熱と頭痛と日常と

北海道が沖縄より暑いような日、渡辺の体調が悪くなっても仕方ない。収録から、とりあえず自分の家に帰って来た。

渡辺ー頭、痛いし・・。

不安定な天気は渡辺には大敵。

なんとか仕事を終え、家のソファに倒れ込む。

着替えなきゃ、薬飲まなきゃ、思うのに、身体が動いてくれない。

ソファにいつも掛けているシーツ。

なんとか服を脱ぎ捨て包まる。

渡辺ーひかる・・。

涙が滲んでくる。ここにいない愛しい人。いつの間にか眠っていた。

こんな日は参ってるのが、分かる岩本。車に乗って渡辺の家に向かう。

ソファにシーツの塊がある。

床に脱ぎ捨てた服。ため息を吐きながら、服を拾う。

岩本ー翔太？

シーツをそっとめくる。涙の痕。

体温計を持ってくる。渡辺は起きる気配はない。

38.9度。

岩本ーちょっと無理したか。

岩本は、いつもの病院に電話した。

岩本ーすみません、渡辺が38.9度あるんですが、連れて行って大丈夫ですか？

大森ーごめんなさい、今日は、熱中症の患者さんが多くて、まだ処置の終わってない人がいるの。連れてきたら、目立つわ。

岩本ーじゃあ、もう少し家で、様子を見て、また電話します。

大森ーこちらから電話します。

岩本ーありがとうございます。

アイスノンと冷えピタを用意して、渡辺の元に行く。

下着だけで寝ている。Tシャツをもってきて、渡辺を起こす。

岩本ー翔太？翔太！

渡辺ー・・ひかる・・。

岩本ーそんな格好で寝るな。Tシャツ着て。

渡辺ー熱い。

岩本ー熱あるんだから、仕方ない。

渡辺ーひかる・・氷。

アイスノンを敷き、冷えピタを貼り、Tシャツを着せ、氷を取りに行く。器に、氷を３つほど入れ持って行く。

岩本ー翔太、氷。

渡辺ーあ〜。

岩本ー病院な、今、熱中症の人がいっぱいなんだ、行けるようになったら、大森さんが連絡くれる。

渡辺ーんっ〜熱い。

岩本ーほれ、氷。

渡辺が両手を伸ばす。岩本の首に腕を絡ませてキス。

目が、熱でウルウルしている。

岩本は、もう一度熱を測る。

39.4度。

岩本ーありゃ、上がってる。熱いなぁ。

渡辺ーんっんっ〜。氷。

岩本ー待ってな。

渡辺ーひかる・・頭痛い・・。

岩本ーえっ、頭痛も？

渡辺は、ポロポロ泣きながら岩本に手を伸ばす。

抱きしめて、氷を口に入れ、寝かそうとした。

抱きついて離れない。

渡辺ーひかる、ぎゅっとして？

岩本ーん、寝れるか？

渡辺ーん〜ん。

岩本ー何時になるか、分かんないから寝て。

渡辺ー頭痛いし熱いし、寝れないの！

岩本ー分かった分かった、怒るな。

渡辺ーシャワー浴びたい。

岩本ーえっ、だめだろ。

渡辺ー熱いの！連れてって！

汗で気持ち悪いのだろう。岩本は渡辺を抱き抱え、シャワーを浴びに行く。床に座らせ、温いシャワーを掛ける。

渡辺ーひかる、もっと冷たいのがいい。

岩本ー風邪引く。ほら、そっちの足出して。

渡辺ーぶ〜。熱い。

なんとかシャワー浴びて出てきた。

病院からは、まだ連絡はない。

熱は、39度辺りを行ったり来たり。

氷ばかり欲しがる。

渡辺ーひかる！氷ったら！

岩本ーだめ、ちゃんとご飯食べな。

渡辺ーんっ〜んっ、いらない。

岩本ーじゃあ、氷もだめ。

渡辺ー意地悪！

岩本ーおっ、電話だ。

大森看護師から、今から来てくださいと言われた。

嫌がる渡辺に、Tシャツを着せ短パンを履かせ、シーツで包んで抱えて行った。

大森ー今何度かしら？

岩本ー39.4です。

大森ー頭痛は？

岩本ーあります。

大森ーいつもの部屋も埋まってるからVIPの部屋へ。

岩本ーはい。あっ、氷もらえますか？食べたいらしいです。

大森ーな〜に、お口無くなっちゃったの？氷いらない？

渡辺ーいります。

大森ーふふふ、持って来ます。

ベッドで頭から布団を被り、みの虫状態。

岩本ー翔太、熱いからやめておけ。

渡辺ーうるさい！あっ、ごめん。

岩本ー熱上がるから、な？

渡辺ー呆れてない？

岩本ー大森さんが？俺が呆れてる。

渡辺ーひかる！

岩本ー冗談だ、大人しく寝ろ。

氷と、点滴がきた。

大森に、ほどほどにと言われ氷をもらう。

渡辺ーひかる、氷。

岩本ーん、カラカラ。

渡辺ーんっんっ。カラカラ。

口移しで氷をもらう渡辺。

カラカラ言わせて満足そう。点滴が終わるまでずっと氷ばかりというわけにいかない。

岩本ー翔太、なんか食べられるの買ってくる。

渡辺ー氷でいい。

岩本ー連れて帰らないけど？

渡辺ープリン。

岩本ー氷、勝手に食べるな？帰らせないから。

渡辺ー分かった分かった。

病院内のコンビニで、プリンを買う。もちろん岩本の分もある。

部屋に戻ると、ちょうど氷に手を出しているところだった。

岩本ープリン食べて家に帰るか、氷食べてここに泊まるか・・

渡辺ープリン！

岩本ーほれ、プリン。

渡辺ーあ〜・・。

岩本ー甘ったれ。

渡辺にプリンを食べさせて、自分も食べる。点滴が終わるのも、後ちょっと。

大森ー失礼します、何が食べられました？

岩本ープリン食べました。

大森ー氷はやめましょうね。

渡辺ーあっ、あ〜。

大森ー泊まりますか？

渡辺ーもう、いりません。

大森ー帰って大丈夫ですよ。

岩本ーありがとうございます。

渡辺ーありがとうございます。

大森ー一応、熱測って？

渡辺ー37.0です。

大森ー無駄だと思うけど、大人しくね。

渡辺ーひかる！帰る！

岩本ーこらこら、失礼します。

大森ーあら、歩かないの？

岩本ー来るとき、抱えて来たんでサンダルがないんです。

大森ーふふふ。

岩本も渡辺も、背負って帰るということはない。抱きついていく。

岩本は抱えて駐車場に着き、背負えば良かったと思った。

岩本の家。

渡辺ーもう身体軽い。

岩本ーこらこら、寝るんだ。

渡辺ーふふふ、無駄だって。

じっと岩本を見つめる。天を仰ぎ渡辺を見つめ、ため息を吐き服を脱がしていく。

渡辺ーふふふ、ひかる〜。

岩本ー熱上がるんですけど。

渡辺ー大丈夫、今日はそんな気がする。

岩本ーばか。

渡辺ーはぁ・・ひかる・・早く・・

指・・いや・・。

岩本ー怪我して病院行きたいか？

渡辺ーんっ〜・・はぁ・・はっ・・はっ・・もういい・・。

渡辺ーおく・・ちょうだい・・ひかる・・。

妖しく笑う渡辺。学習しない2人。

病院行きだけは避けたい岩本。

ほんのり温かい渡辺の身体。岩本は、大事に抱きしめる。

渡辺ーんっんっ〜んっ。

岩本ーどうした？

渡辺ー俺には・・ひかるがいる・・から大丈夫・・。

渡辺ーもっと・・ひかる・・はぁ・・はぁ・・。

渡辺ーあっ・・あっ・・だめ・・まだだめ・・ひかる・・。

渡辺ーんっ・・んっ・・はぁ・・あぁ・・んっんっ〜。

岩本ーおっと、翔太？

渡辺ーひかる、良かった？

岩本ーあぁ・・熱は？

37.2度。

岩本ー大丈夫みたいだな。

渡辺ー言ったろ？

岩本ープリンまだあるぞ。

渡辺ー食べたい。

シャワー浴びて、プリン食べて、2人はシーツの中。

いつも、こうなら、いいのに。