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注意
桃赤
死ネタ
少女レイというボカロを参考にしたものです。
読む前に考察を軽く見た方が分かりやすいと思われます。
若干のアレンジあり
下手です。急展開すぎます。
上記理解できる方のみ。
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あの夏、君が死んだ。
当時のうるさい蝉の声と、陽炎と、
彼が最後に見せた横顔が、
何度も何度もフラッシュバックする。
あの日の彼は、まるで夏の光そのものみたいに綺麗だった。
入道雲が浮かぶ真っ青な空を背景に、踏切へ飛び出した彼の姿が忘れられない。
あまりにも美しかった。
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彼と最初に話したのはいつだったか。
確か、新学期早々の席替えで隣になったのが最初だった気がする。
つい先月、転校してきたと言った彼。
初めましてなのにも関わらず、何回も話しかけてくれた。
死ぬほど嬉しかった。
彼は
性格も明るくて、優しくて、穏やかで。
話題作りも上手で。人付き合いも得意で。
内面だけじゃない。
外見も、どこか中性的で整っていて、絵から抜け出してきたみたいだった。
さらさらと靡く髪、透けるような白い肌、
俺とは真反対の人間だった。
全部が羨ましかった。
そんな彼と毎日話した。
彼しか話す相手がいないからだったのだけれども。
真反対の俺らは意外にも気が合った。
不満をこぼしても、ただじっと耳を傾けてくれた。
俺の全てを受け入れてくれて、認めてくれた。
気づけば、彼は俺の唯一の居場所になってた。
クラスのどこにも居場所がなかった俺にとって、どれだけ彼が救いだったか。
彼と一緒にいる時だけは、自分が自分でいてもいいんだと思えた。
気楽、なんて言葉で済ませるには、少し綺麗すぎる。
もっと不格好で、頼りない、そんな感情だった。
彼はいつだって笑っていた。
誰にでも平等に優しくて、ちゃんと話を聞いて、ちゃんと応える。
そういうのって簡単なようでいて、誰にでもできることじゃない。
ましてや俺には、絶対にできないことだった。
同級生とは思えないほど格好よく見えた。
心が惹かれた。
好きになってしまった。
所謂、恋というもの。
__
恋とはいえど、
もうどうしようもなく手のつけようがないほどの、恋だった。
ただ手を繋ぎたいとか、隣に居たいとか、そういう甘い感情なんて俺にはなかった。
だって愛し方も愛され方も分からない。
俺が彼に向けたのは、醜い独占欲。
紛れもなく、自己満足のための執着だった。
これを恋と呼べるだろうか。
彼を誰にも盗られたくなくて、俺だけを必要としてほしくて、彼の特別でありたかった。彼が困ったとき、助けを求められる唯一の存在でありたかった。居場所でありたかった。
最低なものだろ。
そのうち、彼の笑顔が憎らしくなった。
誰にでも向けるあの無邪気な愛想が、俺にとっては裏切りとしか思えなかった。
どうすれば俺のものに。
どうすれば彼の居場所に。
浮かび上がるのは、狂おしい考え。
居場所が無かった俺が彼に縋ったように、彼の居場所を奪えば俺に縋りに来るのではないか。
居場所を奪うというのは、やはりいじめ。
クラスメイト全員で。
クラスメイトなんて誰が仕掛けたかも分からない花瓶に、深く考えもせず乗っかるものだ。
花瓶を置けば、いじめの標的は彼に移される。
__
そうと考えれば、行動に移すのも遅くはなかった。
朝イチに教室へ駆け込み、彼の机に花瓶を置いて逃げた。
やって来たクラスメイトはそれを見て嘲笑うばかり。
莉犬、なあ助けが欲しかっただろ。
俺に縋ればよかったんだ。
「莉犬、それ、」
「あー、なんか俺死んだと思われてるみたい、?」
「大丈夫だから、全然気にしてないよ」
「ほら、早くさー次移動教室だよ?」
嗚呼、なぜ彼はあんなにも優しかったのだろう。
声をかけるが、話を逸らすばかり。
いじめにも彼はねじ曲がることなんてなかった。
なぜ、なぜいじめを受けているというのに、クラスメイトへ自分から話しかけにいったのか。
当時の俺には分からなかったんだ。
毎日毎日仕掛けた。
靴箱に画鋲を入れたのは俺だったんだよ。
鞄を校庭に投げ捨てたのは俺だったんだよ。
「莉犬、最近、大丈夫?」
「うん。転校生特有のさ、そーゆーいじめあるじゃん。この前さ、アニメで見たんだって」
「アニメの見すぎかな?」
助けてって言えよ。
どこまでも自分勝手な俺を頼って。
「さとみくんはいいね、強くてさ、」
━
それからあの夏の日。
空は呆れるほど青かった。
止まず鳴き続ける蝉。
きらきらと輝く海。
限って綺麗な景色。
耐えきれなくなった莉犬は踏切へと。
死んだ。
最愛の人が死んだ。
誰もいない踏切の前で、俺は膝をついた。
馬鹿みたいだった。
居場所を壊せば、彼が俺に縋ってくるなんて、どこまで浅ましくて、醜い考えだったんだ。
俺が殺したんだ。
正真正銘。
あんなに綺麗な笑顔を、
あんなに真っ直ぐな心を、
俺が、自分の手で潰したんだ。
手に入らなければ壊してしまえばいい、
そんな感情が恋であるはずがない。
壊れるまで気付けなかった俺が、今更何を叫んでも意味なんてなかった。
━
彼の遺体は原型を留めていなかった。
歪んだ体、ちぎれそうな腕、血だらけの衣服。
これで彼を見るのが最後なんて気が狂いそうだった。
「さとみくんは強いね」
そう言った彼の姿が鮮明に浮かび上がる。
俺は何一つ強くなかったんだ。
自分の気持ちも、衝動も、彼の笑顔さえも守れなかった。
挙句には彼を殺してしまった。
俺を許して。
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俺には莉犬しか居場所が無かったんだ。
莉犬のいない世界でどう生きていけばいい。
殺した俺が言うなんてあまりにも残酷すぎる。
月日が経った今でもあの日の光景が忘れられない。
最期まで綺麗で儚くて美しかった。
なぁ莉犬愛してくれよ。
愛し合いたい。
俺を許してください。
莉犬に会いたい。
莉犬に触れたい。
ナイフを使おうか。
あの夏に続く終点に、俺も身を投げてしまおうか。
「さとみくんっ、!」
透き通った世界で二人きり愛し合おう莉犬。
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お久しぶりです。
桃さんが活休したのがショックでショックで堪りません。
リクエスト頂いてるのに、全然関係ない話になっちゃってすみません(;_;)
書き切るよう頑張ります。