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このお話は「女子高生、巻き込まれる」のおまけ話になっています。
新参の為キャラの口調が違ったり、弊本丸の独自解釈があります。
なんでも許せる方のみご覧下さい
「あの子を主と呼ぶたいみんぐ」
彼女の事は既に信頼していた。だからこそ「主」とそう呼びたかった。
だけど僕は前の主を裏切る覚悟がなかった。例えどんなに酷い扱いを受けても昔の姿がよぎってしまって呼べなかった。
そうして時間は過ぎていった。
ある日何度か誘っていた刀剣男士が「そんなに言うなら」と来てくれそうな雰囲気になっていた。嬉しかった。だからこそ油断していた。
「いい加減にしろ燭台切光忠」
「お前は今の主を裏切るのか」
「…っいつの間に……それにそういうつもりじゃ…」
「お前もだお前まで主を裏切るというのか」
「彼は関係ない!僕が勝手に誘っただけだよ!」
穢れが増えて気配が掴みづらくなっていたらしい。僕は複数の気配に気付けなかった
振り返った時には遅かったらしい。
スパッと刀が自分の体を斬り付けていた。
「…っ!?」
痛い。赤黒い液体がボタボタと垂れていく
「くっ…!」
間一髪で二振り目は弾いたがやはり複数には敵わない。練度だってまだ低い。
いつの間にかあちこち斬られて出血が止まらない
限界が来てその場に倒れ込んだ。もう折れるだろうと判断したのだろう。刀を納めて後ろに振り返った。
(今だ…!!!)
全力で鉛のように重くなった身体を引き上げ足に力を入れてあの子がいる離れに向かう。
なぜかあの離れに行かなければならないと思った。
あの子の笑顔をもう一度見たい。
気が付けば離れの玄関前だった。
全身からは血が垂れ続けて意識を保つ事すらやっとだ。
最後の力を振り絞りながらボタンを押す
「燭台切…??」
「どうしたんですかその傷」
「…っはは…少しやらかしちゃって…」
なんて顔をしてるんだ。そんな顔をせずにまた笑ってくれないかな。今の状況じゃ無理か…
そう思った時には視界が暗転していた。
「あれ…ここは…」
どうやらあのまま倒れてしまったらしい。
「傷が無くなってる。刀身も…刃こぼれ1つない」
この部屋には見覚えがある。恐らく手入れ部屋だろう。
自分の寝ていた横は少し散らかった状態で打ち粉や手入れ用油の入った瓶、布がいくつかあった。先程まで使っていたような跡がいくつかある
時計を見ると深夜の3時…かなり遅い時間まで付きっきりで手入れしてくれていたのだろう。
「少し外の空気を吸おう」
少しまだ重い身体を起こして襖を開ける。
なるべく音は立てないように玄関へ向かう
その途中で聞こえてきた。薬研くんと彼女の会話が
「…突然こんな所へ連れてこられた挙句命を奪われかけたりなんなり散々だろ?嫌じゃないのか?」
「まぁ確かに最初は怖くて堪らなかったです。起きたらいきなり丸太に括り付けられて刀向けられるしあちこち血まみれだし嫌にもなりました。」
…当たり前だ僕だってそんな事されたら嫌になる。
「なら」
「けど、そんな事よりもこの本丸がこれ以上壊れていく方が嫌でした。元は皆さんいい人なんでしょう。燭台切から聞きました。ここの主だった人も笑顔が素敵な方だったと」
「…」
「何より誰かが傷付いたり、悲しむのが嫌だったんです。悲しむ顔なんかよりも笑顔でいてほしいですから」
「ごめんなさい、私馬鹿だから上手く言えてるか分からないな…」
そっかそうだ君はそういう人だった。
主と、そう呼ばせてほしい。
君とこの先の物語を紡ぐならどうなるのか。君と暮らす日々がどういうものになるのか。
少し考えただけなのになぜか微笑んでしまうんだ。
「…くれると嬉しいですけどね」
ふふっと彼女が笑う。まだ何か話しているらしい。もう少し近付いて聞き耳を立てていると
「なら、少し信じてみようか。」
「アンタを大将と呼んでいいか」
…えっ
え、ええぇぇえぇぇ!!!!嘘!!僕が先に呼ぼうと思ってたのに!!!
僕がずっと思い悩んでいたその間に先を越されてしまった。
「なんか悔しい…」
結局外には行かず手入れ部屋に戻り寝る事にした。
「明日あの子が起きたら主って呼んでみよう」
何かが吹っ切れたような絡まっていた糸が解けた気がした。
もう覚悟は決めた。例えこの行為が元主を裏切る行為だとしても