翌日の放課後。俺は駅前でまりあと待ち合わせしてから、しばらく無言で歩いていた。なんだか変な感じだった。彼女と一緒にいるのがこんなに緊張するなんて、正直、自分でも驚いている。普段は誰とだってあまり気を使わずに接してきたけど、まりあには何かしら意識してしまう。
「今日はどこ行くんだ?」
俺が口を開くと、まりあは少しだけ考え込んでから答えた。
「うーん…とりあえず、カフェでも行こうか?お茶しながら話でもしたいなって。」
「ああ、いいけど。」
俺の答えに、まりあは嬉しそうに笑った。その顔を見ると、少しだけ心が温かくなる。それがなんだか不思議だった。彼女と一緒にいるだけで、気持ちが落ち着くような気がする。
カフェに到着して、席に着くと、まりあはメニューを見ながら何かを考えている様子だった。俺はそれを見ながら、つい「何が飲みたいんだ?」と聞いてみた。
「うーん…私はカフェラテかな。」
「あ、俺も同じので。」
まりあの意見に合わせて注文して、二人でカフェラテを受け取ると、俺たちはしばらく黙って飲みながら窓の外を見ていた。
「李斗って、なんか意外とおとなしいんだね。」まりあがふっと話し始めた。
「は?」俺は思わず反応した。
「だって、普段の学校ではあんな感じだし、すごく無愛想だし、面倒臭がり屋って感じだけど、こうやって話してると、意外と普通なんだね。」
「うるさいな。」俺は少しだけ照れくさくなって、目をそらした。
でも、その言葉には妙に納得してしまう自分がいた。確かに、俺は普段、誰かとこうやって静かに話すことは少ない。大体は周りと距離を置いて、あまり関わらないようにしていた。それが当たり前だと思っていたけど、まりあと話していると、なんだかそれがちょっとだけ違う気がしてきた。
「でも、まりあもなんだかんだで、気を使いすぎてるよね。」俺が言うと、まりあは驚いたように目を大きく開けた。
「え?私が?」
「うん。なんか、いつも誰かに気を使ってるって感じがする。」
まりあは少し考えてから、照れたように笑った。
「そ、そんなことないよ。」
でも、俺にはわかる。まりあは周りに気を使うことが多い。それが、時々少し疲れてるように見える。普段から家柄や周囲の期待に応えようとしているから、なおさらだろう。
「別に、気にしなくていいんじゃないか?」
「うーん…でも、そういうわけにもいかないから。」
まりあの言葉に、俺は少しだけ真剣に考えてしまった。まりあにとって、何かしらのプレッシャーや期待が常にあるんだろう。それが、もしかしたら俺が思っているよりもずっと大きなものかもしれない。
その時、まりあが突然顔を赤くして、少し俯いて言った。
「それに、李斗と一緒にいると…ちょっとドキドキするんだよね。」
その言葉を聞いた瞬間、俺の心臓が一瞬止まったかのように感じた。ドキドキ…?
「何言ってんだ、急に。」俺は慌てて、からかうように言った。
でも、まりあの顔を見ていると、どうしても心の中で何かがくすぐったくなった。ドキドキしているのは、どうやら俺だけじゃないらしい。いや、こんなこと考えている時点で、俺もきっとまりあのことを気にしているんだろう。
「でも、なんか、意外だな。」まりあが少しだけ目を伏せながら続けた。
「え?」
「李斗って、いつも無愛想で、そんなこと言わなそうなのに、ちゃんと気にかけてくれるんだね。」
その言葉に、俺はちょっと戸惑った。でも、まりあが気づいているのは、やっぱりその通りだ。俺は無愛想で面倒臭がり屋だけど、まりあにはどうしても気を使ってしまう。意識しないようにしていても、何か気になるんだ。
「まあ、別に。」と、適当に返してみたけど、その返事にまりあはまた少し顔を赤くした。
その後も、少しだけお互いに照れたような雰囲気が続いたけれど、だんだんと心地よく感じるようになった。まりあとこうやって過ごす時間が、だんだんと普通になってきた気がする。
でも、まだどうしていいかは分からない。この気持ちが本当に「恋」なのか、単に面倒だから彼女のために気を使っているだけなのか、正直、よく分からない。でも、これからどうなるのか、少しだけ楽しみになってきた。
「じゃあ、そろそろ帰るか?」まりあが言った。
「うん。」俺は頷いて、また歩き始めた。
まりあとの時間が、確実に俺の中で何かを変えようとしている。次回、俺はどうしても避けられない気持ちに気づくことになるだろうか。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!