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願いを叶える桜の木<番外編>
【レイン視点】
ある時、俺はイーストンへと出向いた。
じじいから最近のマッシュ・バーンデットの様子を報告するようにと命じられてから毎週のように出向いている。
肝心のあいつは、俺に監視されているだなんて思ってもいないだろう。
じじいのとこに行こうとした時、フィンの隣にいるやつと目がガッツリ合った。
フィンの友達にあんな奴いたか?と、そいつの痣の形を見た時フッとアイツの顔がよぎった。
「…お前…マッシュか?」
そう俺が問いかけるとそいつはコクンと小さく頷いた。
驚いた、髪型だけでこうも変わるのか。
「僕がやってあげたんだ!なんでも、オシャレがしたいって」
俺がまじまじとマッシュを見ているとフィンがそう説明した。
オシャレか…好きなやつでもできたのか?と内心思った。
少し心がモヤっとしたような気がした。
(不整脈か?)
その後は素直にマッシュに
「そうか、似合っている」
そう口にした。
こいつの前だと素直になれる…なぜだ?
考えても答えは見えてこなかった。
じじいに、報告が終わり、まっすぐ帰ろうかと思った。
だが、そこへ
「このあと、大事な会議があるんじゃが、一緒に出席してくれんかのぉ」
と、馬鹿げたことを言ってきた。
だが、断るわけにもいかず、了承した。
会議は長引き、どうでもいいことを根掘り葉掘り聞かれた。
いい関係の人は居ないのか、うちの娘を紹介しよう
などと、どうでも良いことを聞かれ、腹が立った。
「すまないがもう帰らせてもらう」
そう言って会議室から出ていった。
廊下に出ると外は暗かった。
会議を終えてからの会話が再び頭の中をよぎり無性にイラついた。
俺が神覚者になってからずっとそうだった。
優秀な血を残したいのだろう。だから無理やりにでも結婚させ、子供を産ませる。
なんて汚いんだろう。
そんなことを考えていた時だ。
誰かの影が見えた。
(こんな時間に誰だ…?)
目をやるとそこに居たのはマッシュだった。
「レインくんみたい…」
マッシュは何を思ったのか俺の名前を口にした。
「何がだ?」
俺はマッシュに歩み寄った。
「…レインくん…なんでここに?もう遅い時間ですけど」
「少し会議が長引いてな…その後にどうでもいい話をグダグダと聞かされていたんだ」
思わずため息をついてしまった。
「大変ですね。」
マッシュは淡々と言った。
「まぁな…それでお前は何をやっている、
もうとっくに消灯時間はすぎているぞ。見逃してやるから部屋に戻れ」
風をひいては心配だ。とは言わず、マッシュにすぐに部屋に戻るよう言った。
「少し外の空気を吸いたくて、、それにまだここにいたいです。星がきれいなんです」
と、マッシュは空を見上げた。
「…」
俺は何を考えたのかマッシュの隣に腰掛けた。
「え、なんですか?」
マッシュは俺のその行動に驚いたのか、聞いてきた。
そんなの俺が知りたい。
「俺も星を見たくなった」
…らしくないことを言った。
こいつと居ると新しい自分が見えてくる。
不思議だ。
さっきまで荒れていた感情も今では穏やかになっていた。
心地いい、俺がそう思っていると、隣から
「綺麗…」
そう聞こえた。
「ああ、そうだな」
「え…」
「月が綺麗だな」
きっと月のことを言っていたのだろうと、自分で解釈し、返事をした。
そこで俺はマッシュが言っていた言葉を思い出した。
「そういえばお前、なんで俺みたいと言っていたんだ?」
「え…?…あぁ、その事ですか」
一瞬なんのことを聞かれたのか分からなかったのか、マッシュはフリーズしてしまった。
「えっと…月がレインくんみたいで…」
そう言われても全く分からなかった。
「?どこがだ?」
再び聞き返すとマッシュは
「そ、それは…髪が…半分が黒でもう半分が黄色だから、咄嗟にレインくんだなって」
そう指でさしながら説明してくれた。
「……そうか…」
俺の心臓がうるさかった。
(嬉しい…のか…?)
俺はマッシュの瞳を見つめ、ずっと思っていたことを言った。
「お前も月に似てるな」
マッシュは目を見開き、俺の方を見た。
「どこがですか?」
俺と同じく聞くマッシュに俺は
「月の黄色と、お前の瞳の色だ」
そう答えた。
その吸い込まれそうで抗えないような綺麗な瞳がすごく月のようだった。
少しの間沈黙が流れた。
するとマッシュがくすりと笑い、
「それじゃあ、お揃いですね」
そう、微笑んだ。
笑った。
マッシュが笑った。
こいつ、こんな顔が出来たのかと、目を見開いた。
「…?レインくん?どうしました?」
マッシュはあっけらかんとした俺の表情を見て、声をかけた。
「いや、大丈夫だ。」
ふと俺は昼間のマッシュを思い出した。
「…似合っているとは思ったが、こっちの方がいいな。」
そう言って俺はマッシュの頭を撫でた。
マッシュの髪は意外にサラサラで、触り心地が良かった。
すると、マッシュが
「…僕、もう戻ります。なんだか、寒いし」
「…そうか」
俺は撫でる手を止め、内心残念だと思いながらもマッシュを部屋に返した。
「あと、顔…熱いから…」
そう言ったマッシュの声は俺の耳には届かなかった。