絵斗視点
どれほど月日が経っただろうか。
行方不明になった弟を探したあの日。
親友だった彼奴が、殺人鬼のようになっていたあの時から。
一緒に呂戌太を探したあの子達や呂戌太は、あの日の記憶がないようで
彼奴のことを、覚えていなかった。
「会いたいのになぁ….」
叶わない願いは青い空に溶けていった。
俺は今日も春を待つ。
大視点
退屈な日々を、僕は送る。
退屈で、退屈で仕方ない。
何故?
何かが足りない。
青いニット帽で、嫁バカで、面白い…
大「あれ?」
涙が頬を伝う。
何かを忘れている。
だが思い出せない。
あの人は、誰だっけ。
「….会いたい」
そう呟いた言葉は、涙に掻き消された。
僕は今日も春を待つ。
孝行視点
今日も人を羨む。
俺の家庭は、親というものがなかった
それ故に、俺には家族というものが分からない。
俺には、友達がいて幸せだった。
筈なのに
誰かを忘れている。
俺のことを気にかけてくれていた
あの人は
「誰やったっけ…..」
何かを忘れた日常。
俺は今日も春を待つ。
豚平視点
ただただ、空を眺める。
流れる雲を眺めながら、ふと思う。
あの人がいない。
だけれど、俺達は全員いる
足りない筈などないのに
誰かを忘れている。
少し意地悪でも、話していれば楽しくて….
「あの先生は….」
優しかったあの人を想う。
俺は今日も春を待つ。
呂戌太視点
俺は覚えてる
あの日、あの時のことを鮮明に。
皆は忘れているのだろうか
絵斗兄さんはあの時の俺を覚えてない。
覚えていなくていいのだ。
皆は何も知らないでいて
あの人のことを覚えてるのは俺と彼奴だけ。
俺達は何時迄もあの日のことが
頭に刻まれている。
「こんな苦しい思いするのは、俺達だけで充分や」
出来れば、彼奴にも忘れていて欲しかった。
だけど、それが叶わないこの世界で真実を知るのは二人だけ。
俺は今日も春を待つ。
希視点
俺は、彼奴を想いながら、屋上に立つ。
今すぐにでも落ちてしまいそうで。
きっと、俺達は真実を隠しながら生きていくのだろう
そう考えながら空を眺める。
面白くて嫁バカで、優しくて人気の彼奴は帰ってこない。
だけど、俺は知っているんや
彼奴が帰ってくる方法を。
バンッ
「希っ…!!!」
「….呂戌太」
希「知ってるんやで」
希「彼奴が帰ってくる方法を」
呂「ッ…」
希「呂戌太も知ってるんやろ?」
桃太郎伝説
願い事を叶えることができる
ただし、一人と引き換えに。
皆は知らないんや、だから
希「俺が、やるしかないんや」
呂「希….」
呂「お願いやから、そんな事しないでや」
希「でも」
呂「でもやない!!!」
呂「お前までいなくなったらどうすんねん!!」
希「っ….」
呂「お願いやから….」
呂「自分を犠牲にしようとするのはやめてや….」
希「….先生」
ひらりと桜の花びらが空を舞う。
きっと、この先も
コメント
11件
設定だいすけ もう希も呂戊太もなんか悲しい…
あ゛泣いちゃった〜… 呂戊太も猿も鬼になっとるから…
悲しい終わり方だ…