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翌日、あの日の雨の帰り道から何かが変わった気がした。李斗との距離が縮まったわけではないけれど、確かに私の中で何かが動き出したのを感じていた。それは、心の奥底に芽生えた小さな期待だった。
朝、いつものように学校に向かう途中、私はふと手に持った傘を見つめた。昨日の帰り道のことが頭に浮かんで、顔が自然と赤くなるのを感じた。
「何やってるんだ、私…。」
恥ずかしさと、少しのワクワク感が混ざり合っていた。あの時、李斗が私に優しくしてくれたことが、こんなにも心に残っているなんて思ってもみなかった。
そして学校に着くと、教室の扉を開けると、李斗が座っている席が目に入った。いつもの無造作な髪、ちょっと気だるげな姿勢で、なんだかいつも通りに見えるけれど、昨日のことを思うと、少しだけ違うように感じてしまう。
「おはよう、李斗。」
私は声をかけながら席に着いたが、彼はあまり反応を示さずに、ノートに何かを書いていた。少し寂しい気もしたけれど、彼はいつもそんな感じだ。私はそれを理解しているつもりだった。
「お前、昨日のこと覚えてるか?」
突然、李斗が話しかけてきた。私は驚いて彼を見たが、彼は特に気にした様子もなく、ただ少しだけ真面目な顔をしていた。
「昨日って、雨のこと?」
「うん。」
「うーん、覚えてるけど…。」
少し照れくさくなりながら答えると、李斗はふっと小さく笑った。
「お前、顔真っ赤だぞ。」
「えっ、そう?」
私はすぐに顔を手で覆った。確かに、昨日のことを思い出すと、少し顔が熱くなる。恥ずかしい…。
「まあ、そんなに気にすんなよ。俺もお前に傘をさしたこと、忘れてないし。」
李斗の言葉に、私は胸が少しだけ温かくなった。まさか、彼が昨日のことを覚えていてくれたなんて。それだけでも嬉しくて、思わず笑顔になりかけたけれど、すぐに自分を抑えた。
「うん、ありがとう。」
私がそう言うと、李斗は少し照れたように顔をそむけた。
「まあ、悪い気はしなかったしな。」
その一言が、私の胸をキュンとさせた。
その日、放課後。私は思い切って、李斗に話しかけた。
「ねぇ、李斗。」
「ん?」
「今度、どこか一緒に行かない?」
突然の提案に、李斗は少し驚いた顔をした。
「え、どこに?」
「なんでもいいから。ちょっと、二人で出かけてみたいなって思って。」
「ふーん…。」
李斗は一瞬考え込み、そして少しだけ頷いた。
「いいけど、別にお前のために行くわけじゃねぇからな。」
その一言に、私は少しガッカリしてしまったけれど、少なくとも彼がOKしてくれたことが嬉しかった。
「じゃあ、明日放課後、駅前で待ち合わせってことで。」
「お前、決めるの早いな。」
李斗はクスッと笑いながらも、承諾してくれた。それを聞いて、私は嬉しさを隠しきれなかった。
次の日、待ち合わせ場所に着くと、李斗はいつも通り、だらっとした格好で立っていた。どこか気だるげな姿勢で、相変わらず面倒くさそうにしているけれど、私はちょっとだけ安心した。
「遅いな、華嶺。」
「ごめん、ちょっとバタバタしちゃって。」
「ん、別に気にしないけど。」
私たちはそのまま、駅前を歩き始めた。特に行き先を決めていたわけではなかったけれど、なんとなく歩きながら話をするのが心地よかった。
「こんな感じで出かけるの、久しぶりかも。」
「そうか?」
李斗が少し不思議そうに私を見ながら言う。私は少し照れくさくなって、顔を背けた。
「うん、いつも家にこもってることが多かったから。」
「お前、真面目すぎだろ。」
李斗が苦笑しながら言ったその言葉に、私は少しだけハッとした。確かに、私は普段から周りの期待に応えようとしすぎて、何かを楽しむことを忘れていたかもしれない。
その時、李斗が突然私の方に視線を向けた。
「今日は、相合傘でもして帰るか?」
私はその提案に思わず驚き、顔を赤くして言った。
「え…!?」
「何だよ、嫌か?」
「いや、別に…」
私はどう返していいのか分からず、ただドキドキしながら李斗を見上げた。
「じゃあ、相合傘ってことで決まりな。」
李斗はニヤリと笑って、傘を差し出した。その一言に、私はもう心臓がドキドキしてしまっていた。まさか、こんなに早く「恋」の中に踏み込むことになるなんて思っていなかったけれど、今はただ、彼と一緒に歩く時間が嬉しかった。…こんどは日傘。傘が小さくて私の顔は多分もう
そして、二人は並んで歩きながら、少しずつ距離を縮めていった。
これからの「お試し恋愛」は、どんな展開を見せるのだろう。