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桜咲かな
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(言葉はいくらでも掛けてやれるが、やはり元を絶たないことにはエリスの心は癒えないだろう……時間を掛けて確実に奴らに制裁を加えてやりたいが……それだとエリスの心が持たない……早急に手を打つしかないか……)
ギルバートは考える。
どうすることが一番最善なのかを。
ギルバートにとって人一人を手に掛けることなど容易かった。
けれど、復讐というのはただ命を奪えばそれで良いというわけではない。
自分の過ちに気付かせるのは勿論のこと、死にたい殺して欲しいと思うくらいに辛い毎日を生きさせ、その中で罪を償わせることこそが最大の復讐だと思うのだ。
その為にはまず自らの罪を認めさせなければならない。
裏で小細工をするような輩が簡単に罪を認めるわけが無いと分かっているからこそ、ギルバートは悩んでいた。
(何にしても、失敗は出来ない。奴らの前に俺たちが姿を見せるその時は……)
「ギルバート、さん」
「!」
ふと、名前を呼ばれ我に返ったギルバートが目を開けると、そこには心配そうな表情を浮かべたエリスが居た。
「どうした?」
「いえ、その……目を覚ましたら、ギルバートさんが魘されているようでしたので……」
「俺が? ……そうか、悪かったな。大丈夫だ、問題無い」
「そうですか。それならば良かったです。あの、これ掛けてくださってありがとうございます」
目を覚まし、いつも通りのギルバートを前にしたエリスはホッとしたのか笑顔を浮かべながらブランケットを手にしてお礼を口にした。
「冷えるといけないからな。さてと、そろそろ帰るとするか。日が暮れると気温が急激に下がるから、それはそのまま羽織っておくといい」
「はい」
リュダに水を飲ませて帰り支度を済ませたギルバートはエリスと共にリュダに跨ると、薄暗くなっていく中をひたすら走らせていく。
「エリス、寒くは無いか?」
「はい、大丈夫です」
「そうか、何かあれば遠慮せずに言うんだぞ」
「はい」
時折エリスを気に掛け声を掛けるギルバート。
昼間とは違って日が落ちると急激に気温が下がり、風を切って走るリュダの上に乗っていると寒さを感じはするもののエリスの身体は少し火照っていた。
その理由としてブランケットを羽織っていることがあるものの、一番はギルバートがすぐ後ろに座り抱き締められている形になっているから。
勿論、リュダに乗る時はいつもそうだったのだけど、昼間のあのギルバートとのやり取りから彼に対する気持ちがエリスの中で少しずつ変わり始めていたのも原因だった。
「……何だか少し身体が熱いようだが……」
身体の火照りを指摘されたエリスは少し頬を赤らめると、
「た、多分、ブランケットを羽織っているのと、ギルバートさんの体温が温かいからですよ」
何かを誤魔化すように若干早口に言葉を紡ぐ。
「そうか? それならいいが」
「それよりも、ギルバートさんは寒くありませんか?」
「問題無い。この程度の気温ならば騒ぐことも無いからな」
「そうですか、それならば良かったです」
ギルバートとの会話の中でエリスの鼓動はどんどん速まっていき、そしてそれはこれまで感じたことの無い胸の高鳴りだった。
(私……どうしちゃったんだろう……)
自身の身体の変化に戸惑うエリスはまだ自分の気持ちの変化に気付いていなかった。
これまで恋愛をして来なかったから無理も無い。
異性に対しての『トキメキ』というものが分からないのだから。
そしてそれはギルバートも同じだった。
彼はある年齢の頃から環境が変わり、そこに『愛情』なるモノは存在せず、彼もまた恋愛とは無縁の世界を生きていたのだ。
だからエリスの戸惑いや心の変化にギルバートは気付かなった。
リュダを走らせてから暫く、後もう少しで自宅というところでギルバートはリュダを止めた。
「ギルバートさん、どうかしたんですか?」
何故突然止めたのか分からないエリスが尋ねると、それとほぼ同時に一羽の黒い鳥が二人の元へ飛んできた。
「……鳥?」
「ああ、コイツはヒューイと言って伝書鳩のような役割を担っている」
「そうなんですね」
ギルバートは驚くエリスに説明をしながら、ヒューイの足に付けられている紙を取り外して中身を確認した。
役目を終えたヒューイが何処かへ飛び去って行く中、その手紙を読むギルバートの表情は特に変わることが無いので、どんな内容なのかを想像することが出来ないエリスはただ静かに見守っていた。
そして、
「……済まなかったな。帰ろう」
「はい」
手紙を読み終わったギルバートはそれをポケットにしまうと再びリュダを走らせて家路を急いだ。
コメント
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読了!ギルバートの復讐への考え方、深いな…「死にたいくらい辛い日々を生きさせる」ってところに彼の執念というか信念を感じたわ。エリスの鼓動が速まる描写とか、恋愛経験ゼロ同士の二人がじわじわ近づいてく感じがもどかしくて良いね。最後の伝書鳩からの手紙、何が書いてあったのか気になって仕方ない!次話も楽しみにしてる🔥