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鷹槻れん

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鷹槻れん

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#恋愛
水無月 京
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#オフィスラブ
草原草原

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すっかり忘れていたけれど、祖父たちの前では下の名前で呼び合う約束だった。
初めて“朝陽さん”と実際に口にしてみると、意識しすぎて顔から火が出そうになるくらい恥ずかしい。
「まぶたが腫れて目が真っ赤だな」
ひとりで落ち着きなくおろおろとしている私の顔を、彼が心配そうに覗き込む。
「さっきからずっと泣いているせいだ。今日だけはブサイクでも許してやってほしい」
冗談だとばかりに祖父は言いながらクスクスと笑っている。
鏡を見ていないから自分ではわからないけれど、右手でそっとまぶたに触れてみたら、たしかに腫れぼったい感じがした。
「それと朝陽くん、悪いが冴実をここから連れ出してくれないか?」
「おじいちゃん」
祖父が顔をしかめつつ彼に頼みごとをしているのを聞いて、私はあわてて止めに入った。
「ここにいても泣いてばかりだろ。心配ならまた明日来ればいい。今はたっちゃんがいてくれるから大丈夫だ」
入院の準備を終えた母がこのあとやって来るとはいえ、身内ではない辰巳さんに任せて私が先に帰宅するわけにはいかない。
ブンブンと首を横に振ったけれど、隣にいた辰巳さんがやさしい笑みを浮かべて私の背中を擦った。
うなずいているところを見ると、そうしなさい、という意味だろう。
「倫治さん、彼女の気持ちが落ち着くように車を走らせてきてもいいですか?」
「そうしてくれるとありがたい。家にいるより外の空気を吸って気分転換したほうがいいよな。朝陽くん、頼むよ」
祖父の言葉に辰巳さんも再びウンウンとうなずき、ほら、と私の腕をそっと引っ張る。
促された私は立ち上がり、祖父と辰巳さんにあいさつをしてから点滴室の部屋を出たものの、彼が今からどこに向かおうとしているのかまったく見当がつかなかった。
私を元気付けるために、話をしながらあてもなくブラブラするつもりだろうか。
病院の駐車場に停められていた車は、当たり前だがこの前のキャンピングカーとはまったく違っていた。
だけど高級そうだという部分は共通していて、左半分が赤十字で右半分が蛇のようなデザインのカッコいいエンブレムが付いているので、これも外国の車のようだ。
彼が黒いボディの助手席の扉を開けると、車内はラグジュアリーな空間が広がっていた。
「素敵な車ですね」
「本革のレザーシートだから座り心地はいいよ。さぁ、乗って」
「はい」
普通のシートベルトなのに、しっかりと差し込めなくて手間取っていたら、運転席に乗り込んできた彼が手を伸ばして助けてくれた。
顔の距離がぐっと近くなり、それだけでドキドキと鼓動が早まってくる。
「すみません、緊張して……」
「君は俺の前ではいつも緊張してるね。まぁ……今日は俺もだけど」
「え?」
言われた意味がよくわからなくて聞き返してみたが、彼は「なんでもない」と小さくつぶやてエンジンをかけた。
そして、車内に置いてあったコンビニのレジ袋からお茶のペットボトルを取り出して私に手渡してくる。
「さっき買ったばかりだからまだ冷えてると思う」
「ありがとうございます」
「喉渇いてるだろう?」
たしかに彼の言うとおり、弱弱しい祖父の姿を見て取り乱した私は泣きじゃくってしまったから、少し前から喉がカラカラだった。
涙をたくさん流したせいなのか、身体が水分を欲していた。
お茶がおいしくてゴクゴクと勢いよく喉に流し込むと、なんだかホッとして緊張がほぐれてくる。
「倫治さんが倒れたって聞いて驚いたけど、大丈夫そうでよかった。また日をあらためてお見舞いにうかがうよ」
ハンドルに右手を乗せて運転をしている彼が、前を向いたままそう言った。車は幹線道路をすいすいと進んでいく。
「お騒がせしてすみませんでした。辰巳さんにも本当にお世話になって……どうお礼をすればいいか……」
「倫治さんは大切な友達だから当然だ。じいさんのことは気にしなくていい」
コメント
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読み終えました。第47話、お疲れさまです! 「朝陽さん」と呼ぶだけで顔から火が出そうになる主人公の心情が、本当に瑞々しくてドキドキしました。車内でシートベルトを直してもらう距離の近さ、そして彼が「今日は俺もだけど」と小さくこぼすところ――あの一瞬の空気感がたまらなく好きです。お見舞いの重い空気のなか、お茶を飲んでホッとする流れもリアルで、彼のさりげない優しさが沁みました。 続きが待ち遠しいです!