かっているよ。……でもね、あまりにも強すぎる力は、大勢の人から恐れられて迫害されることになる可能性だってあるってことは覚えていてほしいな」
ミヤジはケイティを抱きしめたまま赤子をあやすように背中をトントンしながら言い聞かせる。
その優しい手のおかげで、ケイティのルカスから無視された悲しさや、貴族達や街の人達に化け物だと恐れられた情けなさが和らいでいく。ケイティはもっと、と言うようにミヤジを抱きしめ返そうとする。
しかし、ケイティのその手がミヤジの背中に届く前に、ミヤジはケイティの肩を掴んで引き剥がした。
K「ミヤジ…?」
何が起こったのか頭で処理しきれなかったケイティは、ミヤジにまで嫌われてしまったのかと思って目に涙を浮かべて、視線を落としたミヤジの辛そうな表情を見ることしかできなかった。
🕯️「……主様、1つ確認したいんだ。貴族達は本当に私達に「奉仕」を求めたのかい?「処刑」ではなく?」
K「え?えっと…最初は「処刑しろ」って言ってたけど、「私がそれを許すとでも?」って言ったら「じゃあ奉仕させよう」ってなったの。「奉仕」ってことは、死ななくていいんだよね?皆ずっと私の側に居てくれるんだよね?」
🕯️「主様、貴族達が望む「奉仕」というのは…その…今までのように色々な街や国に行って依頼をこなすことじゃないんだ。むしろ、呼び出しがあるまでパレスから出られなくなるかもしれない…」
K「……?」
ケイティが首を傾げると、ミヤジは何度か深呼吸をしてから話を続ける。
🕯️「つまりはね…貴族達は私達を性処理に使おうと目論んでいるんだよ…。私達のような年増はともかく…若い執事達はまだ20代だからね、需要が高いんだろう。……昔から依頼と共に「奉仕」をしないかという打診は何度もあったんだ。その度にルカスがあれこれ手を回して有耶無耶にしていたんだけど…今回はもう天使狩りをするという言い訳も使えない…。今度の会議で「奉仕」が決定したら…私達は永遠に貴族達に、好きな時に好きなだけ抱ける…都合のいい性奴隷にされるんだよ…。主様…。主様を責めたいわけじゃないんだ。…だけど、自分のしたことでどんな風に周りの人間が反応するか、貴族達がどう思うか…それを考えて行動して欲しかった…」
ミヤジは唇を噛み締めて、震える手でケイティの肩を掴んでいた。ケイティは優しくて大好きなミヤジにこんな顔をさせたかったわけでもなく、ルカスに嫌われるようなことをしたかったわけでもなかったのに、どうして…と自分を責めた。ケイティが天使を狩り尽くし、もう二度と現れなくなるように塔を破壊したのは、全部執事達の幸せを祈ってのことだったのに、結果としてこれからの人生を大きく歪めてしまうこととなってしまった。責任を取ろうにも、ケイティにできることなど破壊の限りを尽くすことくらい。
……ん?破壊の限りを尽くすことくらい?それなら、あの嫌な貴族達も、ケイティを化け物だと言って迫害しようとしている町人達も、全て消し飛ばしてしまえば…。いや、ダメだ。そんなことをしたらインフラも何もかもが機能しなくなってパレスで暮らすことすらできなくなってしまう。
けれど、パレスにそこまでこだわる必要はあるのだろうか?執事達19人とケイティ達3人が一緒に暮らせて、貴族達から虐められない、そんな場所で暮らせたら理想的なのではないか?そうであるならば…
そこまで考えてケイティはくっくっく…と笑い始める。
🕯️「…?あ、主様…?」
K「くっくっく…あははははははは!そうだよ!もうこんな世界捨てて皆で幸せに暮らせる世界に行っちゃえばいいんだよ!」
🕯️「あ、主様!?それはどういう…あっ」
ケイティは疑問を口にしかけたミヤジの手を振り落とすと、高笑いしながら地下から地上に出ていく足音がして、玄関ドアが乱暴に閉められた音が響いてきた。ミヤジはいきなり笑い出して外に駆け出していったケイティは、一体何を考えているのだろうかと不安になった。
K「さっきの貴族達の魔力は覚えてる。1人も残さず消してやる…!……ふーん、まだあの会議室に居るんだ。暇なのかな?まぁいいや、いちいち探す手間が省けるのは嬉しいことだよね」
ケイティは高高度を高速で一直線に飛んでいく。目的地は執事達の尊厳を踏みにじろうとした貴族たちが集まるグロバナー家。ケイティは上空で邪魔くさいローブを脱ぎ捨て、より確実に貴族達を殺せるように細切れにしたローブから単発銃を作り出した。その銃もケイティの移動と共に高速でグロバナー家の屋敷に向かっていく。
K「…着いた!」
ケイティは上空からグロバナー家の屋敷と庭を確認すると、そこで停止する。そして、綺麗に弾幕を張る準備をするべく並んだ単発銃をちらりと見やって口元を歪ませる。
K「爆裂術式用意!!」
そう叫ぶと、単発銃の銃口に次々と魔法陣が現れる。全ての銃口に魔法陣がついたことを確認すると、ケイティは目標となるグロバナー家の屋敷を指さし、叫んだ。
K「てーーー!!!」
バババババババババン!
それを合図に単発銃が次々と発砲して、衝撃で塵となって消えていく。最初の弾がグロバナー家の屋敷に当たった瞬間、周辺の魔力が集約される低い音が響いて、小さな光がキラキラと輝いた。その瞬間、グロバナー家から半径5キロほどの広範囲に大爆発が起こって、どおおん!と地響きが鳴る。しかし、それだけでは終わらない。次々と着弾する弾が壊し尽くした屋敷跡地にさらなる爆撃を行い、屋敷跡地は大きなクレーターができていた。
K「ふふ、これなら誰も逃がしてないよね。一応魔力反応探っとくか…。………うん、大丈夫」
ケイティは死体すら残らなかった貴族達に、ざまぁみろ、と吐き捨てて楽しそうに笑いながらパレスに戻った。
🫖「あ!主様!よかった、さっきグロバナー家付近で爆破テロが起こったと放送があったのです。巻き込まれなくて本当によかった…」
珍しくベリアンは自発的にケイティを抱きしめ、無事を確認してほろほろと涙を流した。
そこに地下から上がってきたミヤジも合流する。
🕯️「主様…こんなことは言いたくないんだが……主様がやったのかい?」
その言葉にベリアンは泣いていたのも忘れるほど驚いて、ミヤジから守るようにケイティを自分の影に入れる。
🫖「ミヤジさん…どうして主様を疑うのですか?確かに主様は普通ではないのかもしれません。ですが無差別に人を殺すほどのことはするはず…ない…ですよね?」
ベリアンが助けを求めるように兄弟に視線をやると、兄弟はやれやれといった様子で首を横に振る。
N「執事達のことを気に入ってるからって、不幸にする原因を爆破して解決するだなんて力技が過ぎるだろ。もしお前がやったって言う目撃者が居たら、もう執事達はこの世界で生きていけないぞ?」
K「そこは大丈夫!私は直接手を下したわけじゃないもん。それに、普通の人間が目視できないくらいの上空から爆破したから目撃者は居ないよ」
B「だからって、邪魔な貴族達を全員殺すだなんて極端すぎるよ。これで責任を執事さん達に被せられたらどうするつもりなの?」
K「爆破する前からお屋敷で暮らしてもらうことにするって決めてたから、責任ふっかけられる前に全員で逃げちゃえばいいんだよ!」
兄弟は揃って溜息を吐いた。そこまで見据えた上で貴族達を殲滅したのなら筋は通る。でも、この世界の家族や親戚、大事な故郷、育てた子供達、愛着のある屋敷、親友の墓…それらを全て捨てて新しい生活を始めろと言うのはちょっと酷すぎる気がする。とはいっても、パレスでこのまま暮らすのは危険だということも一理ある。主要な貴族達が消えたのだから、国内紛争やらお家騒動なんかに巻き込まれる可能性が高い。それならばケイティの庇護下にある屋敷の欠片で各々好きに過ごしてもらうほうが安全で自由の保障ができる。兄弟はケイティの強い意志にどう対応したら良いのかと頭を抱えた。
🫖「主様、お屋敷に逃げるというと…どこのお屋敷になるのですか?私達全員が雲隠れできるくらい遠くて大きなお屋敷なのですか?」
K「そうだよ!私が魔法で作ったお屋敷だからどこの世界にも属してない、私とお兄ちゃん達と数少ない友達しか知らない、広い広いお屋敷なの!勿論異世界で好きなことができるように移動するためのアクセサリーも作ってあげるし、どの世界にもお金は腐るほどあるから豪遊できるし、私の庇護下にあるって言えば大抵の世界でVIP扱いだし、悪いことはないよ?もう貴族達にこき使われることもなければ、街の人達から白い目で見られることもない!皆好きなことを好きなだけやれるし、この世界に一時的に戻ることも特別に許してあげる。ここまで譲歩してるんだから、皆納得してくれるよね?」
ベリアンはケイティから離れて事情を知っていそうなミヤジとどうしたらいいのか相談を始める。
🫖「ミヤジさん…主様のお屋敷に逃げること…どう思いますか?」
🕯️「そうだね…もし、主様が貴族達を殺したと知られたら…私達は確実に責任を取らされる。主様が言っていることも間違ってはいないと思う…。けれど、皆この世界にもこの屋敷にも思い入れはあるよね。この世界でやりたいことを制限されてしまうというのは…ちょっとね…」
🫖「そうですよね…。でも、私達の上に立つ貴族達が消えて…これからきっと大騒動になります。それに巻き込まれて仲間を失うのは避けたいのです。私の我儘かもしれませんが、私は…私は、逃げられるのなら逃げたいのです…。だって、もういいでしょう?天使狩りも必要なくなって、私達の存在意義はもうありませんし、必死で戦っていても忌み嫌われて…。大切な皆さんが…絶望を経験して悪魔と契約までした皆さんが、幸せになってもいいのではないでしょうか…」
🕯️「ベリアン…。まぁ…確かにもう戦う必要もなくなった。上の貴族達はこれから大揉め…本来ならばこれは私達の問題になることはないんだけど、きっと紛争になって私達を使って相手を殺そうとする貴族達が居るだろうね。それよりは主様のお屋敷で隠居生活を楽しみたい…私もそう思うよ。でも、他の執事達の意見も聞かないといけないだろうね。今ここで決められる案件ではないよ」
🫖「はい…。もうすぐ夕飯ですから、その時に全員集まるように声をかけましょうか」
N「その間に未来の可能性を見て統計を取ろうぜ。本当に逃げなきゃまずいのか、確認しねぇと」
B「そうだね。キティ、それくらいはやってくれるよね?勝手に行動した分の償いくらいはしてよね」
K「分かったよ…」
3人は一足早く食堂に入って未来の可能性を高速で見て回って統計を取り、どうしたら執事達が一番自由で快適に暮らせる可能性が高いのかを調べた。
食堂に全員が集合すると、兄弟がケイティがやらかしてくれたことと、未来の可能性を見たところ屋敷に避難するのが安牌だということを説明した。勿論ケイティには好きな時にパレスに戻ってこられるように異世界を繋ぐ通路は作らせること、ケイティの金は好きに使っていいことも付け加えた。
🍷「ふむ…貴族達の争いに巻き込まれるのは避けたいところですね。皆の安全を考えたら移住を検討したほうが良いのでしょうか…」
🌟「ボクは引っ越ししたいです〜!!好きなだけ遊べて、訓練もしなくていいんですよね!?」
🔑「確かに貴族達の言動は美しくはありませんでした。今までも…きっとこれからも。また下衆な要求に対応し続けるのも骨が折れますし、拠点を移して雲隠れするというのは1つの手段としてはアリかと」
🌹「でもここまで作って、毎日手入れをしてる庭から離れるのはちょっと寂しいっす。帰ったら雑草だらけとか、まるで廃墟になったみたいになるじゃないっすか?」
🦾「合法でサボれるようになるなら移住してもいい」
🦋「えーっと…図書館が近くにあるなら…ちょっと心が揺れちゃいますね」
✝️「だが、施設管理の仕事も訓練もしなくていいとなると俺はやることがなくなってしまう…。それに耐えられるかと言われると、自信がないな…」
🫖「ミヤジさんにはお伝えしましたが、私はもうこの世界に未練はありません。たまにここに帰ってこられるならそれで十分です」
🍽️「俺は…うーん…街で料理を配ったりするときだけこっちに来られれば、移住してもいいかなって思うけど…やっぱり使い慣れた厨房から離れるのは寂しいかもな」
⚔️「ジェシカの墓参りに戻ってこられるなら俺は移住に賛成だ。ところで、馬も連れていけるのか?それによってまた意見が変わるかもしれない」
🕯️「私は…もう貴族達に振り回されるのはやめたい。移住する方向で考えたいと思っているよ」
🪡「俺は…うーん…仕事道具さえ持っていけるなら移住してもいいかなって感じかなぁ」
❤️🩹「主様と一緒に居られるならどっちでも構いません」
💮「合法でサボれるのは魅力的だよな。しかも主様の金で酒もギャンブルもやり放題なら移住しちゃおっかなぁ」
☔「本当にパレスに好きなタイミングで戻れるのですよね?それならば私は安全なほうを選びます」
🧸「俺はもうこの世界に未練はありません。元々俺は死んだことになってるんですから…」
🐾「たまにパレスに帰ってこられるなら俺は移住したいかな。貴族達にあれこれ言われるの、ちょっと嫌だったんだよね」
🤍「完全に渓谷の民達を捨てろと言われたら反発しただろうが、そうでないならば移住してもよい」
🐦⬛「移住ねぇ…。オレはファミリーのところに戻ってもいいけど、拠点が増えるのはありがたいかもしれないね。雲隠れにちょうどいい場所ならなおさら」
19人はそれぞれ不安や希望や貴族達への恨みなどを吐き出し、半数以上は移住に前向きであった。
N「一応、移住した未来と、移住しなかった未来を見せるから、それで判断してもいい」
B「勿論、確率が一番高い未来ってだけで、皆の行動次第でちょっとずつ変わっていくだろうけど」
K「じゃあ映すね。見づらかったら動いてね」
ケイティが大きな鏡を出現させて、表面をちょんとつついた。すると、波紋が広がって見知らぬ屋敷に戸惑う執事達の様子が映った。
K「これが移住した場合ね。全員に広い個室をあげることになるから戸惑っちゃうみたい。あ、馬も連れていけるからね」
そして、ハウレスが心配していた「やることがなくなる」という不安については、魔物を狩って報酬をもらっている2階組の様子を見せて解消した。働かされていることに舌打ちしたボスキだったが、街の人達から一目置かれて店ではVIP対応してもらえることを知って不機嫌が直った。
ケイティは厨房や庭はパレスを再現するから寂しく感じる必要はないことまで見せた。
K「大体皆の不安は潰せたかな?次は移住しなかった場合ね」
ケイティが鏡の表面を下から上へなぞると、場面が切り替わった。
🔑「はぁ…どれもこれも貴族の暗殺の依頼ですね」
🍷「しかも短い期間でこれだけの数をこなさないといけない。フィンレイ様の後釜がすぐに決まったことは嬉しいけど、自分に反抗的な貴族をことごとく消そうとするだなんてね」
K「人殺すの?なら建物ごと燃やしたり吹き飛ばしたりしてあげようか?不幸な事故ってことで証拠隠滅もしなくていいし」
🌟「まぁ確かに証拠隠滅までやれって言われてるから面倒ではあるけど、主様が全部やってたらボク達がいらない子扱いされそうでそれもヤだなぁ…」
🫖「最悪貴族の暗殺が済んだら、全ての罪を私達に被せて処刑…と考えている可能性もありますし…」
✝️「フィンレイ様の後釜が何を考えているのか分かりませんね…。全ての依頼をこなして反抗的な貴族が居なくなったら…もしかしたら独裁国家になるかもしれません。それを狙って…?」
🕯️「とりあえず、我々が殺人集団だと吊るし上げられないようにするために証拠隠滅だけは手を抜いてはいけないということだね…」
💮「はぁ…また人殺しか…。もうやめたつもりだったんだけどな…」
🐾「自分の手を汚したくないって執事も居るだろうし、実行役と証拠隠滅役とを分けたほうがいいかもね。でも、ありがたいことにクロウザーのファミリーが手伝ってくれるって言ってるから、プロの指導は受けられるよ」
🌟「えー…なんか厳しそうでヤだ〜…」
そこには3階組と室長たちが大量に届いた依頼の手紙を囲んで話し合っている姿があった。ケイティはだらっと立っているラムリの顎置きになっているが、もうそれを咎める余裕もないのだろう。室長とナックは真剣に話し合い、過密なスケジュールを組んでいく。
🔑「ラムリ、貴女にもちゃんと働いてもらいますからね?サボったり手を抜いたりしたら文字通り命の危険があるのですから、真剣にしなさい。いいですね!?」
🌟「うっざ…あ、そうだ!ボクの仕事の時だけ主様に頼っちゃおうかな。そしたら証拠隠滅もいらないんでしょ?屋敷ごと吹き飛ばしちゃえば確実に殺せるし〜。そうだよね、主様?」
K「そうだよ、ラムリ。ラムリは手を抜く塩梅が上手だね。ねぇ、それくらいならいいでしょ?」
🍷「ラムリちゃん、これは私達の仕事なんだから主様に頼るのは最終手段だよ?」
🕯️「もし主様が危険な力を持っていると知られたら、どうなるか分かるだろう?」
🫖「主様の手を汚させるだなんて、許されません。もう一度汚していらっしゃいますが…」
K「一度どころかめちゃくちゃ殺しまくって生きてきたから、そのくらいの貴族を消すくらいなら誤差だよ、誤差」
✝️「しかし、俺達にもプライドというものがあります。全部主様に頼るべきではないかと」
💮「まぁ…気持ちは分からなくはないけどな。俺も殺しすぎて数すら覚えてねぇからな」
🐾「でも、まさか人殺しで食べていかないといけなくなるなんてね…。まだ信じられないよ」
重苦しくて、誰も笑顔など作れない空気。その中で「どうやって殺そうかな〜」とケイティは楽しそうだった。
K「どうだった?まぁ移住はいつでもできるから、いつ移住するかは皆に任せるよ。好きな時に引っ越してきてくれたらいい。寝る場所だけ私の屋敷にする、みたいな両方の世界を利用する方法もあるしね。持っていきたい家具とか動物とかは言ってくれたら運ぶから、いつでも声掛けてね。待ってるから」
そう言ってケイティは鏡を消して食事を始める。
執事達は、引っ越したほうが楽しいし、こっちの世界にもいつでも帰ってこられるなら、とケイティの引っ越し案に賛成する者と、どうしてもプライドが邪魔したり、家族や故郷を捨てるのを躊躇って、引っ越しに前向きになれない者とに分かれてしまった。
🤍「人殺しで生きるなど畜生と変わらん。我はもう渓谷に帰る。残りの執事達でどうするか決めろ」
🐦⬛「オレも貴族達の情報がかなり変わってしまったから混乱しているであろうファミリーを支えたい。オレも実家に帰らせてもらうよ」
シロとクロウザーはどちらの未来も拒否して、実家に帰ると決めてしまったらしい。
K「えー…帰っちゃうの?まぁでも気が変わったらいつでもウェルカムだからね、気長に待ってるよ。今生きてる人間が居なくなったら「もういいや」ってなるかもだし〜」
それでもケイティはまだ全員を連れて引っ越すことは諦めないらしい。短気なところがある癖に変なところで粘り強いケイティの性格を知っている兄弟はまたか、と溜息を吐いて考えることを放棄した。あとは執事達が決めることだ。兄弟に何か言えることなどない。
🌟「ボクはすぐ主様のお屋敷に行きたいです〜!ルカス様にちょくちょく会いに来られるなら、仕事もしなくていいし好きなことだけやれる所にがいいなぁって。うるさいナックも居ないし…」
🔑「ラムリ…貴女という人は…。もういいです、貴女なんか居なくても屋敷は回りますからね」
🍷「まぁまぁ、喧嘩しなくてもいいじゃないか。私は一度図書館の本のラインナップを確認するだけしてから戻って、皆がどうするかで決めようかな」
3階組はバラバラな意見になってしまって、完全に崩壊してしまった。皆が自由すぎる故だった。
🦋「俺は…俺は人殺しなんてできないよ…。そんな依頼しか来なくなる未来なんて嫌だ…。怖い…。主様のお屋敷に居れば依頼なんて関係なくなるんですよね?俺は…逃げたいです…何もかもから…」
🦾「俺は必要とあらば人殺ししてでも生き残る。でも楽できるならそれに越したことないだろ?それにアモンは人を殺せる質じゃねぇ。髪のケアのためにはアモンが必要だから、一緒に居てやるよ。アモンが引っ越したいタイミングで俺も引っ越す」
🌹「ボスキさん…。オレは…確かに人を殺せる質じゃないっす。武器も鞭っすからね…。でも、今すぐに逃げるのも…。証拠隠滅役が嫌になるまでは…こっちに居たいっす…とりあえずは…」
✝️「お前達…。そうか…。俺は最後まで残る。リーダーとして最後まで責任は果たさないといけないからな。例え人殺しの依頼しか来ないとしても、完璧にこなしていけばそのうち…。いや、ここからは希望的観測か…」
2階組はいざとなったらお屋敷に逃げるという方針で固まっているようだが、ハウレスだけは最後まで残るつもりのようだ。
🫖「人殺し…この手を血で染めなくてはいけないのですか…。いえ、私はもう沢山の助けられたかもしれない仲間達を殺してきました。もう既に私の手は血塗れです。…でも…逃げたい気持ちもあって…でも、このパレスから離れるのは嫌で…どうしたら…」
🍽️「どっちにも同じキッチンがあって、行き来できて、違うのは依頼を受けるかどうかだけか…。いけ好かない貴族達をぶち殺すのは…最初は楽しいかもしれねぇけど、多分長いことはできないな…。殺す奴にも親兄弟、子供が居るって考えたら…殺せないかもしれない…。俺も逃げます。だからベリアンさんも…!」
⚔️「人を殺すのは別に構わない。でも、そこに正義がないなら、貴族の都合だけで人を殺すなら、俺は悪事の片棒を担ぐつもりはない。ジェシカの墓参りさえできればこの世界に未練はない。迷っているなら一度移住してから考えてもいいんじゃないか?」
1階組は移住に前向きなようだ。というよりは、人殺しに対する嫌悪感から逃げ出したいと気持ちが強いようにも見える。
🪡「俺は…人を殺すなんてできないよ…。人を殺して食べていく未来しかないなら、俺は逃げたい…」
❤️🩹「私は主様と一緒に居たいです。フルーレも来てくれるなら引っ越しも楽しそうですから、やってみたいです。ミヤジ先生もどうですか?お引っ越し、楽しいと思いませんか?」
🕯️「ラトちゃん…ふっ、そうだね…。そのくらい軽く考えられたら楽しいかもしれないね。…でも、私にはそんなに簡単に決められることじゃないんだ。医者が人を殺していいのかという倫理的な問題もあるから、そのうち引っ越すことになるかもしれないね」
地下組はラトのマイペースさとフルーレの怖がりとミヤジの責任を取らなくてはいけない立場なのが合わさって3人が一気に移住すると決定はしなかったが、いつかは移住しそうな雰囲気になっている。
☔「主様のためであれば人殺しをしてでも生き残る…と意気込むところですが、今回はもう逃げ道は確保されていて、人殺しをしても主様には何のメリットもない…。それならば私は移住して主様が快適に暮らせるお手伝いをしたいです」
🧸「俺は…一応家族は居ますけど俺は死んだことになってますし、帰ったところで…。だけど、人殺しを生業にして生きていくのは違うなって思うんです。そうなるともう引っ越すしかない…ですよね?引っ越した先で誰かの役に立てることができるなら、それが俺のラッキーかなって思うんです」
💮「俺は人殺しなんか飽きるほどしてきた。だから殺すことに抵抗はないんだけど…でも、殺したところで誰も幸せになれないなら、殺す意味がないと思うんだよね。無駄な殺生はしたくない。それに、酒もギャンブルもやり放題ならそっちに飛びつくだろ」
別邸1階組は早々に引っ越すつもりらしい。たまにパレスに戻って家族や子供達に会えるなら、危険な仕事をするより自分の幸せを優先してもいいのではないかという雰囲気だ。
🐾「俺はベリアンが引っ越すタイミングまで待つよ。俺は一応ベリアンの兄みたいな立場だったからね、最後まで格好つけさせてほしいんだ。それに、辛い思いをしているベリアンを1人になんてできないよね」
🤍「フン…物好きだな」
🐦⬛「でも、家族を想う気持ちは変わらないんじゃないかな?」
別邸2階組はそれぞれの家族のために動くことにしたらしい。それぞれの行くところは違えど仲間なんだなと再認識させられる。やはりこの3人も含めなくては悪魔執事は完成しない。ケイティはやっぱり実家に帰る2人もいつかはお屋敷に迎え入れたいと考える。何十年、何百年かかってもいい。いつか、帰る場所に自分の側を選んで欲しい、と願った。
K「なぁんだ、結局全員揃っちゃったじゃ〜ん!」
源泉かけ流しの温泉に浸かりながらケイティは浴室全体に木霊する笑い声を上げた。最後の1人が屋敷の敷居を跨いだのだ。魔力反応を見る限り、引っ越すつもりで大量の荷物を持っている。
これで欲しいものは全てケイティの手の中に。
勿論、異世界で魔物狩りなどに行っている執事達も居るが、拠点はこのお屋敷。宿屋に泊まる金がもったいないのと、バスティンやテディは食費がかなり嵩むので節約したいというのが主な理由だ。
やはりいつでもどこでもお屋敷に戻れる魔法陣を描き込んだ指輪を渡しておいて正解だった。
何千年でも待つつもりでいたが、思っていたよりも早く全員が集まってケイティは嬉しそうに笑った。そして、隣で静かに温泉を楽しむベリアンの胸に顔を埋めようとして頭を叩かれたのだった。
コメント
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番外編で女体化という大胆設定、めっちゃ面白かったよ!笑 ベリアンが真面目に距離感指導しようとしてるのに、他の執事たちが次々ケイティに絆されちゃうのが可愛すぎるw 「主様は危険なんですよ?」って言いながら皆ハグしちゃうの、もう完全に負けてるじゃん!そしてまさかの展開で街ごと破壊して貴族を殲滅するカタルシスよ…!でもその後の執事たち一人ひとりの葛藤と決断が丁寧に描かれてて、全員が屋敷に揃ったシーンはじんわりきたよ。 最後にベリアンに叩かれるオチも含めて、コメディと重さのバランスが絶妙だったわ🔥 続き楽しみにしてる!