幼少期の時の記憶は、母親の罵声にこちらに向けられるか細い脅威。時々拳を振るわれるのは慣れたもんだが、栄養が足りていないほどに細い体だったから耐えられたのだろうと今は思う。
母は所謂夜職だったが、家に男を呼ぶことは無かった。俺と会わせたくなかったのか、どうせ客だからホテルで済ませていたのか….
父さんの顔は見たこともない。俺が産まれる前に交通事故で無くなってしまったらしい。身重の母の稼ぎが無くなって、酷いつわりに精神を病んでしまったのか、なんて話も昔聞いたこともある。
「懐かしいなぁ….」
小さな小さな、物心もついていないであろう俺を抱き上げて涙を流す母の写真を見て思い出す。良い記憶とは言い難いが、女手1つで俺を育ててくれたのはまぁ、感謝している。
「…ンな頃あったんだな」
「あー、まぁね」
勝己とは一応幼なじみ、だと思う。
家を追い出された時に勝己が俺を見つけて家へ上げてくれたのが出会いだった。
光己さんは困った顔をしていたが、ダボダボのトレーナーを着た小汚い俺を見て察したんだろう。
そんな出会いからたまに会えば遊ぶ位の友達にはなって、勝己と呼ぶような関係になったのはちょっと俺もよく分からない
勝己にもう1人幼なじみが居ることは雄英に入学して数日後に知ったし、そりゃあもう驚いた。
「あ、爆豪に上鳴…珍しい組み合わせじゃね?」
「2人で居るとこはあんま見ねぇよな」
瀬呂と切島が共有スペースへ降りてきて、2人揃って首を傾げる。
光己さんが「昔の勝己は電気くんの事好きすぎて離れなかったのにね」と言っていたのを思い出して少し笑ってしまった。
「?」
「かっちゃんは俺の事大好きなのにねー?」
「うっせぇアホ」
悪態をついて可愛くなくなったなあと思うも、拗ねるとへの字に口を噤む所は変わってないなと安心した。
「お前らそんな仲良かったか?」
「ちょー仲良いよ?命の恩人ってやつだし」
「はぁ?」
聞いたことも無い話をされても困るだろうが、思い返してみれば話したくなってしまったので仕方がない。
「俺と勝己は幼なじみだし。」
「はぁ?!」







