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私は高校生の時、夏休み明けに来る転校生に一目惚れした。その転校生は……何と言ったか…一目惚れした相手なのに、名前を何故か私は覚えていなかった。
一旦適当に八代とでも呼ぼう。
転校生とは登校初日にみんなの人気ものになるというイメージがあったのだが、その八代は違かった。誰も八代のことが見えていないかのように過ごしている。それは先生もそうだった。
八代は突然教室に入ってきて
「転校してきた八代だよ〜」
と言って、(名前を言っていたかは定かではないが)私の席に来た。
「よろしくね〜」
コミュ力おばけタイプか…
そう思ったが、周りは八代のことを無視している。
「…?よろしくね。」
疑問に思ったが、その場はとりあえずスルーをした。
授業中。
何故か席の空いていた私の隣に座って、八代は授業を受けている。今思うと、その時授業を受けている八代の横顔は、まるで現実の人間ではありえないようなとても綺麗な横顔をしていた。
「あ、ねぇねぇ。
教科書何ページ?」
急に八代がそう聞いてきた。
「教科書はー…98ページだよ。」
「オッケー、ありがと。」
黒板に書いてあるはずなのに、何故私に聞いてきたんだろうか。
_____
それからの記憶は曖昧なので、高校の卒業式あたりまで飛ばそう。
高校、卒業式。
私は名前を呼ばれるのが中間くらいなので、しばらく人の名前を聞いていた。
「木田穂香」
「はい。」
名前を呼ばれ、体育館のステージに立つ。
「卒業証書授与 木田穂香
以下同文です。」
そう言って、卒業証書を渡される。
そのようなことの繰り返しの途中、私の名前が呼ばれる。
「はい。」
体育館のステージに立ち、卒業証書を受け取って席に戻る。
それからまたしばらくぼーっと人の名前を聞いていた。
そろそろ八代の番…
そう思って、八代が座っているはずの席を見ると、そこに八代の姿はなかった。
「…?」
先生が、次の人の名前を読み上げる。そこで読み上げられたのは、八代ではなく…
「和田里佳」
和田里佳という、聞いたことのないクラスメイトだった。
「はい。」
和田さんがちゃんと返事をする。
八代は?
八代もいるはず…、
そうして、人の名前をずっと集中して聞いて…卒業式が終わる。
卒業式が終わった後、学校の桜の木の下に行く。
「……」
その時、視界の内に見えたのは、紛れもない…八代だった。
「私のこと、気にしてくれたの?」
「!勿論、!!
心配したんだから、!
でも、なんで名前呼ばれなかったの?」
「…それはね、」
八代が私に近づいて、私の頬を触る。だが、八代に触られた感触がない。
「私、幽霊なんだ〜びっくりした?」
「幽霊…?」
「そう。この学校の七不思議的なやつ。」
「…?」
「だからね、君と一緒にいられるのはね、これで終わり。」
「…待っ…てよ、どういうこと…?」
理解が出来なかった。
「言葉の通りだよ〜
…でもね。君のおかげで、私の無念が晴れたんだ。
だから、私は成仏できるんだよ〜
ありがとうね。
そして…ごめんね。
私のこと、好きだったんでしょ?」
「…そう…だけど…、!
幽霊でも良いから…一緒に居てよ、」
「…ごめんね。それは私には出来ないんだ。
…じゃあ、幸せにね。」
「待って、!!」
手を伸ばして瞬きをした瞬間、八代がいなくなる。
「なんで…、
………あれ…」
…今、誰と話してたんだっけ…?
でもなんか…悲しい気がする…
…まぁいいや。
無事卒業出来たんだし。
最後に校門をくぐって、校外へ出る。
「ありがとうございました!」
学校に向かってお辞儀をする。
そして、卒業証書を持って家に帰った。