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前週に姫から借りた小説を読み終わっていないことを思い出す。


前の授業で使った教科書をしまうために机の方を向いていた僕は、右斜め上へと視線を向ける。


時計の短い針は11を刺していて、長い針はちょうど20分。


昼休みが終わるまで約十五分である。 


カバンに小説を入れたのかを記憶にない。


だから、ドア近くのロッカー置き場に入れられてあるカバンのジーパーを半分より多く開け、中身に何かが入っているかを確認する。


体育と美術部の教科書とノート、資料集、そしてその奥には青と灰色表紙の手のひら文庫小説。


昨日、授業の準備をしていたら無意識で入れただろう。


本を取り出して自分の席に戻る。


一ページ、二ページ、三ページと次々にページをめくっていく 。

他の小説と違って、この主人公は人間でも神話的な物でもなく、猫である。


ミステリー、ホラー、ファンタジーではなく、「雄一郎」(主人公の名前)の生活を書かれてあるだけ。始めのところ、つまらない作品だと思っていた。であるとしたら、それでも大切に本棚に保管していた。


しかしそうでない。


この小説はそれほど目撃的な話ではなくたって、いくつかの点で非常に興味深い。作者の書き方や表現の仕方でこの作品はとても素敵で、完璧な物。読んでいく内にやっとわかったのだ。


この小説は姫から誕生日の贈り物として貰ったもので、すごく大切にしている。


貰った日に読もうとしたが、時間が無かった。 同じくその次の日、更に次の日と次の次の日のように、読まずに時が経ってしまった。

もっと先に読んだ方が良かったな。こんな素敵な小説に出会えて本当に幸せ。


「痛っ」


手に持っていた本が激しい動作で床に落とす。


僕に衝撃を起こしたのは、僕の机に思い切り体をぶつけてきたクラスの者。


いや、大バカの代表者。龍司。


「すまん」


馬鹿は僕の机から離れ、教室を走り始めた。


おそらく、さっき程も走っていただろう。




「数彦、ちょっといいかな?」


長いポメラニアンの毛と同じ色をした髪を高いポニーテールにした子が、僕の肩を突いて声をかけてきた。


床に落とした小説を机の中にしまう。


放課が終わるまで五分。席から立ち上がり、ポニーテール女子の後を継ぐ。


彼女を追ったところ、僕達は電気の付いていない廊下を通っていた。


この子は僕をどこに連れようとしている気だ?何にせよ、なんで教室からこんなにも離れたところで言う?


やっぱり告白だよな。


まぁ、でも意外だな。だいたい放課後に言う人が多いのにね。自身のある子みたいだ。


でもごめんよ。同じ想いではないの。今勉強に集中したくて。

という、いつもと同じ言葉で良いかも。


彼女は歩みを止まった。


ここで話す気か?


僕達は階段の前に着いた。


その時、告白ではないことに気づいた。


階段近くには男女が一人ずつ立ち竦んでいるのが見えた。


僕に何かをしようとしているのか?何を伝えたい?僕は心配した方がいいのかな?


「ここまで連れて来てごめんね」


階段に立ち竦んでいた三人は僕とポニーテール女子に近づいて来た。


一分後、後少しで次の授業に遅れていたところで、四人との話が終わった。


内容は予想外、龍司のことだった。彼らによれば、馬鹿野郎は自分の係を果たしていないらしい。


それで、あの三人は龍司と同じ配達係。龍司が係をやっていないことが彼らに迷惑を与えているから、級長である僕に伝えに来たことだ。


前も先生に言ったらしいけど、龍司はそれでもサボり続けたみたい。


馬鹿野郎と放課後に話すか。


今日は木曜日。


そのため五教科しかなく、他の曜日よりも速く帰宅だ。


カバンを机の上に置いたまま、チャイムが鳴る前に龍司まで向かう。


鳴った瞬間、龍司の手を引っ張り、素早く教室を出る。


「どこにいく気!?」


龍司の文句を無視して、図書室前まで向かう。


配達係達が僕に言ったことを全て龍司に言い、これからはちゃんと果たすようにと優しく宣言する。


嫌だ


気軽に龍司は答えた。


本当にコイツが大嫌い


「これはお前が選ぶことではないんだぞ!みんなに迷惑をかけていることが見えないのか?お前は本当にずるいことをしているのわかる?」


我慢ができなかった。馬鹿野郎に怒鳴ってしまった。


でも彼は一言も返さず、ただ僕が怒鳴るところを静かにビーグルのような目をしながら見つめている。


「わかった」


その答えは本心ではないように感じた。口から外へと吐いた言葉みたいに。けど、これ以上何もできない。


だから、彼の手首を離して、馬鹿が去って行くことをじっと見た。

世界でお前が一番嫌いだ!

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