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「ほんなら、さっそく鍛え直すで」
大阪はにやりと笑い、鳥取の肩を軽く叩いた。その瞬間——鳥取の足元が崩れた。
「えっ——!? うわぁぁぁ!!」
鳥取の体が砂丘の下へと滑り落ちていく。砂が舞い上がり、視界が一瞬で奪われる。なんとか踏ん張ろうとするが、足が埋まってバランスが取れない。
「お前の弱点はな、基礎の基礎や。戦い方も、体の使い方も、全部一から叩き込む!」
砂丘の上から、大阪の声が響く。
「まずはこの**“鳥取砂丘特訓”**や! 砂の中を全力で走り抜けるんや!」
鳥取は唖然とした。
「……え、普通に無理じゃない?」
足元は不安定で、少しでも力を入れると沈み込む。何より、広島との戦いでボロボロの体では満足に動けそうになかった。
「無理やと思た時が、限界の始まりや」
大阪が跳び降りる。信じられない速さで砂の上を駆け降り、鳥取の前に立った。
「戦いは、動き続けたやつが勝つんや。倒れたら終わりやない。立ち上がるまでが勝負や!」
その言葉に、鳥取の胸が熱くなる。
「……やってやる!!」
鳥取は砂の中に足を踏み入れ、力を込める。しかし、足が沈み込んで思うように動けない。
「くそっ、ちょっとでも速く……!」
もがきながら前へ進む。砂の抵抗は重く、息がすぐに切れる。それでも、鳥取は歯を食いしばった。
何度も転びながらも、鳥取は少しずつコツを掴み始めていた。砂に沈まないように足の運びを工夫し、できるだけ体を軽くするように意識する。
——五時間後。
「ぜぇ……はぁ……」
鳥取は倒れ込んだ。全身が汗でびっしょりだ。砂丘を何度も駆け上がり、駆け下りる。ただそれだけのことが、これほどまでに過酷だったとは。
「おっしゃ、ええ感じや」
大阪が満足そうに頷く。
「お前、吸収は早いな。よっしゃ、次は”瞬発力”を鍛えるで!」
大阪がポケットから取り出したのは、小さな団子だった。
「……え?」
鳥取が首をかしげた瞬間——団子が宙に投げられた。
「ほな、取ってみ!」
団子が砂丘の斜面を転がる。鳥取は慌てて駆け出した。
「え、いや、こんなん普通に取れ——」
——そう思った瞬間。
「速っっ!!?」
団子が信じられないスピードで転がり落ちていく。まるで意志を持っているかのように、鳥取の手をするりとすり抜ける。
「言い忘れたけど、それ”串カツ屋の秘伝団子”や」
大阪がにやりと笑う。
「食うたら、体力回復やで。でも……」
団子は次々と斜面を転がり、どんどん遠ざかっていく。
「捕まえられんかったら、今日は飯抜きや」
「えぇぇぇ!?」
砂丘を駆ける鳥取。
それを見下ろしながら、満足そうに腕を組む大阪。
こうして、鳥取の地獄の修行が始まった。
——次回、「修行編② 砂丘のスピードスター誕生!」