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「言葉通りの意味ですよ。新沼社長補佐が不在の間、小笹さんにこちらで対応していただく必要はありません」
「……え?」
瑠璃香は目を瞬いた。
「今回の出張には、小笹さんにも同行していただきますので」
「…………え?」
今度こそ、思考が止まった。
「私も、ですか?」
「はい」
「いや、待て」
晴永も驚いたように藤代を見た。
「俺も聞いてねぇぞ」
「今、お伝えしましたから」
「そういう意味じゃなくてだな」
晴永が眉間を押さえる。
対する藤代は、いつも通り涼しい顔をしていた。
「今回の出張では取引先との打ち合わせだけでなく、視察も予定されています。今後、新沼社長補佐に同行していただく機会も増えるでしょうし、小笹さんにも経験していただいた方がよいかと」
「それは……」
確かに、言われてみれば不自然な話ではない。
むしろ専属秘書なのだから、出張へ同行することだって今後はあるのだろう。
分かる。
分かるのだけれど――。
(一泊二日……)
その言葉を改めて意識した途端、心臓がドクンと大きく鳴った。
晴永と二人で、会社を離れて地方へ行く。
もちろん仕事だ。
遊びに行くわけではない。
分かっているのに、どうしても意識してしまう。
「宿泊先は……」
恐る恐る口を開く。
「私の分も、手配するということですよね?」
「ええ」
「もちろん、部屋は……」
「別室です」
「そ、そうですよね!」
即座に答えてから、何を当たり前のことを確認しているのだろうと恥ずかしくなる。
隣では晴永が口元を手で覆っていた。
「……新沼社長補佐」
「いや、笑ってねぇよ」
「まだ何も言ってません」
「顔が言ってた」
藤代が小さく息を吐く。
「お二人とも、ご旅行ではないと肝に銘じておいてくださいね」
「……はい」
「分かってる」
各々に応えながら、それ以上続けられなくて、晴永と二人、揃って口を閉じる。
そんな二人を見て、藤代はほんの少しだけ口元を緩めた。
「いずれにしても、小笹さんの同行は、社長からのご指示ですので決定事項です」
「……はい」
瑠璃香はまだ少し落ち着かない胸を押さえながら、どうにか頷いた。
「分かりました」
「よろしくお願いします」
そう言って立ち去ろうとした藤代が、ふと足を止める。
「ああ、それから」
振り返った藤代へ、二人の視線が集まった。
「今後は出張への同行も、小笹さんのお仕事のひとつになると思っておいてください」
「はい」
「ただし、当然ですが、出張先でも業務時間外まで会社が拘束することはありません」
「……え?」
思いがけない言葉に、瑠璃香は目を瞬いた。
「業務終了後の時間については、通常の出張と同様、各自自由です」
「…………」
瑠璃香は隣にいる晴永を見た。
晴永もまた、何とも言えない顔で藤代を見ている。
「それは……社長が?」
晴永が尋ねると、藤代はわずかに口元を緩めた。
「一般論として申し上げただけです」
「……ホントか?」
「さあ?」
さらりとかわしてから、藤代は瑠璃香へ視線を戻す。
「ともかく、勤務時間内はしっかりお仕事をなさって下さいね」
「は、はい」
「何しろ――」
藤代がいつもの穏やかな笑みを浮かべる。
「社長補佐とその専属秘書ですから」
「…………」
どこかで聞いたような言葉に、瑠璃香は何も返せなくなった。
隣を見れば、晴永と目が合う。
一泊二日の出張。
仕事だということは、もちろん分かっている。
分かっては、いるのだけれど――。
(晴永さんと、二人で出張……!?)
どうやら専属秘書になったことで変わるのは、会社での距離だけではないらしい。
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コメント
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わああ第154話読んだよ〜!!😭💕 藤代さんの「業務時間外は自由」って一言がもう…!!なんか含みありすぎてドキドキが止まらん!!瑠璃香ちゃんの「一泊二日……!」って内心の動揺が手に取るように伝わってきて、隣で晴永さんが口元隠してるのまで想像できちゃったよ…!!仕事って分かってても意識しちゃうよね、その距離感がもう尊すぎる…!✨