テラーノベル
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耳の奥から聞こえてくる村の民の声を何とか聞かないようにして
「新門さん…これから、お世話になってもいいですか?…もちろん、タダでとは言いません、家事とかも…教えて貰えればちゃんとします。新門さんが良ければ、だけど…」
「…さっさと着替えてこい、廊下を出て隣の部屋にタンスがある。紺炉、頼んだ。」
「はいよ、…君が煌君か?俺は相模屋紺炉だ。」
また現れた大男に煌はびっくりして毛布を少し上にあげたがそんな動作を紺炉はものともせずに煌を抱き上げた。
「おぉ、若の小さい頃を思い出すなァ…」
「ガキの頃の事だろ…ほら、煌、てめーも早く行け」
「は、はいっ」
煌は降ろしてもらい部屋に移動した。
まだ、実感がない、自分が文句以外の言葉をかけてもらえるなんて思いもしなかったから。
緩む顔とにやける口を何とか引き締めて羽織を着させてもらった。
涼しくて心地がいい、試しに縁側を走り回っていると、突然誰かから抱き上げられた。
「危ねェ、コケるぞ」
紅丸が仏頂面で俺を抱き上げていた。
目線が高くて新鮮だ、抱き抱えられたことなんてあまりなかったからちょっとだけ怖い。
「意外と大人しいんだな。」
紅丸は相変わらずの仏頂面だが自分を抱えている手はとても優しかった。
END