テラーノベル
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「ね、キスしていい?」
年上で、いつでも余裕があって、面白くて、かっこいい。俺から見たらどこにも欠点がないようなそんな人。
酒が入ってた
2人きりで呑んでた
俺に、その気があった
だから悪ノリってやつで聞きたくなったんだ。どうしたら貼りついてる大人の余裕が崩れるのか、俺の一言でどんな顔するのか。その中に淡い期待も込めて。
「え…いま、なんて…?」
…やっぱそうだ。驚いたような怖がってるような不思議な顔。そりゃいきなり同じグループしかも年下の子ども扱いしてるやつから急にこんなこと言われたらびっくりするよな。
「…キャメさん?」
下を向き、表情がよく見えなくなる。「無理でしょw俺おじさんだよ?w」とか笑って返して欲しかった。そしたら、諦められたのに…
「キャメさーん?」
「…ぃ、よ」
「え?」
なにか言っていたがよく聞こえなかった。テーブルに少し身を乗り出して顔を覗き込む。
「まっ…!みない、で…!」
手で顔を隠されてしまったが、隙間から見えたのは耳まで真っ赤にした余裕なんてどこにもない俺の知らないキャメさんだった。
「ーっ、ねえ、さっきなんて言ったの?」
「……だから、……きす、しても…いい…よって……」
…嘘だろ。え、これ本気のやつ?
「…店、出よう」
こんな場所じゃ話せないところまで来てしまったかもしれない。俺の家はここから一駅先だから近いし、そこでゆっくり聞こうじゃないか。
「…どこ、行くの?」
「んー俺ん家かな」
キャメさんが小さく頷く。あぁもう、本当に可愛いな。まさかこんなことになるとは思ってなかったからかなり拍子抜けした、が、こんな奇跡ないから絶対逃さない。
「今日は帰さないよ」
なんてキザなセリフを吐いて店を後にする。この時期の外は蒸し暑く、生ぬるい風が吹いている。その風が嫌に心地よかった。
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