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第二章
「夏休み」
そしてついに今日は夏休みの前日。学校がちょうど終わった。あとはもう自由あるのみ。大量の宿題はあるが、一人の時間が増えることにはかわりはない。これからの楽しみに胸を踊らせながら(表には出していないが)校門を出る。
すると肩にズシッと重いものがのる。
「INTJー。今帰り?」
おなじみのESTPだ。
「うん、まぁ。」
「ENTPは?」
「先生からちょっと用事だって。」
「へぇ、…ならちょうどいーや。」
「?」
「夏休みさ、INTJの家泊まりに行っていい?」
「え?」
ENTPがいないことがなんでちょうどいいのかわからないが、とても急だ。しかも仲良くなったのはほんとごく最近だ。どうしようか。
「…ちなみになんで俺?」
「え?そりゃ仲良くしたいから?」
仲良くしたいからで急にお泊まりなのか?仲良くなってからでは?分からない。陽キャの考えることは…。
「それに宿題教えて貰いたいから。」
「そ、そう。」
宿題か…確かにそれはちゃんとした理由かもしれない。それに最近仲良くなったとはいえ一応は幼馴染みだ。少しは友達と遊ぶのも悪くないかもしれない。(それにもしかしたらESTPも昔の同級生と仲良くなりたいのかもしれない…)
「で、結局いいの?」
「あ、うんいい((」
「ドーン!」
後ろからものすごい勢いで抱きつかれる。
「俺を置いて2人で帰るとかひどくない?」
ENTPだ。
「え?だって先生に呼ばれてっていってたじゃん。」
「すぐ終わるってメールしましたー。既読つかなかったけど。」
不貞腐れたような顔でそういうENTP。そんなに置いていかれたのが悲しかったのか…でもおかしい、いつもちゃんと通知をつけてるはずだ…
「あ、…充電切れてる。」
そういえば昨日充電しわすれて寝てしまった記憶がある。
「モバイルバッテリー貸そうか?」
「いや、大丈夫帰るだけだし。」
「…てかさ2人でなんの話してたの?」
「ESTPが夏休み俺のいえ泊まるって…あ、これ言っちゃダメだった?」
「いや、別にもういーや。聞かれちゃったしね。」
「ごめん。」
「気にすんなって。」
ESTPが笑いながら言う。少し罪悪感を感じる。
「それで、ENTPも来るんだろ?」
「そりゃもちろん。」
ENTPは満足そうに笑みを見せる。
「そうとなれば日程決めなきゃな。俺は土日なら空いてる。平日も昼からならギり行けるかな…?」
「俺はいつでもOK。」
ENTPとESTPがスマホを見ながら予定を確かめている。俺は充電がきれているため覚えている範囲での予定を思い出す。(まぁほとんど空いているのだが)
「じゃあ母さんに土日で空いてる日あるか聞いとくな。分かったらメール送る。」
「おー、りょーかい。」
よし、まぁ日程はすぐ決まるだろう。部屋、掃除しとかなきゃいけないな…。などと思っているとESTPがそういえばといった様子で話す。
「そういや俺INTJのメール持ってないわ。」
「あぁ…じゃあ交換…って」
「電池切れてるもんな。」
「じゃあ俺がESTPにINTJのメール送っとくよ。」
「マジ?ありがと!」
そしてお泊まり会当日。今、僕は部屋の掃除をしている。いや、もちろん前日に掃除やら片付けやらは済ませていたのだが、ENTP以外の友達を家に招く、しかも泊めるのは初めてなため、少しソワソワしていた。
ピロン
あまり鳴らない僕の携帯が軽快な音をたて、震える。どうやらESTPからメッセージがきたようだ。 少しドキドキしながらトーク画面を開く。
ESTP『ごめん!ちょっと遅れる!』
文字だけで顔の前で手を合わせ、頭を下げるESTPの姿が目に浮かぶ。
「遅れるのか…。」
無意識に口からこぼれでた声は、一気に僕の羞恥心を掻き立てる。
「~~~っ!」
言葉にもならない声を出しながら、机に突っ伏す。自分は何を言っているんだ。まるで僕が友達が来るのを楽しみにしてたみたいじゃないか。いや、別に嫌なわけじゃない。実際に楽しみにしてこう準備をしているわけだし…って、あ”ぁー!もう!ダメだ、もうこれ以上考えるのはやめよう。乱される!
ピンポーン
ビクッ
ESTPのメールのせいで、気が抜けていたのもあり、突然の音に体が跳ねる。時眼帯からして、ENTPが来たのだろう。念のため、情けない顔をしていないか玄関前の鏡で確認し、扉を開ける。
「よ!INTJ。」
「よう…。」
扉の先にいたのは予想通りの人物。ENTPだ。 ENTPはいつも通りのにやけ顔を浮かべている。
「これ、母さんが三人で食べろって。」
その手に持っているのはシンプルな薄茶色の紙袋。真ん中にはドーナツで有名な店のロゴがかかれている。
「ありがと、ESTP来たら食べよ。ほら、なか入れよ。」
「おう。」
ENTPはお邪魔しますと愉快な声を出しながら靴を脱いで入ってくる。もちろん靴を揃えることは忘れずに。いつもふざけているくせに礼儀は忘れない。ENTPのいいところなのだが…、いけ好かない。
「相変わらず綺麗だなINTJの家。」
「そうか…?」
「荷物はINTJの部屋に置いといていいよな?」
「あぁ。」
ENTPは迷わず2階の僕の部屋に向かう。昔から何度も来たことのある家だ。もう場所を覚えているのだろう。俺もキッチンへ行き、コップに水と氷をいれ、2階へ向かう。
「はいこれ、水。」
「お、ありがと。」
「一応クーラーはつけてるけど暑くないか?」
「うん全然、丁度いーよ。」
「そうか。」
俺はENTPの向かい側に座り、夏休みの宿題であるプリントを出す。A4用紙が五枚ほどの内容だが裏表印刷で十枚みたいなものだ。
「あ、それ数学のプリントだっけ?量多ぉ~…裏もあるし…。」
ENTPが文字がびっしり書かれたプリントを見ていう。別に僕も宿題が嫌いなわけじゃないが流石にこの量は嫌になってくる。
「弱音吐いてても何も進まない、早くやるぞ。」
「ハイハイ…。」
そう言いENTPは鞄から同じプリントを取り出す。
「そういえばESTP遅れるって言ってたけど聞いた?」
「あぁ、さっきメール来た。」
「部活だってな。大変そーだよな。」
「…ENTPはなんか部活入らなかったの?」
「あぁー。
…ちょっとINTJこっち来てよ。」
「は?なんで。」
「いいから、いいから。」
ほんとにこいつはよくわからない。 そう思いながらよろよろと立ち上がり、ENTPの横に座る。
「部活に入らないのかって言ったっけ?」
「?あぁ。」
「俺が部活に入らない理由はね、…」
ENTPがそう言いながら僕に近づいてくる。いつもとは違う雰囲気に圧倒され、僕は後ろに後ずさった。ENTPは逃がすまいとじりじりと僕に詰め寄ってきた。すぐ後ろはベッド。もう逃げ道はない。 突如訪れた静粛。母さんがつけてくれた風鈴の音がやけに大きく聞こえる。
「INTJと一緒に帰りたいからだよ。」
「…へ、?」
自分の口から空気に混じれた微かな声が漏れる。いつもにやけているENTPの目の紫染みた深い藍色は、僕の心を射止めくようで、軽薄な音を連ねる声は、今は甘くとろけるような、どこか重みのある声。自然と鼓動が大きく、早くなっていくような気がする。
「俺ね、ずっと前からINTJのこと…((」
ピンポーン
静粛を断ち切るように音が響く。
「…タイミング悪。」
その声の方を向くといつもの薄ら笑いを浮かべたENTPがいた。
「INTJ?出てきたら?ESTP来たんじゃない?」
「っ、あ、あぁ。行ってくる。」
そして僕は玄関に向かった。