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213
夜のしじまに包まれた小さな公園。ブランコの下に、ポツンと小さな影がうずくまっていました。5歳の女の子、LAN(ラン)です。
冷たい夜風が吹くたび、LANの小さな体はガタガタと震えます。薄汚れた半袖の服からは、見るのも痛々しい青アザや擦り傷が覗いていました。親からの容赦ない暴力の末、この寒い夜にそのまま捨てられてしまったのです。
「痛いよぉ……寒いよぉ、お母さん……」
声を出す気力もなく、LANはひたすら膝を抱えて涙を流していました。
そのとき、サッサッ、と公園の砂利を踏む足音が近づいてきました。
「……あーあ、なつ。お前が夜中に『アイス食いたい』とか言い出すからこんな時間に散歩する羽目になったんだぞ」
「だって食べた気分。お前も杏仁豆腐食いたいとかいったくせに」
夜の散歩を楽しんでいた2人
ふと、いるまが足をとめます。暗がりの中、ブランコの下で小さく丸まっているLANの姿が目に入ったのです。
「……ん? なんだあれ」
「あ、、、?怖いこと言うなよ」
ひまなつが驚いて駆け寄ると、そこには顔を腫らし、ボロボロの服を着たLANが力なく見上げていました。暗闇の中でもはっきりとわかる痛々しい傷跡に、二人は息をのむ。
「おい、大丈夫か……!?」
いるまは瞬時に察しました。この時間、この服装、そして体中の傷。
(……虐待、されて捨てられたのか)
「……っ!」
大人の姿を見て、再び暴力が始まると思ったLANは、体を固くして恐怖に怯えます。
「大丈夫やけえ。寒いだろ」
ひまなつは慌てて自分の羽織っていた上着を脱ぐと、LANの小さな肩をやさしく包み込みました。
そして、いるまはLANと同じ目線になるようにひざまずき、静かで温かい声をかけます。
「……もう大丈夫だ。よく耐えたな」
そう言って、いるまはLANを刺激しないよう、そっと優しく抱き上げました。LANの体は驚くほど軽くて、冷え切っていました。
「おい、なつ。アイスは後回しだ。すぐ家に戻って温かい湯を沸かすぞ。傷の手当てもしねぇと」
いるまの大きな腕の温もりと、ひまなつの優しい笑顔に触れ、LANの目からポロポロと大きな涙がこぼれ落ちます。
「……おじちゃん、たち……助けてくれるの……?」
「おじちゃんじゃなくて『いるま』な。……家まで長いから寝てていいぞ」
そう言って笑ういるまの胸の中で、LANは緊張の糸が切れたように、小さくうなずきながらそっと目を閉じました。劣悪な居場所を抜け出し、LANの新しい本当の温かい物語が、ここから始まろうとしていました。
家についたいるまは、抱きかかえていたLANをそっとリビングのソファに寝かせました。
「ただいまー! おい、みんなちょっと来てくれ!」
いるまの焦った声に、奥の部屋からぞろぞろと同居人の3人が顔を出します。
最年長のすち(25歳)、マイペースなみこと(23歳)、そして一番年下で弟気質のこさめ(22歳)。みんなでシェアハウスをして暮らしていたのです。
「ちょっといるまくん、夜中に大声出してどうしたの……って、えぇ!?」
一番にやってきたこさめが、ソファで怯えるLANを見て目を丸くしました。
「ちょっと、その子、どうしたのいるまくん」
すちが素早くLANのもとに駆け寄り、顔色を変えます。
「公園で捨てられててて、こいつ怪我ひどいから連れて来た」
なつが悔しそうに拳を握りしめながら説明すると、みことも静かに胸を痛めながらLANを見つめました。
「そんな……こんな小さな子に、」
「よし、落ちついて手当てしよう、救急箱持って来る!」
すちが手際よく動きます。看護師のように手慣れた様子で傷口を消毒し、優しく絆創膏を貼っていきました。
「痛くない……? ごめんね、もうすぐ終わるからね」
すちが優しく声をかけると、LANはコクリと小さくうなずきます。
こさめはキッチンへ走り、温かいココアをコップに淹れて戻ってきました。
「はいっ、温かいココアだよ! ふーふーして飲むんだよ?」
「……ありがとう、お兄ちゃん」
LANが小さな手でコップを受け取り、一口飲むと、そのほっとした表情にみんなの心が和みます。
みことは優しく目線を合わせると、柔らかい笑顔でLANの頭を撫でました。
「僕たちの家へようこそ。ここはもう安全だからね。怖がらなくていいんだよ」
温かいココアと、5人の優しいお兄ちゃんたちに囲まれて、LANの緊張がゆっくりと解けていきます。
「ねぇ、いるまくん。これからLANくんのこと、どうするの……?」
なつが尋ねると、いるまはLANの頭をぽんぽんと叩き、力強く言い放ちました。
「決まってんだろ。俺たちで守るんだよ。こんな目にあわせた奴らのところに戻すわけねぇ」
すちも、みことも、こさめも、なつも、みんな笑顔で頷きました。
朝、眩しい光がリビングに差し込んでいました。
LANがふぁっと小さな欠伸をして目を覚ますと、ふかふかのソファと温かい毛布の感触がありました。昨夜の悪夢のような寒さと痛みが嘘のようです。
「あ、LAN起きた」
キッチンから飛んできたのは、エプロン姿のなつでした。その声を聞きつけて、みんなが次々とリビングに集まってきます。
「LAN。よく眠れたか?」
ボサボサ頭のいるまが、あくびをしながらLANの頭をなでます。
すちが優しい手つきでLANのおでこに手を当てて熱を測り、みことはニコニコしながら膝をついて目線を合わせました。
「おはよーう。朝ごはん、たくさん食べられるかな?」
「LANくん! 一緒に朝ごはん食べよ!」
こさめが嬉しそうにLANの手を引いて、ダイニングテーブルの椅子へと案内してくれます。
テーブルの上に並べられていたのは、できたての温かいフレンチトーストとスープ、そして甘いイチゴでした。
「これ……おれが食べていいの……?」
LANは信じられないといった様子で、おそるおそる5人を見上げます。家ではいつも冷たい残り物か、何も食べさせてもらえなかったからです。
「もちろん! LANくんのためにすちくんとなつくんで作ったんだから、いっぱい食べてね」
こさめに促され、LANは小さな手でフォークを持ち、フレンチトーストを一口パクリと口に含みました。ふわっと広がった甘さと温かさに、LANの大きな瞳からボロボロと涙がこぼれ落ちます。
「味合わなかったか、」
焦るなつに、LANは首をぶんぶんと横に振りました。
「ううん……すごく、おいしい……! こんなにおいしいの、はじめて食べた……っ」
その言葉に、大人5人の胸がキュッと締め付けられます。
「……そっか。よかったな」
いるまが照れくさそうに顔を背けながらも、LANの頭をぐしゃぐしゃと優しく撫でました。
「これからは毎日、うまいもん食わせてやるからな」
「うん! いっぱい美味しいもの作ってあげる!」(すち)
「LAN LANが食べたいもの、なんでも教えてね」(みこと)
「よーし、食べたあとはみんなでゲームしようぜー!」(こさめ)
下手くそでごめんなさい‼️
良かったらいいねとコメント、リクエスト🙏
コメント
1件
うわぁ…第1話から胸がぎゅってなったよ🥀 LANの小さな体にあんなに傷があって、寒い公園で震えてる描写、読んでて辛かった。でもいるまとなつが助けてくれて、すちやみこと、こさめも優しく迎えてくれて…「もう大丈夫だ」ってひざまずいて言うとこ、めっちゃグッときた。フレンチトーストで涙するLAN見て、私も一緒に泣きそうになった。5人のお兄ちゃんたちの温かさがじんわり伝わってくる、すごく好きな物語だよ。続き、絶対読みたいな🤍