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れいとうみかん
笑未
#シリアス
30-1◆王国の頭脳、そして狩人の待ち伏せ
柴田と別れた後。
俺の足は自然と、次の戦場へと向かっていた。
脳内のウィンドウを開き、ミラーへと報告する。
奏:「一人目、確保」
ミラー:「見事な手際だ。で?次は誰だ?」
奏:「斎藤律だ」
ミラー:「情報はあるのか?あのITかぶれ」
奏:「ああ、昼間にスキャンしておいた。そして驚くことが、分かった。俺は、あいつらを少し誤解していたかもしれない」
ミラー:「何だと?」
奏:「Elysionはただプライドだけが高い集団じゃない。それぞれが本物の天才だ。柴田が『笑い』の天才なら、斎藤もまた別の分野の天才だ」
ミラー:「面白い。で?斎藤は何の天才なんだ?」
奏:「到着してからのお楽しみだ」
その問いに俺は答えない。
俺はバスに乗り込み、京都の中心地へと向かっていた。
四条烏丸。
オフィスビルが立ち並ぶ、その一角にそれはあった。
ガラスと鋼鉄でできた未来的なタワー。
京都四条ゼロゲート。
天宮財閥が未来の価値を、生み出すために作った事業開発拠点だ。
WEBサイトによると
若き才能が集うIT企業やベンチャーキャピタルが入居する「新しい価値」をゼロから生み出す場所。
奏:「斎藤律は、このビルでインターンをしている。起業家の卵としてな」
ミラー:「ほう。高校生でか。確かに、ただ者じゃないな」
奏:「終了時刻は夜10時。それまで待つ」
ミラー:「待ち伏せか。いい趣味だ」
俺はビルの向かいにあるカフェに入り、一番奥の席に座った。
そこからなら、ビルのエントランスが全て見える。
俺の完璧な観測席だ。
時間の感覚が麻痺していく。
一杯のコーヒーで、二時間以上粘っただろうか。
時計の針が、22時を指す少し前。
俺はカフェを出て、ビルの前の闇へと溶け込んだ。
そして22時ちょうど。
狩りの時間だ。
30-2◆若きCEOと謎の投資家◆
夜10時4分。
京都四条ゼロゲートの自動ドアが静かに開く。
中から、現れたのは斎藤律だった。
彼はスマホで、誰かと話している。
その横顔は、学校で見せるそれとは違い、若きCEOのような自信と知性に満ちていた。
俺は斎藤を、もう一度、カーストスカウターでスキャンする
【Target: 斎藤 律】
【所属:2年4組 / Elysion(参謀役)】
【教室内序列:Lv. 68(幹部クラス)】
【基本性格:超・合理主義者】
【学力レベル:C(理論優先・暗記軽視)】
【目標:IT分野での学生起業、若き経営者】
【特記事項:天宮財閥の関連IT企業でインターン中】
【弱点:プライド、自らの情報分析能力への過信】
【思考キーワード:”時間効率” ”ビジネスモデル” 】
彼がビルから数歩、歩き出した時。
その視線が、街灯の影に立つ俺の姿を捉えた。
斎藤の足が止まる。
彼は、一瞬、驚いた顔をしたが、すぐに興味深そうな笑みを浮かべた。
彼は電話の相手に「また後で」と告げると、通話を切り、俺の方へとまっすぐに歩いてきた。
「音無 奏じゃないか。奇遇だな。こんなところで何をしている?」
「別に。塾の帰りだ」
俺は、用意していた答えを返す。
斎藤は、俺のその言葉を信じたわけではないだろう。
だが、彼はそれ以上、追及せず、面白いおもちゃを見つけた子供のような目で俺を見た。
「こんなところで会ったのも、何かの縁だ。少し一緒に歩かないか」
意外なことに、斎藤の方から誘ってきた。
「俺は最近、少しお前に興味が出てきたんだ。ちょうどいい」
彼の声には、俺への侮蔑はない。
むしろ得体のしれないものを見るような好奇心があった。
俺たちは、並んで夜のオフィス街を歩き始めた。
静寂を破ったのは斎藤だった。
「お前、今日の昼休みも、俺たちのこと見てただろ。何を分析している?」
「別に。人間観察が趣味なだけだ」
俺はまず彼の脳内をスキャンしたデータを元に、先制攻撃を仕掛ける。
「ところで斎藤、お前、面白いものを作ってるみたいだな。未来のGAFAか?」
その一言に斎藤の目が鋭く光った。
「お前がそういう話に興味があるとはな」
斎藤のその問いに、俺は初めて、口元を緩めた。
「今の時代、学歴より実績と経験だ。俺もそう思う」
俺は、彼の哲学を肯定してみせる。
すると彼は、待ってましたとばかりに本音を漏らした。
「だろ?だから中間試験なんて、本当に時間の無駄だ」
俺はその言葉を待っていた。
「だが斎藤。お前は、一つ見落としているんじゃないか」
「日本の社会では、いい大学の卒業証書はそれだけで『信用』という名の最強の武器になる。それはお前が、将来ビジネスを始める上での最高の『初期投資』だ」
「お前にとって、中間試験は勉強ではない。最小のコストで最大のリターンを得るための『投資活動』なんだよ」
「なるほど。そういう考え方も、一理あるな」
「それにだ。ビジネスには人脈が必須だ。一流大学を出ていると、それだけで同じ大学の先輩起業家からも可愛がられる」
俺のその言葉に斎藤の足が止まる。
「おまえ、なかなか面白いことを言うな。意外だな」
彼は俺、をただの同級生ではない「自分と同じ視点を持つ人間」だと認識し始めたのだ。
彼は、悔しそうに呟く。
「だが、俺はその『コスト』を払う時間が惜しい」
俺は、静かに微笑んだ。
「その『コスト』を限りなく、ゼロにする方法があるとしたら興味はあるか?」
斎藤の目が大きく見開かれる。
「どういう意味だ?」
俺は例の予想問題集を彼に差し出す。
「俺が作った教師の心理分析による試験予測システム。そのベータ版から出力した予想問題集だ」
「アルゴリズムは?」
「それは言えない。企業秘密だ。いわばブラックボックスだな」
「だが結果は出せるはず。この中間試験予想問題集。その的中率を俺のシステムの優秀さの証明にしたい。信じるか、信じないか。君のその合理的な頭で判断しろ」
斎藤「俺にこれを試してみろと?」
奏:「だからベータテストなんだろう?試してみても何の損もないだろ?」
斎藤は、しばらく俺とレポートを交互に見ていた。
そして、彼はそのレポートをひったくるように受け取った。
斎藤は企業秘密だという、そのレポートを受け取り、俺の顔をじっと見つめた。
その瞳には、もはや侮蔑はない。
ただ未知のテクノロジーと、それを生み出した男への純粋な好奇心だけがあった。
斎藤「もし、これが的中していたら、お前のことを認めてやるよ」
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