「 さしすの3人についてどう思う? 」
case 1 . 庵 歌姫
「 どう思うって……そりゃ強いですよ。悔しいくらい。なんでもあいつらだけで大体なんとかしちゃうんですよ。」
「 .. だから余計ムカつくのよ!こっちは死に物狂いだっていうのに。」
言った後に、本音がだだ漏れになってしまったことに後ろめたさを感じた。 貯金という行為を楽しむ冥さんが、金以外のことで私に話しかけてくるなんて珍しい。しかも、後輩のこと。昇格に興味はないが、生意気な後輩(しかしクソ強い)が周りの注目を浴びていると、自分の凡人さ加減を改めて実感し、劣等感のようなものが生まれる。
「 でも嫌いじゃないんだろう? 」
流れた艶のある髪をスルリと耳にかけて、冥さんは言った。確か冥さんの髪の色はアイスブルーだった。以前、冥さんに対し「綺麗な銀髪ですね」と言った男の補助監督はもう辞めてしまったのだろうか。
「 .. 嫌いじゃないですよ、寧ろ硝子は好きだし。他2人は敬語が使えないから苦手なだけです 」
思い出したら腹が立ってきた..と下唇を噛んでいると、運転席の補助監に「到着しました」と声がかかった。「そろそろ仕事をしようか」と薄気味悪い笑みを浮かべる冥さんに、助けられて金を要求されないように気をつけようと思った。
case 2 . 七海 建人
「 さしす? 」
「 先輩3人のことだよ 」
任務帰り、灰原と老舗のラーメン屋に入ったところだった。「ほいっ」とセルフサービスの水を2人分入れてきてくれた灰原から「どうも」と受け取る。
頼んでもないのに灰原が「さ」「し」「す」の由来について解説をし始めた。だらだらとした解説の二言目くらいを聞いたところで心の中で腑に落ちたが、灰原は嬉々として話し続けていたので特に何も言わなかった。ちょうどその時、ラーメンが運ばれてきて解説は終了した。 麺をフーフーと冷ましながら灰原は言う。
「 で、どう思うの? 」
「 すごい人達だとは思っています。けど尊敬はしていない。」
そう言って麺を啜ると、灰原が「えー」と不満そうな顔でもぐもぐしている。灰原は夏油先輩に恩があるとかで尊敬しているらしいが、自分はそう思わない。煩くて面倒くさいのは五条先輩の方だが、真に厄介なのは夏油先輩の方だ。時々……あの人の機嫌が悪いと“殺されるかもしれない”と思う瞬間がある。
「 あの3人は揃うと、駅前の人混みに、突然大型トラックが突っ込んでくるような……そんな理不尽さがある 」
「 例えが怖いよ七海 . . 」
珍しく灰原が苦笑いを浮かべてまともなことを言うので、口がへの字になった。それから数分間は、2人とも目の前の食事に夢中でいた。灰原が少し先に食べ終わると、「もう食べれない」と腹を撫でて満足そうにしていた。自分も残りわずかの麺をすすり、飲み込んだ。すると灰原が「先輩たちはさー」とまた口を開いた。
「 僕とは見えてる世界が違うんだろうな〜 」
そう嘆く灰原に勝手に好感をもっていた。こういう時にいつも「俺ら」と言わないのは、灰原なりの気遣いなのか、または無自覚なのか。
「 .. あなたはそのままでいいんですよ 」
「 え!?僕夏油さんみたいになりたいよー 」
よりによって..と思ったが、早く帰りたかったので、会計に立ち上がった。
case 3 . 夜蛾 正道
「 生意気だ。とにかく生意気。 自分の実力をわかってるから、遠慮もしない。 教師の言うことなんて、半分くらいしか聞いちゃいない。」
同期の補助監督からの「教師は大変ですか」という世間話から始まったこの会話。呪術師として、教員として、この問いに向き合ってみたが“生意気”以外の言葉が見つからなかった。 補助監も同様に思っていたらしく「 ですよね… 」と苦笑いしていたので、また何かやらかしたのではないかと杞憂した。
「 一補助監督の目線からですが、五条くんは、指示というものの存在を忘れている節がありますね 」
「 悟だけじゃない。傑も硝子 も、聞いてるようで聞いていない。 あいつら三人集まると、ルールより“自分たちの最適解”を選びたがる。 だから手綱を握る側は苦労する 」
ふうー。と濃いため息が漏れ出た。話しながら、先日の帳を下ろし忘れて、全国ニュースになったことを思い出して胃がキリキリしてきた。ぐっ..と狼狽えながら腹を抑えると、補助監があわあわしており、逆に冷静になった。腹から手を下ろしコホンと咳払いする。
「 ただ、実力は、本物だ。生意気なのも、裏付けがあるからこそだ。強いだけじゃなく、判断も速い。 危険な状況ほど冷静になる 」
「 教師の俺が言うのも癪だが、将来は化け物みたいな存在になるだろう 」
補助監が隣で何か言いたげにしたが口を紡いだ。そんな様子を横目で見ては、自身も同じことを思った。
もう十分化け物か。
case 4 . 九十九 由紀
「 ああ、噂のルーキー君達か 」
「 噂はよく耳にするよ 」
“ルーキー”という言葉を口にしたが、彼らは高専に入って2か3年生になり、五条なんかは生まれた直後から期待の新星であった。
「 今度高専に顔を出す時に、是非とも会いたいね 」
「 特に誰だっけ、あの〜、そう夏油くん。私は彼にたいそう興味があるらしい 」
隣の男が夏油氏に特級推薦の話が来ているという噂を話すと、九十九由紀は嬉しそうに伸びをした。
case 5 . さしす組
五条
「 最強のチーム(笑)しょ 」
夏油
「 賑やかで、騒がしい。悪くはないよ 」
家入
「 … … … めんどくさいの集まり 」
なんともまとまりのない答えに、お互い同士が1番盛り上がっていた。「 お前らさ〜もっと華のあること言えねーの? 」と机をバシバシ叩く五条に「 五条は声がでかい。夏油は責任感が重すぎる。」と家入が一蹴した。すると夏油が「 硝子がいるからまとまっているんだよ 」と微笑んだ。
「 傑、俺は俺は? 」
「 悟は騒音だよ 」
「 ひっでーもっと愛のある言い方して? 」
「 賑やかし担当。これでどう? 」
「 ま、ギリ及第点 」
不意にイチャつきだす「さ」「す」の2人に呆れた「し」はケッと言って煙草に火を灯す。ひと吸いして煙を五条の顔に吹きかけると、煙草嫌いのお子様の顔が歪んだ。 「やいマヌケ面〜。」「ってめ、まじでやめろっ」
盛り上がっている2人を見て、質問者は呆然としていた。早く帰りたい。収集がつきそうになく、どうメモをまとめるか悩んでいると、夏油が近づいて「ごめんね」と優しく微笑んだ。
「 私で良ければ答えるよ 」
見かねた彼が来てくれたので、お互いの関係について改めてどう思うか問い直した。
「まとまってるようでまとまってない、..でも足並みは揃う。不思議な関係だね。」
ほうほうと質問者は頷きながら、夏油の顔に目をやると、いつもより無邪気な顔で笑っていた。
先程まで喧嘩をしていた五条と家入が「 なに愛の告白〜? 」とにやにやしながら野次を飛ばしてきたので、夏油はちょっぴり恥ずかしそうに、付け足した。
「 うるさいし、めちゃくちゃだし、同級生じゃなかったら距離を置きたいけどね.. 」
ほんと仲が良いな〜と質問者がメモをしていると、教室のドアが無造作に開けられた。
「 なんだ、まだ残ってたのか。早く帰れ 」と夜蛾が眉間にシワを寄せながら言ったので、これでお開きとなった。
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「 すぐるーしょーこー、桃鉄しよーぜ 」
「 ヤニ切れたからコンビニ寄りたい 」
「 この前ボロ負けしたからもうやらないって言ってなかった? 」
3人で並んで歩く彼らの背中を、見えなくなるまで見つめた。 隣でグシャっと紙が擦れる音が聞こえたので、顔を向けると、夜蛾が片手に握っていた何やら資料のような物にシワができていた。
その紙は..と首を傾げると「 天元様の護衛に関する任務だ 」と夜蛾は答えた。さっき渡せば良かったのに、と質問者が口を開こうとすると、夜蛾の顔が曇った。 それ以上は何も聞かなかった。
ただ、なぜか、その紙は燃やしてしまいたいとさえ思った。
あとがき
めろ様よりリクエスト預かりました。
みんと作『 さしす組 』
久しぶりにさしすが書けて楽しかったです。リクエストありがとうございました😭💗
さしすは周りからどう思われているのか・思っているのかをファンブックを見返しながら書いてみました。
時系列としては、護衛任務を受ける前の話です。 最後にシリアスを入れちゃうのが私の癖です。
読んでくれてありがとう👊🏻
コメント
16件
まじで好きなんですけど。 ひとりひとりの目線からのさしす語りが好きだし。全員がさしすのことを認めて、それをしっかりと表に出して答える部分が尊すぎました。ひとりひとりの口調も合ってるしなぜだか、私がインタビューしているみたいな気持ちになれてうはうはですよ︎^_^♡ やっぱり大好きです。りんかさまの書くもの全部が。あのなんか、場面が頭の中でしゅんしゅんって切り替わりました。天才です。大好きです。
りんかのさしす組が見れて幸せ😻😻 灰原とななみんがでてきた時涙が出た
ただの天才で無理 物語の書き方も凄いし記事者?なんて言うんだっけその人目線みたいな 他にはない書き方って感じで好き 文章なはずなのにアニメーションも想像できるし普通に小説としても読める 普通に読んでて頭いいんだろうなって想像できるの辛い脳みそわけて まず何よりも作品愛が伝わってくる ごめん久しぶりに愛出た