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第一章・修行編③:「大阪の猛攻をかわしきれ!」
「よっしゃ、次は本番や!」 大阪の言葉が響くと同時に、鳥取の目の前で風を切って拳が飛んできた。鳥取は驚きと恐怖で一瞬体が固まる。今の彼にとって、これこそがまさに「実戦」だった。
「待て!待て!!」鳥取は慌てて後ろに飛び退く。彼の脳内で、さっきまでの特訓の成果をすぐにでも使おうと必死に考える。 ——でも、無理だ。大阪のスピード、強さ、すべてが桁外れだ。 鳥取は砂の上を駆けながら、心の中で叫んだ。広島との戦いで受けた悔しさが胸を締め付ける。それを乗り越えたくて、どうしても力を手に入れたかった。 「おおっ、かわすんか?」 大阪の声が背後から聞こえる。鳥取はそのまま、前方にジャンプした。ぎりぎりで大阪の拳が彼の頭上をかすめる。
「よし!」 鳥取の口元が少しだけほころんだ。ようやく、少しだけ手応えを感じることができた。 「ほう、なかなかやるやんけ。けど、まだまだやな」 大阪の声が響き、すぐに次の攻撃が繰り出された。鳥取は咄嗟に左へ飛び退き、何とか回避したが、すぐに次の一撃が迫ってきた。
「ぐっ、どんどん来る!」 体が限界を感じてきた。砂の上での素早い動きは思った以上にしんどく、足が鈍くなりつつある。 ——これじゃいけない。広島に勝つためには、こんなところで立ち止まっているわけにはいかない! 鳥取は再び意識を集中させる。砂丘の不安定な地面、そこを駆けるために自分が学んだコツを最大限に活かすんだ。
「お前、すでに少しだけ変わったな」 大阪の声が今度は、どこか感心したように聞こえた。その瞬間、鳥取は何かをつかんだ気がした。 「動く!」 鳥取は砂を蹴り、次の攻撃を避けると同時に反撃を意識して体をひねる。今までと違って、スムーズに動けるようになってきた。まるで砂の上を自由に歩いているかのようだ。 「よし、今だ!」 鳥取はそのまま前へ駆け出した。大阪が反応するよりも早く、鳥取は一気に距離を縮める。その瞬間、大阪の眼前に迫る。
「うおっ!?」 大阪の驚いた顔が一瞬だけ見えた。すぐに彼は身構えたが、鳥取の動きは止まらない。全力で飛び込むと、そこには――大阪の腹部に手を伸ばしている自分がいた。 「……捕まえた!!」 鳥取の心臓が高鳴る。ついに、大阪の攻撃をかわしきったうえ、反撃に転じることができたのだ。 「おおっ、やったな、鳥取」 大阪は驚きとともに、嬉しそうに笑った。彼の目は、いつものように鋭く、そして何よりも満足げだった。 「さすがや、よくやったな」 「ふぅ……」 鳥取は思わず息をつき、肩を上下にさせる。しかし、その疲れも心地よく感じられた。自分の成長を実感できた瞬間だったからだ。 「でも、これじゃ終わりやないで」 大阪が言うと、鳥取は息を切らしながらも、目を輝かせて答える。 「次は何ですか!?」 大阪はにやりと笑いながら、鳥取に向かって拳を突き出した。 「次は、さらに強い相手や。お前が本当に広島に勝つためには、まだまだ特訓が必要やで!」 その言葉に、鳥取の心は再び熱く燃え上がった。