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昔から、そんな大層な正義感なんか、持ち合わせていなかった。人は好きなように生きればいい。そう思っていた。人徳なんてあまり考えたことはなくて、ましてや人のために何かしようだなんて、思ったことは一度もなかった。
全部自分のために生きていた。自分勝手だったかもしれない。わかってる。
でも、そんな僕でも初めてひとのために、利害をかえりみずに何か出来たんだ。
それが、たまらなくうれしかった。
もう、自分のことはどうでもよかった。地位とか、富とか、名声なんていらないから。
みんなに、あなたに、君に、僕の愛するひと達に、ただ、笑っていてほしくて。
その矛先の、向きを変えた。
………◇………
2XXX年、日本全土を襲う、規格外の震度と規模の大地震が起こった。
全国の都道府県は絶大な被害を受け、復旧は困難かと思われるほどボロボロになっていた。
そして、騒動が落ち着いたころ、都道府県の化身たちは連絡を取り合って、47人で顔を合わせて話そうということになった。
でも、実際に集まったのは46人。
ひとり、足りない。
来なかった彼は首都と呼ばれていた。大震災が起こってから、彼の姿を目にした人はいなかった。
大捜索しても、彼に関する何の手掛かりは何も見つからなかった。
彼は、どこにもいない。手の届かないどこかに隠れてしまった。
あの日から、東京が、消えた。