君が歌う旋律
「〜〜〜♪♪」
優しい音色が俺の耳に響く。えとさんは、歌が上手い。柔らかい母音の音に、耳を揉まれた。子音はコロコロと木琴のように鳴り響く。……聞いていてとても心地いい。
いつの間にか俺は目をつぶって、夢中で聞いていた。皿洗いの音と合わさると、一種の合奏みたいだ。
「ゆあんくん、どうしたの?」
どうやら皿洗いが終わったらしいえとさんの声が上から降ってくる。ぽつり、ぽつり、とシャワーみたいに降り注いだ。もう、なんか全部良いわ。
「いや、えとさん歌上手いなって」
「へぇ〜……」
へー、なんて文面では無愛想に見えるけど、その耳は真っ赤だ。――えとさんは、褒められるのが好き。特に、俺から褒められるのが嬉しいみたいで、いつも照れ照れしちゃう。
俺、えとさんの歌も好きだけど、声も好き。
ちょっと低めの音色が、落ち着く。
でも夜になると、子猫ちゃんみたいに高い声を出して、俺に甘えてくるの。そのギャップが……たまらない。
「んぁ……ふっ、……ぁ」
「んふ、ちゅ、……ふぅ」
思いっきり舌を入れてかき混ぜる。ぐちゅぐちゅ、といやらしい水音が耳を通り過ぎていった。
段々してる間に頭がぼー、としてきちゃうけど、やめられない。口から漏れ出すえとさんの吐息があまりにも……その…………アレで、中々やめるタイミングが分からないのだ。
えとさんが俺の肩をばんばんと叩いた。最初は可愛い力だったのだけど、次第にその力は強くなっていく。え、普通に痛い。
「ぷは、はぁ……はぁ……♡」
えとさんの唇から離すと、つつつ、とよだれが口元を垂れる。それを手の甲で軽く拭いたあと、俺はぎらり、と獣のような瞳を覗かせた。
えとさんの腰が無意識に揺れる。背筋をなぞってやればぞくぞくと欲しそうに震えた。
…………どこから喰ってやろうかな。
これからくる甘い夜について、俺は楽しそうに顔を歪めた。
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