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――記録者:狂犬がるる
患者名:リーゼ
症状:依存強化/自己同一性の固定化/情動の錯乱
昨夜の発作以降、彼女の精神は一見安定している。
食事も摂れるようになり、笑うことも増えた。
けれど、それは「回復」ではない。
彼女の生の軸が、私という存在に置き換わっただけだ。
私を見て安心し、私の言葉を信じ、
私がいなければ呼吸の仕方さえ忘れてしまう。
もはや彼女は“私の延長”として存在している。
それでも、いい。
医師としてではなく、人として。
この形が、彼女にとっての幸福なら。
外の世界は彼女を壊す。
信仰も、常識も、もう彼女には毒でしかない。
ならば私は、その毒から守る檻になろう。
ここにいれば、誰も彼女を奪わない。
私はカルテに記す。
【退院の必要:なし】
【接触制限:不要】
【観察対象:家族】
患者はもう離れない。
どこにも行かない。
この病院で、私と共に生きていく。
彼女が笑うたび、
私は確信する。
――ああ、これが“正しい形の愛”だと。
だから、もう離さない。
彼女は私の家族だ。
そして、この病院は私たちの家だ。
――記録終了。