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やばいくらい癖一緒すぎる…! 個人的には周りにそれを隠し続けて そのまま死ぬぐらいのが好きなバトエン厨です
ゾムが病院に運ばれた。
猿山先生からそう聞かされた時、理解してしまった自分が嫌だった。
単刀直入に言うと、ゾムは虐待を受けている、と。
他三人が気づいていたかは知らないけど、ゾムはよく身を庇うような動作をする。例えばドッチボールの時とか。
ゾムは、その事に関しては触れるな、踏み込むな、そういう目をしていた。
そして自分も、ゾムにどのように接すればいいのか分からないことが稀にある。
だから踏み込めなかった。手を差し伸べてやれなかった。
・・・いや、言い訳やわ、これ。
単純に怖かった、この関係が、ゾムの心が壊れてしまうのが。
トントントン、ノックを三つ。
寝てるかも、小さな声で。
「ゾム、起きてる?」
「はぁい。」
間延びした返事が返ってくる。元気そうやな畜生。
203号室の札が掲げられたドアを開けると、病院特有の匂いが鼻に染みた。
ゾムは、起き上がっていた。
お得意のはにかんだような、八重歯が目立つ笑いを浮かべている。
ただその体はまさに満身創痍、と言った感じ。
頭や腕、首なんかにも真っ白な包帯が巻かれていて。
淡い病衣と相まって青白い肌が馴染んでいて、怖かった。
少しちょんと触れば、崩れ去って消えてしまいそうな、そんな雰囲気。
「ゾム、フードしてないんやな」
「そら病院やし?」
トントンの質問に肩をすくめたゾムは、窓の方に目をやって、それからぽつりと呟いた。
「・・・・・なんか、ごめん」
今まで聞いたことのない声。
ずっと聞きたかった声。助けを求める声。
「・・・・・なぁゾム、俺、気づいてたで。」
「・・・・・・」
ゾムは、思い当たる節でもあったのだろうか、黙ったまま。
ただぎゅっとシーツを握りしめている。
「俺、お前が触れてほしくなさそうにしてるの、分かってたから。
・・・・でも、俺は、言ってほしくて・・・、」
今まで思ってきたこと、感情。
言葉に並べると情けなくて、つんと鼻が痛む。
「・・・・・・なぁゾム。頼ってもよかったんちゃうん?俺ら、そんな頼りないかなぁ・・・・・、」
大先生のお得意の饒舌はそこには無くて、溢れる涙を必死に留めている。
「ほんま。・・・・いつかはこうなるって、自分じゃ分かってたんとちゃうん」
冷たいように見えて、きっとシッマなりにも考えたのだろう、眉に皺を寄せ瞳の奥に後悔の色が見える。
「・・・・・・俺やって気づいてたで。だから、ゾム、もう終わりにしようや・・・」
あのしっかりして頼れるトントンでさえ、涙を流して。
きっと俺の顔はぐちゃぐちゃだろうな、なんて他人事のように考えながらもう一度ゾムに目をやった。
「・・・・・・ん?」
いつの間にかこちらを向いたゾムが、目をまん丸くしてこっちを見ている。
「なっ、何でみんな泣いてるん?」
・・・・・・はぁ?何でって、こいつ、人の気持ちも知らんで!
溢れる涙を抑えるように目を擦って、睨むように見つめる。
視線に気付いたのかこっちを向いたゾムは相変わらず焦ったような顔をしてて、ちょっと滑稽だ、なんて。
「っばかやろー!おめーが相談せぇへんかったのがムカつくんだよ!」
口から滑り落ちた本音に、鳩が豆鉄砲を食ったようとはこのこと、とゾムの顔を見て妙に納得した。
本人はぽかんとした間抜けな顔をしてるけど、俺が今までどんな思いで我慢してきたと思ってんねん、くっそ。
「っせやぞ、俺なんか今の今まで気づきもせぇへんかったんやで!」
「・・・い、いや、知らんし・・・、」
大先生の泣き喚く姿に若干ドン引いたような表情を見せたゾムは、それから困ったように眉根を下げて、きゅっと唇を噛むように喋り始めた。
「おっ・・・・俺かて、い、言えたらどんなに楽かって、」
あ。
思わず声を零したのは誰だったか。
「おっ、おれやって、ずっと、こわかってん・・・・・・!!」
貰い泣きとはこのこと。
屈むように体を縮こませ、震える唇から絞り出された、彼の本音。
頬を濡らした涙がぼたりとシーツにシミを作っていく。
「いややったっ、みんなとちゃう、って、思われんの、」
嗚咽に塗れたゾムの言葉を聞いてか、いつのまにか視界が不明瞭になる程自分も涙に塗れていて。
隣から聞こえる鼻を啜る音に、きっとここに第三者が来たらカオスだろうな、とぼんやり考えた。
「・・・なあ、ぞむ、それでもゾムはゾムやないん?」
「・・・・・・おれは、みんなが思ってるよりずっと、汚いから」
泣き腫らした目を擦るゾムに縋るように尋ねる。
「汚いって、・・・。俺、おれらはどんなお前でも、変わらんって思ってんで」
「分からんやんっ!きっとみんななら言ってくれるって分かってたけど、でも、怖いねん!ずっと、ずっと・・・・・!!」
半ば遮るように紡がれた彼の悲鳴は、悲しくて重たくて、でもずっと聞きたかったもので。
ふるりとゾムの睫毛が震え、雫がこぼれ落ちていく。
思わず、抱き付いていた。
「っぁ・・・・・」
「ゾム。・・・・・俺らって、そんな表面上の関係やったっけなぁ」
びくん、と大袈裟に肩を揺らす様子が痛ましい。
そして何より、俺らの気持ちを理解してくれない事が悔しかった。ここまで我慢させてしまった、と。
「・・・ち、がう・・・おれは、皆んなのこと大切で、」
「じゃあ信じてや。・・・・・俺らやってお前のこと大切やねん」
「っせやで、俺ら、ずっと一緒やったやん!大切な仲間やろ?」
「俺らやってゾムに頼るんやから。ゾムさんも、頼ってや」
「なんでも一人で解決しようとするのは絶対ダメやで?」
怖がらないように、聞いてくれるように。それぞれの口から伝えられた本音はゾムの心にどう響いたのか。
ゾムはゆるゆると視線をこちらに向け、戸惑った、それこそ迷子のような顔をしていた。
頼っていい?信じていい?話していい?
そう尋ねられているような気がして、大きく頷き返す。
「・・・っ!・・・・・おれ、ほんまに、幸せになっても、ええの・・・・・・?」
歓喜と不安と期待と。
色々な感情でごっちゃになったペリドットが、ゆらゆらと揺れている。
“もちろんええに決まっとるやろ!!”
歓喜に寄り添うように、不安を打ち消すように、期待に応えるように。
初めてその日、心から全員で笑い合えた気がしたのだ。
◇
この話でストック最後なんですよ・・・。
やばい、マジで書いてない((
というかトラウマもの良くないですか?
推しを痛めつけるくせにハピエン厨なので性格捻じ曲がってるなーと常々思ってます。
個人的には、うつ病ほどではないけど、楽しく生きることを諦めている、ぐらいの諦観であってほしいなと・・・。
それで、何か事件があった時、心に蓋をして気づかないフリをしていた本音が溢れて仕舞えばいい。
そう、この話がそうなんです。ほんとに癖という癖を詰めた。
メンバーに向かって泣き叫ぶ推しほど可愛いものはない。
それじゃあまた次の話が書き上がるまで。
♡励みになります。
【追記】
どうやら♯初期人狼組のタグランキングで一位になってたみたいで・・・
みなさんまじでありがとうございます夢のようです愛してます