テラーノベル
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俺には、ライバルがいる。
成績優秀で品行方正で、なんでもできる自慢の幼馴染、mf裙だ。クールで真面目そうな見た目とは裏腹に、面白くて盛り上げ上手な俺のライバル。
そんなライバルが、今、俺の目の前で泣いている。
「ttッ……やだよ、行きたくないよ……ッ」
なんでも、中学校を卒業したらこの町から引っ越していくらしい。親の仕事が大きく成功して、本社があるほうに移り住む、と。
めでたいこと、なはずなのに。
素直におめでとうが、言えなかった。
「行きたくない」と泣くmf裙を見て、俺と同じなんだと少しだけ、嬉しく思ってしまった。mf裙の心の、1番柔らかいところに。触れたような気がした。
「mf裙!俺も、mf裙と離れたくない……やけど!お別れまでにはまだ半年あるやろ!」
涙目のまま、mf裙がこちらを見上げる。その潤んだ瞳には、俺以外映っていない。 その優越感で、自然と笑みが浮かぶ。
「あと半年で!なんか一個でもmf裙に勝つから!そしたら連絡先交換して、高校上がってもたまには一緒に遊ぼうや!」
俺はずっと、mf裙に負け続けていた。
勉強はもちろん、運動もなんでもそつなくこなすmf裙には、なにひとつとして勝てたことがない。
「……ふふっ、なにそれ笑」
やっと、笑ってくれた。
俺は、mf裙の笑顔が大好きだ。ふざけ合っているときの爆笑した顔も、本を読んでクスッと笑う顔も、綺麗なものを見た時の微笑みも。どれも綺麗で、愛おしい。
この気持ちは友情なんかじゃない。
れっきとした愛情で、恋情だ。
「じゃあさ……もし、ttが俺に勝てなかったら。俺のお願いひとつ、聞いてもらおうかな」
ニヤッと悪戯っぽく笑ったmf裙に、俺は満面の笑みを返す。
「上等!ぜ〜ったい!勝つからな!」
「これまで14年間、俺に勝てたことないでしょ?最後まで有終の美、飾らせてもらうよ」
窓の外には、大輪の向日葵がこの猛暑にも負けず、きらきら輝いて咲いていた。
それから、俺の努力の日々が始まった。
今まで以上に勉強して、学校行事は周りも巻き込んで全力で取り組んで。授業も寝ないでちゃんと聞くようにした。
俺の評価はぐんぐんと上がっていったけど、mf裙にはいつもあと一歩届かなかった。
そうして迎えた、期末テスト。mf裙と勝負ができるのも、これが最後だ。
今まででいちばんの手応えだった。いつもつまづいて解けない応用問題もすらすら解けた。記述も完璧に解けたし、自己採点もかなりよかった。
……運命の、順位が張り出される。
いちばん上に書かれていたのは、mf裙の名前だった。……それ以上は見たくなくて、勢いよく俯く。
「っは〜……やっぱ、敵わんかったぁ〜…」
大きくため息をついた。後ろからmf裙が駆け寄ってきて、俺の肩を叩いた。
「おめでと、tt」
「へ?何が?今回も、一位はmf裙やったやろ」
「え?」
mf裙が意味わからんことを言う。そしてきょとんと目を丸くして、順位表を指差す。つられて俺も順位表を見る。
そこに書いていたのは、
『1:mf 487点
1:tt 487点』
の文字だった。
「tt、いちばん上の俺の名前だけ見て落ち込んでたんでしょ。ふふ、早とちりだったね?」
「てことは俺、ついに ……って、勝ってないやん!? 」
俺は、『勝ったら連絡先を交換してくれ』と言った、のに……これは、引き分け。勝ててない…。
一度喜んだ分、今度はさっきよりもひどくがっかりした。つらい。
mf裙の手が、俺の頭を撫でる。
「ふふ、勝負は俺の勝ちだね。俺は勝ったら、
なんて言ってないもん」
「……ずーるーいーっ!!」
「あははっ!ずるくなんてないよ、ちゃんと言ったじゃん笑」
mf裙は楽しそうに笑う。
あぁ、やっぱり可愛いな、と、そう思った。可愛いけど!可愛いけど、やっぱり悔しい。
悔しがる俺を見て、楽しそうに君は笑う。
「じゃあ、お願い事。考えておこっかな」
そうして、あっけなく。俺たちの勝負は、なんとも言えない結果に終わった。
それから2週間。卒業式の日がやってきた。
これが君と過ごす、最後の日になる。
いつも通りの通学路を進む。うちの学校の桜は、卒業式にも入学式にも咲くように早咲きの桜と遅咲きの桜が植えられている。見慣れた景色も、なんだかいつもと違うような気がする。
桜が舞う中、俺たちの卒業式はつつがなく行われた。
卒業証書授与では、俺たちよりも先生の方が泣いていた。
mf裙の卒業生代表の言葉で泣いた。
在校生からの言葉で泣いた。
あぁ、卒業してしまうんだ、これで終わりなんだという実感が、ひとつひとつ湧いてくる。
終わりたくない、終わりたくない。
君と過ごした『今』を、過去のものにはしたくない。
最後の校歌、そのピアノの一音一音ですら勿体無くて、自然と頬を涙が伝った。
「tt!写真撮ろうよ!」
意外にも、式が終わってから声をかけたのは君からだった。もちろん二つ返事で了承して、家族が待つ校門へ向かう。
「ねぇ、tt。勝負の話、覚えてる?」
「……っ、もちろん覚えてるわ!こうなったらなんでもやったる!」
mf裙は楽しそうに一歩前に出て、くるっと振り返る。mf裙の後ろで、早咲きの桜が散り始めていた。
「お願い事、思いつかなかったからさ。俺がふと思いついたときに連絡取れるように、連絡先交換してよ」
「……へ?」
「だーかーら!思いつかなかったの!」
口調こそ少し怒ったように聞こえるが、mf裙の表情は悪戯が成功した子供のように無邪気で、楽しそうだった。
「……だから、いつか!俺がお願い事を思いついたとき、会おう!会って、遊ぼ!」
mf裙の頬を、透明な雫が伝った。
顔をくしゃっと歪めながら、mf裙は笑う。
桜はもう散り始めた。だけど、次の桜がつぼみを暖め始めている。
春は、終わらない。俺たちの関係も、続いていく。
桜の花びらが、ひらり、と舞った。
コメント
2件
いつもノベルには読切をつけるのを忘れない主ですが、今回にはついていないということは……???
読了したわ!めっちゃ良かった~青春って感じでじーんときた😢 幼馴染でライバルで、しかもお互い離れたくないって気持ちが伝わってきて、特に「引き分け」のオチには胸が熱くなった。ずるいけど可愛いよmf裙…! 桜の描写も綺麗で、最後の「春は終わらない」って台詞がめちゃくちゃ刺さった。続き、絶対読みたい!
#🌈🍑
RIN🌙🐈⬛
65
#デスノート