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ある日のアルバイトの終了後、私はフロアの後片付けをしていた。今日は客入りも多かったから、普段よりも床が汚れていて、手間取ってしまう。今日は残業かな、などと考えていると背後から硬い足音がした。
振り返るとそこには険しい表情のアズール先輩が立っていた。これはマズい、叱られるかも……と身構えていると、先輩からは意外な言葉が聞こえた。
「全く……。こんなに店を汚すなんてマナーのなっていない客だ。……監督生さん、お手伝いいたしましょう。」
そう言われて私は焦った。対価になり得るものなど私は何も持っていない。私はそう先輩に告げ、再び掃除に戻ろうとした。
「監督生さん、そんなに怖がらないでくださいよ。僕の店の客の不始末、監督生さんだけに不利益を生じさせる訳には行かないでしょう?」
そう言われ、突如として私は先輩と共に掃除をする事となった。少し視線をずらすと、そこには普段はあまり見ることの無い”支配人”としての姿の先輩が立っていた。いつもとも、考査後の雰囲気とも違ったその端正な横顔に、私は見とれてしまった。視線を感じたのか先輩がこちらを向いた。
「おや、どうかされましたか?」
まさか、あなたに見とれていたなどと言えるはずもない。私はなんでもないです、とだけ答え再び掃除に戻る。先輩と二人で掃除しただけの時間は、私の中に芽生えていた先輩への恋心を自覚するのには十分すぎる時間だった。その日、私はいつもより幾分か軽い足取りでオンボロ寮までの帰路を辿った。