テラーノベル
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「…。」
目を開けた。
変わらぬ自分の部屋は、これも変わらぬカーテンを越えて流れて来た、薄暗い水色で染まっている。
俺の、重力を受けた身体がずっしりと横たわって首からぶら下がっている。
そして、肌の上は、掛け布団のモフモフとした感触を、服の上は、濁ったそれと、重なったそれらの重さを、感じて、力を床に流させ続けていた。
「…ふう。」
夢だったのか。
こういうのは偶にある。この間は、仲間らしい人達と、自分のあるゲームアバターが敵と戦うことになって、最終的に催眠され奪われる…というところで終わる、なんて夢も見た。
それも別に昔のことという程の間でもない。少し心配になってくる。
視界には、シェルフに入れられた3つの箱の、数字が書かれた、赤色や緑色の正方形の中に、2番の、青色が見えていた。
俺の耳は、食洗機が水蒸気を吹く駆動音と、その向こうの、幽かな小鳥の歌声を捉えていた。
耳に馴染む心地の、ゆったり「モゾッ」と言う音と共に、左肩を起こして右肩を沈める。
鏡を見る様に、瞳孔へ直接注がれた溢れる光が、ベランダを繋ぐ大きな窓の、ひらひら言っているカーテンの隣から広がって、床で輝き、視界の色の感じを黄色に翻す。
一面、柔い白色で、模様はそれだけ色が抜けて透明になり、繋がって線になっているデザインのカーテンである。
今は、その下の少しを床に凭れて、俺と同じで、眩しさにその身を潜めているのだ。
身を起こす。右肩を浮かせ、左肩を時計回りにする。枕元に投げておいたスマホを少し探して、すぐに見つけてから、それを拾いながら立ち上がり、部屋を出る。
視界には、本棚の上の本立てに、隣へ首を凭れながら眠る本の、青色が見えていた。
母がテレビに流すお気に入りのチャンネルのムービーの音を耳に食事し、時間に余裕を見て、布団に身体を潜らせてちょっとスマホを見、もうこんな時間になると歯を磨き、着替え、家を出る。
視界には、俺の部屋のカーテンの花柄の、青色が見えていた。
学校に着くと早々に荷を解き、体操服とか、弁当とか、水筒とかを、机の決まった場所のあちこちに装着したり、置いたりする。
視界には、筆箱の、革の面の絵と、ファスナーと布の部分の、青色が見えていた。
あとの暇な時間は、何をすることもなく、スマホを眺めて過ごす。
ここまで、全て、いつもと同じ。
今日見た夢が無ければ、あるいは、その内容が特別でなかったり、はたまた何も見なかったとしても、今日もまたただの一日に過ぎなかったのだろう。
少し前に登校時刻10分前を告げるチャイムを聞き流してから、門倉先生が教室に入るのを見て、話が始まる心構えを付けた。
先生が話し始めたので、スマホを下ろし、まじめに聞く。
ふと、先生が、いつもと違う、青色の服を着ているのに気付いた。
…
よくよく考えてみると、俺の生活には、よく青色が登場していることがわかった。
この夢も、教室以外は、世界が全て薄ら青の色で覆われていた。
もしかしたら、俺の中では青色が、何か別の意味を成しているのかも知れない。
自我の更に向こう、潜在意識の中で、俺が、青に、何かを見出していたのかも知れない。
「…。」
ちょっと不思議な感じがして、今日はただの一日では無くなる様な予感がした。
今日も三田は、ただの三田である。
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